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階段の司書室  作者: いす
62/84

三つのお菓子

62話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

「ユキ、おひとつどうです?」

「んー?」

彼女が紫色の丸いお菓子を取り出して、それを見せてくる。

そのお菓子は三つあるうちの一つが酸っぱいというやつ。

昔、駄菓子屋でよく買っていたような記憶がある。

「それじゃあワタシは真ん中で」

「まぁ、ありがたく貰うよ」

真ん中が取られたので、適当に左を選ぶ。

「いっせーのーで、で、食べましょう」

「ん、了解」

「それでは…いっせーのーで!」

彼女に合わせ、お菓子を一気に口に放り込む。

………。

甘い。

どうやらアタリ…あれ、でもこれハズレ?

こういう場合は酸っぱい方、つまりハズレを引いた方がアタリなんだろうか。

それとも、甘い方がアタリだったんだろうか…分からない。

色々考えながら、彼女を見ると、特に何か変わった様子は無い。

彼女も甘いやつだったんだろうか。

「ユキ、甘かったですか?」

「ん、お前もっぽいな」

「はい、美味しかったです♪」

「それは良かったな。で、そういうことならつまり…」

彼女の手にある、容器に乗った紫色のお菓子に二人の視線が集まる。

「…食べます?」

「いや…ほら、買ったのはお前なんだし…どうぞ」

「いや…あの…ワタシも…酸っぱいのはちょっと…」

分かってて食べるのは気が引ける。

…俺だって酸っぱいのに強いという訳ではない。

むしろ弱い。

ちょっと彼女から距離を取る。

「…俺はいいからな」

「ワ、ワタシも別に…」

…残されたひとつに、何処か情が湧いてくる。

腫れ物扱いされて、お菓子もきっと悲しいだろう。

…だけど、手は伸ばさない。

「…どうする?」

「うぅ~…分かりました!ワタシが食べます!」

「おー」

お菓子を掴んだ彼女に称賛の拍手を送る。

覚悟を決めた彼女はお菓子を自分の目線の高さまで持っていき、大丈夫…と繰り返し呟く。

…そして、ほんの少しして…一気に口に運んだ。

「~~ッ!酸っぱぁい…!」

言う彼女の瞳には、うっすらと涙が見える。

「まぁ…そういうお菓子だしな」

「………」

「何…ていうか、なんで少しずつ近づいてくるんだ」

「…………」

無言で、じりじりと彼女が迫ってくる。

腕を最大限に広げ、まるでこちらを捕まえようと…。

「あっぶない!だからなに…」

ガバッと彼女が捕まえようとしてきて、急いで階段を一段上る。

「お、お口直しです…」

「なにで…」

「ユキで…です」

「俺そんな効果ないんだけど…」

「いいえ、きっとユキが自覚してないだけです…ユキの口にワタシの口をつければ…甘い味が広がるんです…」

「試したことないだろ…」

呆れて言ったのだが、何故か彼女はボーッと、まるでなにかを思い出すような動作をして、顔を赤らめ、

「…えへへ♪」

と、したことがあるような様子で微笑む。

えっ…したこと…えっ?

…記憶を片っ端から探すが、勿論した覚えはない。

…だけど、彼女は俺の家を知っている。

そして、時々俺は家に帰った後にそのまま寝てしまうときもある。

…なら、その時に彼女が来たならば…。

「…嘘ですよね?」

「んふふ~♪ユキの焦った顔は、良い感じのお口直しになりますね♪」

「…いや、それよりも本当の事を…」

「…もちろん無いですよ?」

「そうか…変な冗談は止めてくれ…」

安堵する彼に対し、彼女は言葉の続きを小さく呟いた。

「今はまだ…ですけど」

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