猫・3
70話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
すっかりと居着いてしまったあの、真っ白なにゃんこ。
暇になれば先生も来て、例の愛鳥なみに猫を溺愛し始めている。
前にラブレターのようなものを貰っていたと言うのに…やっぱり、立場があるから断ってしまったのだろうか。
「にゃー」
いつもの鳴き声と共に、ぽふんと膝に真っ白な塊が乗る。じんわりとした生き物の暖かさが膝から全身に伝わっていく。
「どうしたんだろうなぁ…先生…」
窓から伝う涼しい風に釣られてか、窓の近くで読書をしている雹を眺めながら遠はそんなことを呟く。
撫でてほしいのだろう、そんな彼の手を猫はぺしぺしと叩く。
「にゃー」
「あ、ごめん」
「にゃーん♪」
ふわりふわりと猫の頭の方向に向かって撫でていく。
撫でる度に猫から鳴き声がして、まるで雹と同じような反応である。
……。
「にゃー…」
「…よしよし。……え?」
ずっと考え事をしながら撫でていると、急に手に触れるものが変わる。
それはちゃんとした猫っぽい鳴き声なのだが、この感触は明らかに別物。
まるで…人の髪のような…
「にゃー…」
「雹…なにやってるの…」
「…見ててうらやましかった」
真顔で雹はそう言う。
そして、その願いの通りに頭を撫でると「ふふ♪」と、猫には出せない人間らしい声が漏れでる。
…あれ…じゃあにゃんこは?
ちょこんと床に座る雹を撫で続け、消えた真っ白を探す。
…と、急に首の辺りにズシンと重みが。
首を動かして、椅子と自分との境目を見ると、その空いたスペースに器用に乗っかっているにゃんこがそこにいた。
首にかなりの重さが預けられている。
「なにやってるの…」
「にゃー」
もちろん猫がしっかりとした言葉で答えることなんて出来ず、愛らしい声で返すだけ。
前門の雹に後門の猫。
そんな図が完成していた。
「気持ちい~…」
「にゃ~」
後ろからも前からも声が聞こえる。
挟まれた遠は身動きが取れない。
これ…変に動いたらにゃんこが椅子と自分とのスペースに落ちてうっかり挟みかねないよね…。
気持ち体を前に倒して、安全になるようにする。
と、そっちに意識を向けると、撫で足りない雹が遠の手を持ち、「早く早く」とにぎにぎしてくる。
「あの…ちょっと…」
「もっと…」
「にゃぁ…」
…本の積み重なった部屋に、人が二人と猫が一匹。
開け放たれた窓からは風か入ってきて、そんな積み重なった本たちのページを人が読むよりも速く、何枚も捲っていく。
そして風だけでなく、新しくここに来た、青春を楽しむ声も響いてくる。
歓声に応援に他にも今しか聞けない無数の声達。
そんな声の中に静かに、だけどはっきりとこの司書室の声も、その中に混じっていた。




