チケット
80話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
「あ、そうだ。ねぇ雹、映画のチケット貰ったんだけど、今度どうかな?」
雹がきちんと本を読み終わったタイミングで、親がくじ引きで当てた海外映画のチケットを彼女に勧めてみる。
「映画…?」
「そう、映画。前に雹が読んでたやつだね」
「おー…」
興味ありげに見つめてくるので、一枚渡すと、少し眺めてまたこちらに視線を戻した。
「どう…?」
「大丈夫なの…?」
「え?」
「昔…中学生の頃に、似たような事があった…」
「…あ」
彼女に言われ、その時の記憶がすぐさま蘇ってくる。
確か、映画館に向かう途中に古本屋を見つけ続けて…映画どころか帰るのすらやっとになってしまったような…。
あの時はこの街の古本屋は一体何軒あるんだと強く後悔したはずだ。
あー…と、思い出しながら頬をかく。
「…思い出した?…ふふ~♪あの時の古本屋は色々あって楽しかった…」
「そういえば…あの時の雹、すっごい幸せそうだったなぁ…」
「…まさか百冊しか刷られてない本を見つけられるなんて…。でも…君が見たかった映画…見られなくしちゃってた…だから…大丈夫…?」
また二の舞になるのではないかと、雹なりに心配してくれているんだ。
うーん…またありそうだなぁ。
昔行ってた映画館はちょっと移動しちゃってて、そこに向かう道の本屋は確認していない。
…本当にありそうだなぁ。
「やめとく…?映画だったら…先生に頼んで視聴覚室貸してもらえば、いずれ借りて見られるし…」
「それが安全…」
「じゃあ、仕方ないね。このチケットは…あ、友達にでもあげておこうかな」
「うん。そうすれば誰も困らない…」
「だね」と、軽く返してチケットを鞄の小さなポケットにしまう。
「あ、ならさ。映画の代わりにまた古本屋、行ってみな…」
「いいの…!」
言葉を遮って目の前にキラキラと星が写る瞳が見えた。
映画の時とは大違い…。
「う、うん。道を確認するためにちょっと時間がかかるかもだけど…それでいいなら…」
「いいよ…!うんうん…!」
「…ちょっと近いから…離れて、冷静に」
「むふー…!」
流石、雹というかなんというか。
何よりも本が優先でそれ以外は後回し。
だけど、それが正しい雹という女の子で、とっても可愛らしい幼馴染み。
押し倒さんと言わんばかりの僕の胸にある両手は、嬉しさからか力が込められている。
「それじゃあ、来週までには行けるように準備しておくからね?」
「うん…うん…!」
その嬉しさが見たくなって、色々と手を焼いてしまう自分がいる。
だけど…決してそれが嫌な訳じゃない。
「ふふ~ん♪」
むしろこんな楽しそうな姿を見られるなんて、幸せしか感じない。
ひっそりと、彼は心のなかでそう想う。




