第五話 死と乙女
今晩は。
投稿です。
暑い日が続きます。
「シャクシャク」
美味しそうな音を立て、リンゴを食べる黒い竜。
(ああ、私のお昼ご飯)
「女、なぜ死を望む?」
「未来がないからです」
「はっ、くだらんな!我らに未来なぞない」
「え?」
「あるのは今だけだ」
「!」
「我ら魔物は意味無く次々に狩られる。この醜い見た目か?それとも魔力の高さゆえか?残虐性?昨日何匹の魔物が死んだ?知っているか?」
「……いえ」
「そいつらは生きたいと思ったであろうな。昨日死んだ奴等は、今日を生きている俺を羨望するであろう、この『今』は彼奴らが生きたかって『今』でもある」
「……私はそうは思いません」
「……ふん、人それぞれだ」
「お?鼻血止まったかな?ねぇちゃん、ありがとな」
コガラスはハンカチーフを返そうとするが固まってしまう。
白が赤になっているのだ。
これは返すのはダメだろ?
新しいのを買って返すか?
でも何だか高そうな布きれだな?
ん?なんだこりゃ?凝った模様があるぞ?
ああ、刺繍ってヤツだ。
その刺繍は、ド素人のコガラスが見ても圧巻の見事な刺繍であった。
「……クロさまぁどうしよう?これ高価なヤツじゃ?」
「ん……確かに見事な刺繍じゃな」
「ええっ!?そんあぁ!クロさまが認めるようなモノなんですかぁ?ど、どうしよう?」
幼さを見せるコガラス。
「捨ててもらって、かまいませんよ」
「えええっ!?も、もったいなよぅ!」
「では、差し上げます」
「えっ!?くれるの!?いいの?」
「はい」
「もーらいっ!ありがとなっ!大事にするよ!」
亡き母と一緒に仕上げた刺繍。
取り上げられなかった唯一の品だ。
大事にしてくれるなら、それでいい。
「……黒い竜さま、私を生きて帰すと、災いの元となります。どうかここで命をお断ち下さい」
「ん?……ああなるほど。帰って聞かれたら、お前は正直に言うしかないからな」
「はい、賞金欲しさに討伐隊を組むかも知れません、どうぞ私の命を……」
チラリ、と少年を見る黒い竜。
「……俺はクロさまに使えるヤシマ・ナ・コガラス、魔力は高いけど人族だ。ねぇちゃん、あんた名前は?」
「……マコトといいます」
「マコトねぇちゃん、命は一個しかねぇ、粗末にしたらダメだよ」
マコトは答えない。
返事をしない。ただ俯いているだけだ。
「コガラス、この者は粗末に扱われているのだ」
「え!?」
驚くコガラス。
「クロさま、奴隷は大事な働き手だろ?粗末にするヤツはいないと思うけど?」
「……女の奴隷は悲惨だ、特に綺麗な女は……お前も知らないわけではなかろう?コガラス」
「!……まぁそうだけど」
「マコトよ、お前はここから離れると、私達のことを忘れてしまう。だから気にするな」
「え?」
今度はマコトが驚く番だ。
「この土地の結界、俺の方が上位なのだ、この森は俺の結界内だ。だからここから離れると、お前は俺達に出会ったことを忘れる、そしてまたこの森に入ると思い出す」
「記憶の場所が、記憶している意識の場所が違うのさ、へへっ、クロさまって凄いだろ?」
「お義母さまより……格上だと?」
「ここでは従属紋の力は弱くなっている、だからお前は普通に話せるだろ?」
「あ……そ、そうですね……クロさまの方が上なのですね?」
「ああ」
返事を聞いた瞬間!マコトは信じられぬ速さでコガラスから剣を奪った。
「あっ!?」
そして切っ先を乳房の下に当て、躊躇うことなく力を込めた!
(やっと死ねる!)
カイイイイィン!
見事、コガラスは鞘で奪われた剣を弾き飛ばす!
はずであった!
「な、なにしてんだ!?」
「死なせて!死なせて下さいっ!」
それは慟哭、魂の叫び。
弾かれた反動で、サクッと斬られる乳房!
「あうっ!」
鮮血が飛び散り、マコトは崩れ落ちる。
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第六話 約束のリンゴ です。
バイトが始まりました。
投稿が乱れるかも知れません。
残り5話、うまく纏まると良いのですが。
では明日のこの時間。




