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(仮)如何にしてマコトの呪いを解くか、それが問題である。(2026.05)  作者: MAYAKO


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第八話 呪い     

今晩は。

投稿です。


 願い事は決めていた。

 もう一度だけ、お城の舞踏会で踊りたい、それだけなのだ。


「マコトおねぇちゃん、踊りでいいの?」


「ええ、それだけで充分、近いうちに開催なの」


「え?舞踏会?」


「そう、なんでも勇者さまが魔王倒したとか」


 やや大きめの岩に座り、脚をぶらぶらさせているマコト。

 やはり、左脚だけ動きが不自然だ。


「……ふーん、そうなんだ」


 チラリと黒い竜を見るコガラス。

 舌打ちして横を向く黒い竜。


「お祝いで舞踏会があるの、そこで踊りたい」


「従属紋の、上書きをお願いしたら?」


「その後はどうするの?」


「え?」


「私は帰る場所も無ければ、お金も、何もないのよ?また従属紋を刻まれておしまいよ」


「き、貴族でしょう?そのお城の誰かに頼むとか、訴えるとか」


 額の紋を指さすマコト。


「言葉も行動も制限されているのよ、レイラ家は私の代でおしまい」


「お終いって……それでいいの?」


「いいわ」


「でも、マコトおねぇちゃん、このままじゃ死んじゃうじゃん!殺されちゃうよ!」


「コガラス、そこまでにしておけ」


「で、でも」


「マコトが選んだ道だ」


「そんなぁ、怖いって言ってたじゃん!」


 マコトは今日もリンゴを一つ置いてその場を去った。

 その後ろ姿を悲しく見つめるコガラス。


「クロさまぁ、どうにかなりませんか?助けてあげましょうよ!」


「魔物らしく、継母や義姉を殺してしまうか?」


「え゛!?」


「だがそうすると、解呪が難しくなる。上書きできればいいんだが、それもなぁ」


「何か問題でも?クロさまでしたら力業もありでしょう?」


「いや、問題はマコト本人なのだ」


「え?」


「継母達を殺してしまうと、もう呪いは解けない、とマコトが思い込んでしまうのだ」


「?」


「そうなると、もう呪いは解けない」


「?」


「マコトが自分自身に呪縛されるのだ、まさに呪いだ」


「?」


「分かるか?コガラス」


「まったく分かりません……あの……」


「なんだコガラス?」


「レイラ家って?」


「聞いたことがあるのか?」


「はい、確か絹かなんかの?」


「ああ、魔昆虫の糸で防御力の高い絹を作った名門だ」


「えっ!?」


「その技術はお城に取られ、利益は独占されている」


「ひど!」


「技術の簒奪なんざ、よくあることさ。少しでも弱い身を見せると喰われてしまう」


「そんなぁ」


「魔族も人族も基本同じか?」


 さて、コガラスに話していいモノか。

 黒い竜は考える。


 そう、マコトはもう壊れているのだ。


 両親の死、疑似家族による虐待、皮肉なことに、従属紋の呪いで生きているのだ。

 呪いを解いた時点で、マコトの心臓は止まってしまう。

 マコト本人の意思とマコトを宿している肉体も、活動停止を望んでいるのだ。


 人族は宿ると言う言葉を使う。

 母の胎内に子が宿る。

 その子には魂が宿っている。


 人族は宿借りなのだ。

 肉体で経験したことが意思を通し、魂にフィードバックされる。

 良い経験も、悪い経験もだ。

 マコトは悪い経験が多すぎたのだ。

 肉体も意思も壊れてしまったのだ。

 壊したのは周囲か本人か……。


 間違いなく周囲だろうな。


 ここで面倒なのは、壊したのは周囲だが、治せるのは本人しかいないと言うことだ。


「違うな、立ち上がろうと本人が思わない限、周囲はフォローしかできない……たぶん」


「クロさま?なんのお話しですか?」


 コガラスは納得しないだろうあなぁ。

 俺だってそうだ。

 クロは考える。


 マコトの記憶を消してしまうか?

 しかし、記憶を消しても魂のヤツはしっかり覚えている。

 そして魂はその経験を上位存在に食われ、上位存在は食った経験を元に、さらに大きな世界を創造する。

 さて、もう、どうしたモノか?


 ああ、勇者のバカ者は何をしているのだ?

 俺サマの討伐、退治より、この人間どもをどうにかしろよ!


「まぁ勇者ばかり攻めるのはいけないな」


「だからなんです?クロさま?」


「義母達を魔道に引きずり込んだヤツがいる」


「え?」


「そいつは公爵に取憑いている」


 静かに動き始める黒い竜。


「……」


 コガラスがゆっくりと剣を握り締める。


 晴天である。

 しかし、視界が狭くなり、気温が一気に下がる!


「ここにおられましたか、黒の魔王さま」


(コガラス、剣は抜くなよ)


(え?で、でもクロさま)


「そう、剣は抜かない方が賢明です、抜けば消します」


「!」


「なかなかエグいことしているな、魔将軍」


 そこには、(きら)びやかな服装を纏った男が立っていた。

 真っ赤なコートに金の縁取り、およそこの場には似合わない出立。

 長い髭、短い手足、50代前半だろうか。

 人目を引く特長は、その異様な目だ。

 一見、綺麗なのだが、魔力の目で見ると、濁りきっていた。


「エグい?いえ、魔族として当然のことですが?」


「そうかな?お前、あの人族に取り込まれていないか?」


 軽く揺さぶる黒い竜。


「あの人族達の欲望に呑まれていないか?いや、呑まれているな、魔将軍ともあろう者がこんな小さな街で何をしているのだ?」


「!」


 人族より格下に見られ、怒りを爆発させる魔将軍。


「はぁ?魔将軍である我が取り込まれるわけがなかろう?殺すぞ、トカゲ!キサマこそコソコソとこんな森の中で何をしている!?」


 がらりと雰囲気が変わる魔将軍。


「俺か?湯治だ」


「小川で湯治だとぉ!?」


「魔将軍、眷属達はどうした?勇者パーティーに皆殺しにされたか?」


 一気に陽が陰り、真夜中のように森が闇に包まれる。


 今回はここまでです。

次回サブタイトルは未定です。

あと二話で終了予定です。

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