第四話 動き出す世界
今晩は。
投稿です。
竜を見た瞬間、マコトは死ねる、と思った。
従属紋で縛られているので、自ら命を絶つことはできない。
義母からの命令なのだ。
でもこのままだったら、公爵や義母達に殺される。
楽に死ねないだろうなぁ。
酷いことされるんだろうなぁ、今もされているけど。
自然と涙が零れた。
マコトは考える。
どうにかして、あの黒い大きな竜を怒らせ、食べてもらおう。
どうしたらいい?
周りを見ると、手頃な石があった。
「あ、これ思いっきりぶつけたら、怒って食べてくれるかしら?」
そしてまた考える。
「え?でもちょっと待って、初対面で石をぶつけるなんて酷くない?お義母さまだってそんな酷いことはしないと思うわ……まぁ、お義姉達ならするかも……」
さらに考える。
「悪口はどうかしら?」
黒い竜。滑から巨体を覆う鱗、キラキラとしてとても綺麗だ。
流れるようなボディライン、尻尾が可愛い。
その頭部の立派な角、金色の眼、威厳のある翼、マコトは見とれてしまう。
そして驚くのはその周囲だ。
なんと金色に輝いているのだ!
「あ、私、悪口言うの、むいていないかも……それに……」
竜の胸元の傷が痛々しい。
「それに怪我をしている竜に悪口なんて酷いわ、痛いでしょうに……」
マコトは立ち尽くす。
動けない。
「どうしましょう?」
そしてマコトは思い詰め、一歩を踏み出す。
(ここは素直に……食べて下さいと言おう!)
マコトの脳内芝居が始まる!
まず、私が小枝を踏み、ポキッて音をだすの、すると「誰だ!?」
そう、ここであの黒色装備の男の子が剣を構えるのよ!
そして私の額を見て「奴隷か?」
とか言って、で、黒い竜さんが「みーたーなー小娘ぇ」と。
そこで私が「見ました。口封じに私をお食べ下さい」って言うのよ!
で、黒い竜さんが「ぐへへっ、上手そうな女だぁ」と。
「はい、乙女ですし、お口に合うと思います」
「なに、乙女?生娘か?ちょうどよい、傷の回復に役立ってもらおう!」
ここで私が跪いて「思い残すことは何もありません、どうぞ、私の血肉でその傷をお癒やし下さい」と厳かに言う!
「そうさせてもらおう!」
ビリビリと服を破かれ「あーれぇー」と、素裸にされて……。
「ぱっくん!」
「あぁああんっ」
-END-
「よし、これよ!」
ガサッ!
パキッ!
葉の擦れる音、小枝の折れる音。
黒い竜と黒色装備の男の子が反応する。
「誰だ!?」
スッ、と静かに剣を抜き構える。
「女の子?なっ!?従属紋?奴隷か?」
「見られた?マズいなぁ」
黒い竜の眼がギラリと光る!
マコトは静かに近寄り、一言告げた。
「黒い竜さま、どうか私を食べて下さい」
必死の想いである。
これで、この苦しみから解放される!
黒い竜は答えた。
「え?なんで?」
「は?」
思ってたんと違う!
困ってしまうマコト。
え?ここはパックン、と食べられて終わりなのでは?
黒い大きな竜ですし。
「どうしましょう……食べてくれないのですか?」
困ってしまうマコト。
そして困ってしまう黒い竜。
「お前、大丈夫か?なんで俺サマが、お前を食わなきゃいけないんだ?」
「あの、あの、美味しいと思いますけど、一応乙女ですし……その……お怪我にもいいかと……」
「なんだその一応とは?」
「えっと……男性経験はありませんが、お義姉さま達から*特に秘す*や*特に秘す*なこをされていますし……」
「はぁ!?」
「ですので*特に秘す*が*特に秘す*なのです……それで美味しいのでは、と……」
「ば、ばかっ!コガラスはまだ15だぞ!子どもの前でなんちゅうことをっ!」
「え?あ?ご、ごめんなさいっ!」
真っ赤になって震え出す黒色装備の少年。
「ク、ク、クロさまっ!?お、女の子どうしで*特に秘す*や*特に秘す*なことをするんですかぁ!?」
そう言って、ブバッ!と鼻血を吹き出すコガラスと呼ばれた男の子!
何やら、よからぬことを想像したみたいである。
「だ、大丈夫かっ!?コ、コガラスッ!?……痛ってててっ……」
「ああああどど、どうしましょう!?」
コガラスが鼻血を吹き出すと、竜を包んでいた金色の光が消えた。
どうも、このコガラスなる人物が、金色の光で竜を癒やしていたようだ。
マコトは慌てながらもコガラスを座らせた!
「下を向いて、無理に血を出さないように」
「う、うん」
「頭とか、トントンしたらダメよ?」
「わ、わかった」
「これで抑えていなさい」
綺麗に折りたたまれた白いハンカチーフ。
服装はボロボロだが、それだけは真っ白で綺麗だった。
「竜さんは……ごめんなさい、私、薬草とか知識ないし、魔力もないんです」
「……」
黒い竜は何かを見ている。
「あ?この袋ですか?中には果物が入っていますけど?食べます?」
「いや、その果物はマズそうだ」
「え?お、おいしいですよ?新鮮だし」
「お前が手に持っているリンゴがうまそうだ」
「同じ八百屋さんから買ったものですけど?」
「違う、同じではない、我は感情を食べるのだ」
「?」
「リンゴも食うが、食べるのは感情だ。そのリンゴは等価のリンゴだ、奪ったものではない」
「……よく分かりませんが、このリンゴで良ければ差し上げます……ついでに私もどうですか?」
「どこの店員だ?お前はいらん」
「……しくしく」
いらないと言われると悲しくなるマコト。
たとえそれが自分の命であっても。
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第五話 死と乙女 です。
次回予告
「女、なぜ死を望む?」
「未来がないからです」
「はっ、くだらんな!我らに未来なぞない」
「え?」
「あるのは今だけだ」
「!」
お楽しみに。




