お弁当
79話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
…食べ損ねたのか食べ忘れたのか、テーブルにちょこんと可愛らしいデザインのお弁当箱が乗っていた。
時刻は2時ちょっと過ぎ。
いつもよりも早めに学校が終わり、そのままここに来たのだが雹ならいつも大体この時間にはお弁当は食べ終わっていると先生から聞いていた。
だが、テーブルの上にはきちんと何一つとして手を付けた後がない完璧なお昼ご飯がそこにあり、彼女がお昼はまだなのだということを教えてくれる。
「雹…大丈夫?」
「……………」
本に相変わらずの熱中ぶりを見せる雹だが、そのお腹から小さく、くぅ、と腹の虫の音がした。
……………。
が、それを気にする様子はなくぺらっと紙特有の音を出して次の話へと彼女は進んでいく。
「お弁当…持ってったら食べるかな…」
両手でガッチリとお弁当箱を持ち、こぼさないようにゆっくりゆっくりと彼女のそばへと近寄る。
「動かない…だったら箸で持ってみたら…」
玉子焼きを箸で掴んで、ギリギリ本に被らないように近づけてみると、
「……はむっ!」
「あ、食べた」
無言で箸に食い付いてきた。
食べられた箸を口から取ると、見事なまでに玉子焼きは消えていた。
これ…まさか無意識…。
何もリアクションを見せない雹に、そんな考えが湧いてくる。
「だったら…雹が苦手なニンジンなら…」
オレンジ色のを掴んで近づける。
「……………」
「食べない…じゃあハンバーグ…」
「…はむっ!」
「食べた…」
まるで意識しているかのように、しっかりと嫌いなものは食べない。
しかし、雹の視線は本に一点。
まさか、脳内でそれが食べられるかどうか勝手に何処かで仕分けしているの…?
視覚は塞がれている。
なら嗅覚?
だったら、とハンバーグの下にニンジンをひっそりと忍ばせ、またやってみる。
「……………」
「ば、バレてる?」
「…………」
「ほーら雹、ハンバーグだよー…?」
「………」
どうやら嗅覚ではないらしい、それに今自分は口に出すことなくニンジンをハンバーグに忍ばせた。
つまり、聴覚も違うということ。
そして、触覚と味覚も、特に何か反応させるような事はしていない。
…本当に無意識っぽい。
「雹…なんなのその特技は…」
「…………」
「ま、いいやじゃあほら。ご飯も食べて」
ふりかけがかけられたご飯を遠が持ってくと、きちんと粒も残さず食べてくれる。
…何か、餌付けしてる気分になってくる。
そんな思いも持ちながら彼はドンドンと彼女にお昼ご飯を食べさせる。
トマトなんかも、彼が器用に掴んで落とすことなく雹に与えていく。
「…はむはむ」
「ほら、もう少しだよ。じゃあ次はー、サラダ」
「はむはむ」
「それじゃあ最後にー…雹の好きなお魚!」
「…」
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「やっぱりバレるかぁ…」
彼の持つ魚の下からほんの少しだけオレンジ色のあれが姿を覗かせていた。




