第三話 取敢えず描いてみる
今晩は。
投稿です。
すまんなぁカラスよ、私では、この文章の世界線が精一杯だよ。
「ンガァー!アー!」
バサバサッ!
カラスは我が家の物干し竿から、大空へ飛んでいった。
「怒ったのかしら?まぁ、お話しを進めてみるか」
設定は一式、頭の中に浮かび上がった。
後は、公爵のオモチャにされて魔道士に処理される未来を変えるだけだ。
……どうやって変える?
まずはマコトについてだ。
貴族の娘さん。
見事に欺されて、奴隷化されてしまった女の子。
魔力はなきに等しい。
武芸は?特技は?
趣味は?
異世界の基本、チートは?
ふんふん?武芸の経験は……無し!?
特技は刺繍!?
お裁縫!?趣味は料理?
……おい、親!
異世界でこの設定、無理がないか!?
育ての親として、もう少し生き抜く力、教えておけよ!
その、なんだ、バイトとかさせて、取敢えず社会経験とか。
異世界だったら、狩り?護身術?
今更言っても遅いか。
この子の夢はなんだろう?
……え?
もう一度、お城の舞踏会で踊りたい?
なんだそりゃ?
両親の思い出?
一緒に踊った?楽しかった?
もう一度踊れたら、思い残すことはない!?
ああ、マコトさんは絶望しているのだ、死を見つめているのだ。
マコトさんを支えているのは思い出だけなんだ。
楽しかった思い出。
もう未来がないのだ。
私は、物語にのめり込んでいく……。
◆
◆
◆
◆
◆
ズルズル。
痛む脚を引きずり、マコトは大通りを目指す。
食料の買い出しと注文だ。
従属紋に支配されたマコトは義母の支配から逃げ出せない。
それでもあの義母と義姉達はマコトの左脚の腱を切った。
「細い綺麗な脚だねぇ、気に入らない」
義母が呟く。
「お母さま、腱を切りましょう、マコト、右?それとも左?選ばせてあげる」
義姉達は嬉々としてマコトの左脚に剣を突き立てる。
悲鳴が響き渡る!
「ああ、小生意気なお嬢様の悲鳴、心地いいわぁ」
「ざまぁよねぇ!ほんとこれが支配層のお嬢様?いい気味だわっ!」
思い出したくもない記憶。
繰り返される悪夢。
森を抜け、重い足を引きずりマコトは大通りに辿り着く。
街の皆はマコトが子爵の娘だと、気が付かない。
新しい子爵夫人が連れてきた、奴隷だと思っているのだ。
埃だらけで、半ば破れた服装、誰も恐れを成して近づかない。
そう、マコトに接した者、声をかけた者達は皆消えているのだ。
……婦人は公爵様と繋がっているって話しだ……
……あの女にちょっかい出すと、消されるぞ……
……従属紋が刻んであった……
……婦人に話されたら大変だ……
……無視だ!無視しろ!……
……ひいっ、また私の店に来るよ!……
震える手で注文書を渡すマコト。
「この食材を明日の昼、お屋敷にお願いします、あと今日はこれを……」
渡されたメモには高価な果物ばかり。
果物を袋一杯詰め込まれ、無造作に渡される。
お金など払わない。
請求すると店ごと消されるのだ。
……確かに婦人が来てから魔物の被害は減ったが……
……なんでも婦人の結界がこの街を守っているとか……
……お城はあるけどさぁ戦略的に重要じゃないんだって……
……昔は栄えていたんだけどねぇ……
……子爵夫人かぁ……有り難いけどさぁ……こうもタダで食い物、持って行かれると……
チャリン。
それは金属音。
銅貨である。
「おばさま、リンゴを一つ、もらいますね、お金はここに」
「か、金なんかもらえないよ!」
「このリンゴは私の分です、では、ごきげんよう」
そう言って立ち去るマコト。
(ああ、誰か助けに来てくれないかぁ)
自分ではもう、どうすることもできない。
従属紋を調べることさえできないのだ。
屋敷に帰ると、今日一日を全て話さないといけない。
隠し事ができないのだ。
先程の考え、誰か助けに来てくれないかなぁ、ということも、従属紋の元に話さないといけないのだ。
プライバシーなんてゼロである。
「あひゃひゃ!助けなんてこないよ」
「え?何?白馬の王子様期待しているの!?」
「あんた幾つよ?そんなんだから欺されるのよ!あははははっ!」
それでもマコトは予感があった。
何かが動いてる、と。
お屋敷は街外れにあった。
森を抜けると見えてくる大きな屋敷。
だが今日はちょっと違った。
森に脚を踏み入れた瞬間、脳裏に何かが光った。
「?」
森が綺麗だ!
キラキラしている!?
え?街に行くときは、こんなんじゃなかった!
ズルズルと重い足を引きずり、進んでいくと黒い大きな生き物がいた。
?
先程の八百屋さんくらいの大きさ?
「なにかしら?」
あ!
小川の側に誰かいる!?
そこにはカラスのような真っ黒装備の男の子と、怪我をした大きな黒い竜がいた。
今回はここまでです。
次回サブタイトルは 第四話 動き出す世界 です。
次回予告
竜を見た瞬間、マコトは死ねる、と思った。
従属紋で縛られているので、自ら命を絶つことはできない。
義母からの命令なのだ。
でもこのままだったら、公爵や義母達に殺される。
ならば、今ここで、あの黒い竜に食べてもらおう!
マコトは一歩踏み出す。
2026/05/19 21時20分 投稿予定。




