三つのお菓子
62話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
「ユキ、おひとつどうです?」
「んー?」
彼女が紫色の丸いお菓子を取り出して、それを見せてくる。
そのお菓子は三つあるうちの一つが酸っぱいというやつ。
昔、駄菓子屋でよく買っていたような記憶がある。
「それじゃあワタシは真ん中で」
「まぁ、ありがたく貰うよ」
真ん中が取られたので、適当に左を選ぶ。
「いっせーのーで、で、食べましょう」
「ん、了解」
「それでは…いっせーのーで!」
彼女に合わせ、お菓子を一気に口に放り込む。
………。
甘い。
どうやらアタリ…あれ、でもこれハズレ?
こういう場合は酸っぱい方、つまりハズレを引いた方がアタリなんだろうか。
それとも、甘い方がアタリだったんだろうか…分からない。
色々考えながら、彼女を見ると、特に何か変わった様子は無い。
彼女も甘いやつだったんだろうか。
「ユキ、甘かったですか?」
「ん、お前もっぽいな」
「はい、美味しかったです♪」
「それは良かったな。で、そういうことならつまり…」
彼女の手にある、容器に乗った紫色のお菓子に二人の視線が集まる。
「…食べます?」
「いや…ほら、買ったのはお前なんだし…どうぞ」
「いや…あの…ワタシも…酸っぱいのはちょっと…」
分かってて食べるのは気が引ける。
…俺だって酸っぱいのに強いという訳ではない。
むしろ弱い。
ちょっと彼女から距離を取る。
「…俺はいいからな」
「ワ、ワタシも別に…」
…残されたひとつに、何処か情が湧いてくる。
腫れ物扱いされて、お菓子もきっと悲しいだろう。
…だけど、手は伸ばさない。
「…どうする?」
「うぅ~…分かりました!ワタシが食べます!」
「おー」
お菓子を掴んだ彼女に称賛の拍手を送る。
覚悟を決めた彼女はお菓子を自分の目線の高さまで持っていき、大丈夫…と繰り返し呟く。
…そして、ほんの少しして…一気に口に運んだ。
「~~ッ!酸っぱぁい…!」
言う彼女の瞳には、うっすらと涙が見える。
「まぁ…そういうお菓子だしな」
「………」
「何…ていうか、なんで少しずつ近づいてくるんだ」
「…………」
無言で、じりじりと彼女が迫ってくる。
腕を最大限に広げ、まるでこちらを捕まえようと…。
「あっぶない!だからなに…」
ガバッと彼女が捕まえようとしてきて、急いで階段を一段上る。
「お、お口直しです…」
「なにで…」
「ユキで…です」
「俺そんな効果ないんだけど…」
「いいえ、きっとユキが自覚してないだけです…ユキの口にワタシの口をつければ…甘い味が広がるんです…」
「試したことないだろ…」
呆れて言ったのだが、何故か彼女はボーッと、まるでなにかを思い出すような動作をして、顔を赤らめ、
「…えへへ♪」
と、したことがあるような様子で微笑む。
えっ…したこと…えっ?
…記憶を片っ端から探すが、勿論した覚えはない。
…だけど、彼女は俺の家を知っている。
そして、時々俺は家に帰った後にそのまま寝てしまうときもある。
…なら、その時に彼女が来たならば…。
「…嘘ですよね?」
「んふふ~♪ユキの焦った顔は、良い感じのお口直しになりますね♪」
「…いや、それよりも本当の事を…」
「…もちろん無いですよ?」
「そうか…変な冗談は止めてくれ…」
安堵する彼に対し、彼女は言葉の続きを小さく呟いた。
「今はまだ…ですけど」




