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裸のメス犬

 結局、何事もなくワープインを果たし、車は所定の位置に平和に停車した。まずはほっと胸をなで下ろす。

 俺は、後部ドアを外側から開いた。そこに、輝ける美少年・ドールの姿はない。

 代わりに別の動物が――見て分かる、まったくの疲労困憊の(てい)で――脱力感ハンパなく床に寝そべっていた。

 犬だった。ワンコだった。見た目はアフガン・ハウンドそっくり。全身に金糸流るる、ルビー色の瞳の、大型犬だった。

「ようこそ、『かわいい女の子がいる世界。なんちゃら』へ!」

 俺は隣にしゃがむと、大きな犬のボディを遠慮なくひっくり返した。チェックする。やはりというか、メスだった。

 犬が恥辱感に震えた口をきいた。

「おぼえてろ……」

 俺は平然と応える。「当然だ。目に焼き付けておくよ」

「助平……」大儀そうに目をつむる。

 体質変化して体が馴染むまで、十分くらい時間がかかるのであ~る――って!?!


 そう――!


 これは、ドールの変じた姿だったのだ!!!


 ドールは、ワープするたびに繰り返し、ドールと、別の何かと、入れ替わるように体質変化が起こるのだった!


 別の何かとは、行先の世界ごとに決められているようで、“ここ”では、このとおりアフガン・ハウンドの姿が選ばれていた、というわけだ。

 新規世界の時は、何に変化するのか事前にわからないので、毛だけを先送りして様子を見たり、衣服が首を絞めるのを回避したり、超巨大化を警戒したりとか、いろいろと対処を講じる必要があったのだ。

 そういうわけで―― 

 さぁ、三人目のメンバーの紹介と行こう。(笑) 俺はワンコに優しい目を向けた。


 島原(しまばら)タユウ、女の子。歳はドールと一緒、との自己申告だ。


 元の世界では、名門遊女の家系のニンゲンであったそうな。そう、知的生命体の、ヒト(ヒューマン)である。

 本人いわく、金髪、赤紫の瞳の、絶世の美少女なんだそうだ。まぁ、ドール少年との混ざり具合、つまり美のその相乗効果的物凄さを普段、まざまざと見せられているから、まったくの真実(マジ)なのだろうと確信している。

“24時間過去の群世界”から弾き飛ばされ、現世地球(ホーム)のドールと衝突、融合してしまった戦争被害者だった。(つまり、言えば、ドールこそ全くのとばっちりだったというわけだ。)

 衝突は今から10年前のことだから二人ともまだ幼く、意識はほとんど融合してしまった。肉体は、現世地球(ホーム)という地の利で、ドールの形態が優先されたのだった。

 それがひっくり返ったのがおよそ1年前。初めて他世界に旅ゲーに出たときだ。

 ワープのショックで、それまで“可能性”として体の中に溶けて隠れていたタユウの女性体が優位に。表に。つまり、体質変化を起こしてしまったのである。さらにだ。やっかいなことに――

 10年前、弾かれたときにだ。その打撃圧力で、全群・全世界・全星の、メス型の知的生命体の、あらゆる形態が、注入されてしまっていたのだ。それが、つど現れるようになってしまったのである。

 他世界にワープするたびに、それぞれに合わせて、いろんなメス型生物の姿にされてしまう。そのように、なってしまったのだった。


 俺はパムホを手に取り、

「行けそうか?」ワンコに声をかけた。

「なんとか――」

 ドール(タユウ)、ゆっくりと体を起こす。自分の手足を確認する。「残念。また、タユウ本体じゃなかったね……」

「後の楽しみにするさ。それに、今の姿も魅力的だよ。コンクールで賞が取れるぜ」

「ありがと」

「ちょっと、様子見がてら、外を歩いてみるか?」

「そだねー……」

 俺達は後部ドアから外に出た。


 簡単に言えば、ほどほどに荒廃した世界だった。

 戦争物でよくある、空から爆弾を落とされたって跡でなく。なんと言うべきか、時代を問わず、その位置に元から存在してた建物同士が、四方八方からぶつかり合った、あるいはくっつき合った、そのような不思議な破壊あとだった。群間戦争特有の光景だ。

 人口減のせいでなかなか復旧が進まない。けれど、治安を始めとする、各種インフラは整っている。

 一種の、穏やかな世界だった。

「周辺国も被害おおきかったんだろうな。この世界(自分たち)だけで領土侵犯の戦争を起こす余裕がないまでに。その結果のこの平和なんだろ」

「皮肉だね」

「て、お前、口きいてるとこ誰かに見られるなよ。意外と人出があるぞここ」

「ワンワン。了解だ、ワンワン」

「じゃ、行くか」

「ワンワン」

 そゆわけで。俺達は再び乗り込み、車を発進させたのである。

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