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階段の司書室  作者: いす
72/84

時計

72話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

カチッカチッと、静かな部屋に響く音が急に止まった。

「…?」

それに反応して遠が顔を上げると時計の針が歩みを止めていた。

電池切れ…?

そう言えば、しばらく変えてなかったなぁ…と、思い、前々から準備していた電池を入り口近くの箱から取りに行く。

「えーっと…これじゃなくて…これだ」

単3の電池を二つ、時計用に持って今度は時計を目指そうとする…

と、向きを変えると真後ろにいた何かがお腹辺りにくっついてくる。

「雹?」

「……なにするの?」

すっぽりとお腹に埋まった雹が首をかしげて見上げてくる。

後ろには、読み終わったのか、はたまたにゃんこに邪魔をされたのか、一冊の本が危なっかしく椅子の上に置かれていた。

「時計の電池、切れてるみたいだからさ。ちょっと交換」

「…あ、ほんとだ」

今度はお腹に雹の背中が預けられ、視線は二人とも時計へ集まる。

「だからさ、ちょっと離れてて?」

「…ハッ!…それ私がやる」

「え?」

「私…頑張る」

不意打ちで電池を手から奪われ、さっきまで座っていた椅子を本を落として時計の下まで雹は運ぶ。

…何か…嫌な予感がする。

雹が何か決意に目覚めたときは、なにかしら起こるとこれまでの、長い間の経験で予想がつく。

不安になり、運ばれた椅子の近くまで遠も足を動かすと、雹はそれを確認してから靴を脱いで椅子の上に立ち上がる。

四足の椅子はバランスよく立っているのだが、その上にいる彼女のバランスはかなり不安定。

というか、自分からグラグラ揺れている。

「雹…大丈夫?」

「大丈夫…」

揺れる彼女に危険を感じ、椅子をしっかりと両手で支える。

「ほ、本当に…?揺れてるけど…」

「うん…すぐに時計の電池変えるから…そのまま」

「不安だなぁ…」

雹は止まった時計へと手を伸ばし、裏を向かせて切れた電池の入ったふたを開ける。

そして、手早く電池を取り替えると、近くの本の詰まった棚の小さい空きスペースにそれを置く。

「…完璧」

そう呟いて、時計をまた壁に掛けるとまた静かにカチッカチッと音を立て始める。

ズレた時間もちゃんと戻し、言葉の通り『完璧』である。

「良かった…それじゃあ雹気を付けて降りて」

「うん…」

「しっかりね!足元をちゃんと確認して!す、滑らないように何か敷いとこうか?」

不安な表情で見つめる彼に、雹は小さく笑みをする。

「大丈夫だから…って、あー…足が滑ったー…」

わざとらしい声音で、抱きしめやすいように腕を広げ、彼の方向をきちんと向いて雹が倒れた。

「雹!」

それを見て、すぐさま受けとる体制になり、彼もまた腕を大きく広げる。

「………」

体重の軽い雹は、先程のようにすっぽりと彼の胸に抱き抱えられ、強く抱きしめられた。

「雹!…はぁ、良かったぁ…」

「危なかったー…。油断してたー…」

わざとらしい演技を続ける彼女に、必死な遠は気づくことなくぎゅっと力の限り抱きしめた。

「もう…雹…はぁ…」

「ごめん…ふふふ~♪」

「二度と交換しちゃダメだからね?」

「うん…」

幸せそうに抱き合う二人を遠くで見ていたにゃんこは呆れた様子で大きなあくびをしながら眺めていた。

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