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階段の司書室  作者: いす
73/84

不機嫌

73話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

今年の一年生は予想外にも図書館に来てくれる。

去年なんて、新入生だけを数えてみた結果、ギリギリ二桁というかなりの悲惨な状態だったというのに、一ヶ月経たずで二桁にはもう到達してしまった。

「お疲れさま、雹」

その事に感動しながら、手続きを済ませた雹を彼は出迎える。

「……………」

「あー…」

声に出さずとも伝わってくる雹の不機嫌さ。

ここに来る人が増えるということは、それはつまり彼女が読書に熱中する時間も減るということになる。

もう少し時間が経てばほとんどの人が部活か帰宅かで図書館は全く使われなくなるのだが…今の放課後すぐの時間帯はどうしてもこうなってしまう。

にゃんこも雹のただならぬ空気を感じてか、静かに動かないでゆっくりと休んでいる。

「…………」

本を読もうと挟んだ栞を取って、紙を捲ろうとするが……ガラッと図書館の扉が開く音がした。

「雹…」

「…………」

静かにまた栞を挟んで彼女は扉に歩んでいく。

「頑張って…!」

応援の言葉を扉の奥の雹にこっそりと投げ掛ける。

ガラス越しに手際よく本の手続きを進める雹…なんだけど、一回一回の行動にストレス発散のためか力強さを感じる。

スタンプを押すときだって、ドンッと響くぐらいに強く押してしまっていて、借りに来た女の子も少々驚いてしまっている。

逃げるようにその女の子が部屋から出ていくと、中に人がいることを示す小さな壁掛け看板を表から裏、つまり中に誰もいません、という状態にして、部屋に戻ってきた

「これで安心…」

「いや…雹…」

「なに…?」

「なんでもないです…」

雹は怒ることは滅多にないが、拗ねることは全然ある。

お菓子をあげれば治るのはこれまでも何度もしてきたことなのだが、前に決めた通り、遠はお菓子を買わないと決めている。

そして、もしそれで嫌われたままが続いたらどうしようと拗ねさせないように臆病になっているのだ。

「………」

無言で本のページを捲り、その世界へと雹は入り込んでいった。

こうなればもう遠にはどうにもできない。

なんとか出来るのは雹の母親か、

「にゃーん」

このにゃんこだけである。

もしもの時は頼んだよ…と、擦り寄るにゃんこの頭を彼はモフモフする。

…と、不意にまた図書館の扉が静かにコツコツと鳴った。

「雹…は…ダメ…みたいだね」

「…………」

「君に頼るのも…今の雹にやったら絶対拗ねるし…」

猫を見て彼はそう言って、猫を連れたまま、仕方ない、と、自分がやろうと扉を開きに行く。

幸い、こんなこともあるんじゃないかと先生から言われ、色々と教え込まれているから来た人に変な目で見られる事になるだけで、それ以外はなんともない。

「じゃ、行こっか」

「にゃーん」

スタスタと後ろを付いてくるにゃんこを確認して、扉を開けた。

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