ひざまくら
81話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
夏を混ぜた温い風が自然と眠気をこの部屋に誘ってくる。
椅子に身体を預け、ページを捲る雹はその風をちょっと邪魔くらいにしか感じなかったが、彼はその眠気に呑まれてしまう。
「ふぁ…っ…」
彼が大きなあくびをひとつして、少し休もうとソファに横たわろうと移動して、身体を倒そうとすると丁度風から逃げてきた雹がソファにぽふんと座った。
「……………」
「…あれ?」
見事なまでに頭を降ろしたタイミングと、彼女の座るタイミングが合致し、ソファに置かれる予定だった彼の頭は、彼女のスカートから生える太ももに預けられた。
ひざまくらである。
「……」
「ご、ごめん。すぐ退くから………。」
「…………」
聞こえてるかどうかはともかくとして、雹に一言謝り頭を上げようとすると、固い何かが側頭部に乗ってきた。
「いだっ」
どうやら彼女にとって台座か何かかと思われたらしく、そこそこ重さのある本が来た。
その痛みを口から自然と出してしまったが、もちろん彼女が気づくことはない。
風が控えめになり、より読書に集中できるようになってしまった。
「あの…雹…」
「…………ふふっ…」
面白い話だったのか、小さく笑う姿が耳に入ってくる。
なら、にゃんこに手伝ってもらって邪魔するわけにもいかない。
「…どうしよっかなぁ」
「…………」
「うーん…ふぁぁっ…何かより眠たくなってきたし」
彼女のひざまくらは予想外の柔らかさで、本があるというのに眠気を強く感じてしまう。
むしろ、本のお陰で太ももに押し付けられているのが原因なのだろうか。
「…………」
「いや…でも…」
彼女の気づかない内に勝手にひざまくらだなんて、後の雹は一体何を思うだろうか。
もしかしたら変態…だとか、嫌われてしまう…とか、嫌な考えが遠にまとわりつく。
しかし、今無理矢理に本をどけては確実に嫌われる未来が見える。
待っても死。待たずとも死。
…しかし、分かっていても本能には逆らえない。
遠の瞼は自然と、ゆっくり時間をかけて沈んでいく。
「だ、だめ…寝ちゃ…。ぁぁ…」
暗い底に沈むことに恐怖はないが、その後、光を見つけた時が今の彼にとって一番怖い。
起きたら雹が優しく許してくれることを祈りながら、彼は瞳を閉じた。
「お…?えーんー…?」
「ん…んー…?」
「おはよ…」
瞼が開き、彼女の微笑むような表情がこちらを見下ろしていることが写る。
頬にまだ暖かさがあるということは…まだ雹の膝の上…?
「雹…?」
「…どうしたの?まだ…眠い…?」
今まで彼女にしてきたように、頭を何度も撫でられる。
一度、撫でられる度にまた、瞳が堕ちていきそうになるが、何とか意識を保って彼は身体を起こそうとする。
「ううん。もう、大丈夫、ごめんね。…あの、雹?」
起きれない。
身体を上げようとしても、胸に彼女の指が触れてくる。
その指には少し、力が入っている。
「もうちょっと…このまま…」
「え…あ…うん。…雹がいいなら…」
「ふふっ…やった…♪」
離れようとした身体を戻し、また彼女の脚に頭を乗せる。
「えっと…良いんだよ…ね?」
まさかの不安もあるので、もう一回しっかり確認をしてみると、「うん」と言いながら、雹は微笑んで頷いた。




