消えた
71話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
雹が消えた。
いつもならソファの上や椅子の上、他にも最近なら窓の下辺りに座っているんだけど…
やけに部屋に桜の花びらが一ヶ所に積もっているだけで、肝心の雹の姿はやっぱり見えない。
「ひょーうー?」
…………。
返事は来ない。
…と、椅子の上で丸まっていたにゃんこが、立ち上がりテチテチと歩いていく。
「にゃーん」
「?」
ソファの後ろ、先程言った桜の花びらが積もる場所の近くで、猫は小さく鳴き声を出す。
ここほれわんわんならぬ、ここほれにゃんにゃんだろうか。
ゆっくりと近づいて、その一ヶ所を眺めると…何か…動いてる。
呼吸のような、一定の動きで桜の花びらが静かに動いている。
まさか…ここに…?
「にゃー」
早くしろと言いたいのか、にゃんこは足元に擦り付いてくる。
まさかと思いながら、花びらを掘り起こしていくと…スカートが見えた。
そこから脚が生えていて、びよーんと猫のようにこっちに向かって長く伸びている。
雹…。
「雹」
…………。
声をかけて、自分から脱出してもらおうとするが変わらず花びらが小さく動くだけ。
全部掘り起こさないとかなぁ…。
遠は覚悟を決め、花びらをドンドンと退けていく。
途中からにゃんこも手伝ってくれて、気持ちではあるが速く花びらが退けられていく。
それに合わせ、雹の身体が現れていき、スカートだけじゃなく、制服、靴、腕、そして頭。
「…………」
「雹?」
完璧に雹を発掘したのだが、視線は動くことなく一点に向いている。
…それはもちろん本。
伸びる腕の先に、何処か遠くの国の言葉が書かれた本が掴まれている。
まるで、一本の木のように、腕も足も全体を伸ばした雹が床で伏せている。
「にゃーん」
「うん、教えてくれてありがとね」
「にゃ♪」
「…………」
こんもりと積もった桜の花びらを横に置き、擦り寄る猫の背中をしゃがんで優しく撫でる。
それにしても…雹…。
流石の本の集中力…なんだけど…うーん…。
遠は去年の夏を思い出す。
まるで介護のように、飲み物を飲むことを忘れ脱水症状なりかけの雹に遠が飲み物を飲ませる図を。
これまではそのために自分がいたのだと思っていたけれど、流石にそろそろ雹が自分でなんとかすると言うことを教えた方が良いのだろうか…。
「うーん…」
「…………」
ウンウン考える彼をよそに、いつも通り雹はペラペラと紙を捲っている。
そして、そんな雹の背中にズシンと真っ白な塊が休むためにか座り込む。
もう少し積めばブレメーンの音楽隊である。
「…………」
「…………」
声をかけようにも、雹が本を読みきらなければ反応もしてくれないしで意味がない。
ため息を吐いて、飲み物でも淹れてこようかなと立ち上がった瞬間、それは起きた。
「にゃーん」
猫がゆっくりと彼女の背中を伝って本を読む雹の真正面にドンと座り込み、視界をとてつもないくらいに遮った。
…すると
「…にゃんこ、邪魔……。あれ遠、これ…なに…?」
あの雹が本を読み終わらずとも、こちらに桜の花びらについて聞いてきたのだだ。
あの…あの雹が!
「雹…?」
「…?」
「にゃー」
寝ころがった状態から、座り込む形に雹は変え、胸元ににゃんこを抱き寄せる。
「まさか…そんな…」
「…?どうして…そんな衝撃の真実みたいな顔…?」
そんな…。




