第十二話 お城にて
今晩は。
投稿です。
次々に開いていく城の門。
豪華な馬車と、黒の魔王の圧倒的魔力の前では誰も逆らえないのだ。
「マコトおねぇちゃん、ホントに踊るの俺でいいの?」
「……はい、ご主人さま」
今一つ、納得しないコガラス。
従属紋の影響なしで、質問してみたいのだが。
それでも約束だ、一生懸命踊るとしよう。
きっとクロさまも踊ってくださる!
黒の魔王が先頭で、コツコツと歩くたびに全てのドアが無条件で開かれていく!
招待状も確認もない、自然と周りの者達は頭を垂れ、ドアを開けた。
乗り込んだホールはとんでもなく豪華で広かった。
「うわぁ」
世界が違う!コガラスの感想である。
多くの人々が蠢いていた。
景色は豪華で綺麗だが、その場にいる人達は皆濁っているように見えた。
溢れている贅沢な食べ物、着飾った人々、見た目は綺麗なのだが、コガラスは違和感の固まりになった。
こんなところで踊って、楽しいの?
人々に違和感があったが、舞踏会は大いに気に入ったコガラス。
「だって、食べ放題の飲み放題だよ、クロさま」
「いいかコガラス、こういう場ではカッコつけるものだ」
「もぐもぐ、そうなのですか?」
「ふふっ」
あ、またマコトが笑った!
更に楽しくなるコガラス。
「ん?」
ああ、あそこに継母達がいる!
何かを探しているようだが?
そして音楽が流れ出す。
(ク、クロさま、さ、先に踊って下さい!俺始めてで、どうしたらいいか!?)
(そうか?ではよく見ておけよ)
マコトに手を伸す黒の魔王。
マコトは戸惑い、コガラスを見る。
いや、見るというか助けを求めているようにも見える。
「……あ、あの……ご、ご主人さま?」
「思いっきり踊っていいよ、マコトおねぇちゃん!踊りたかったのでしょう?」
「……はい。でもなぜご存じなのですか?私が踊りたいという……」
「何故だろうね、あそこにいる継母達は気にしなくていいよ、何かあったら必ず守るから」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ、安心して踊っていいよ」
「ではクロさまの次に、ご主人さまと……」
そして踊り出す黒の魔王とマコト。
流れるようなステップ、キラキラと周囲に飛び散るガラスの靴の魔力!
周囲の者達は、そのガラスの靴に眼が奪われてしまう!
響き渡る靴音、なんと不思議な音であろうか。
その音が音楽のように響き渡り、様々な色を弾き出す。
「あなたは、誰なのです?なぜ私にこのような?」
「私は黒の魔王、お前は傷ついた私やコガラスに食べ物を分け与えた、これはそのお礼だ」
「……覚えはないのですが」
「ふふっ、12時を過ぎたら思い出すであろう」
「え?」
「さぁ、曲が終る、次はコガラスだ、うまくリードしてくれ」
ガチガチに緊張しているコガラス。
魔力でドレスアップしているが、その衣装が更に緊張を高める。
「ご主人さま、どうかお手を」
「こ、こう?」
「私を見てくださいね」
「ひゃい」(うわっ!緊張で声が!)
マコトを見上げるコガラス。
「脚の動きは合せて下さい、わかりますか?」
「う、うん、なんか演武みたいだ!」
「あ、基本は同じと聞きました」
「そ、そうなの?」
「ふふっ」
それはコガラスにとって、夢のような一時であった。
ああ、俺はきっとこの時のことを一生忘れないだろうなぁ。
……何者だ……
……どこの貴族だ……
……この街の者ではないな……
……なんだあの靴は?クリスタル?……
……あの仮面、なんという出来の良さだ……
……欲しい……欲しい……
……あの仮面、靴、そしてあの娘、私にこそ相応しい……
真横で踊っていた王族、第一王子が強引に割り込みをしてきた。
踊るタイミングでパートナーチェンジを試みたのだ!
サッ、と入れ替わる男女。
「おや、坊や、ダンスは初めて?」
「なっ!?」
(王子が仮面と靴を狙っているわ、早々に帰りなさい、ここは危険な場所よ)
真っ赤なドレスに赤い髪、切れ長の眼にド派手なお化粧。
だが、どこか優しさのある顔立ちである。
(え?)
(次のターンで入れ替わるように仕向けるから、いいわね、あの黒いイケメンさんと急いで帰るのよ!)
(で、でも)
(ここの王族は恐ろしい一族よ、消される前に逃げなさい、いいわね!)
(な、なんで教えてくれるのですか?)
(そりゃ……)
言葉に詰まる赤いドレスの女性。
(そうね、あなたが可愛いからよ、あとあのイケメン、好みなの!)
一方、マコトの方は、第一王子に口説かれていた。
「どこの姫だい?その仮面、靴、君はまるで妖精のようではないか、名前を教えてくれないか?」
マコトは無言である。
ご主人さまの許可が無ければ、名乗れないのだ。
まぁ許可の有無に限らず、名乗る気はまったく無いのだが。
そしてターン。
パートナーチェンジである。
「くっ、ローズマリー!なぜ邪魔をする!」
「嫉妬ですぅ、あんな小娘よりもぉ、私と踊ってくださぁい」
性格がガラリ、と変わっているローズマリーと呼ばれた女性。
再びマコトと踊り出すコガラス。
「ふふっ、やっぱりご主人さまと踊ってる時が、一番楽しいです!」
「え?」
「うふふっ」
マコトは本当に楽しそうである。
そして約束の時間が迫る。
時計の針が重なりだしたのだ。
(コガラス、撤収だ)
(はい、クロさま!)
「マコトおねぇちゃん、帰る時間だよ」
「ああ、もうそんな時間なんですね、なんで楽しい時間はすぐに過ぎるのでしょう」
うまく収まれば、次回で完結です。
……たぶん。
毎回ご愛読ありがとうございます。




