頭痛
「うぉぉぉお……」
「頭痛、だいじょーぶですか?」
今日の朝辺りからじんわりとだった頭痛がかなりの痛みになり始めて、頭をガンガンと痛めてくる。
そんな俺を見て、階段を上っている最中彼女はずっと心配してくれていた。
「まぁ…だ、大丈夫だ…」
「少し…休みましょうか?ほら、そこにベンチもありますし…」
階段途中の広いスペースにポツンと置かれたベンチを彼女は指差す。
素直に休憩してもいいんだが、今はさっさと家に帰って薬を飲んで休む方が得策だろう。
痛む頭を抑えて、何とか口を開く。
「今は…とりあえず家に帰って薬飲まないとだから…いい…」
「そ、そうですか…なら、ワタシもお家まで付き添いましょうか…?」
「大丈夫だ…。そんなに酷くはない」
「で…でも、こんなユキを置いてくなんて…ワタシには出来ません!」
彼女は強くこちらを見据えて言ってくる。
その目には、何かメラッと燃える情熱のような物が見えた。
「………本音は?」
「ユキのお家をついでに知っておこうかなぁ…………。
なんて考えてませんからねっ!?」
「そっちが本当の目的か…」
「い、いえいえ!そんなことはありませんよ!?」
「…………」
「…ちょっとだけ、ですよ?ちょーっとだけ…」
視線が俺を外れて、スイーッと横に反れていく。
まぁ、でも、彼女の事だ。
言った通り、ちょっとだけしか本当に考えていなかったのだろう。
付き添ってくれると言ったほとんどの訳はただただ優しさ
で、それに少し見返りを求めてしまっただけなんだろう。
「はぁ…」
「ごめんなさい…あの…な、何もしませんから!ユキのお家で、看病させてもらってもいいですか…?」
覗き込んでくる瞳には、断れるかもしれないという不安が見える。
こんなに心配してくれるなんて、うちの母親以上だ。
あの人だったら頭痛いって言っても「で?じゃあ薬飲めば」って言ってくるし。
でも、だからと言ってすんなり受けるわけにもいかない理由がある。
「もしこれが風邪だったりしたら…お前に移すわけにもいかないしいい」
言うが、彼女は諦める様子は見られない。
もしかしたらの可能性も気にせずググッと金髪が迫って、口を開く。
「だいじょーぶですっ!もし本当に風邪だとしても、ワタシに移ってユキが治るなら…ワタシは構いません!」
「なんでそこまで」
より彼女は迫ってきて、強く言い放った。
「ユキの元気な姿が見たいんですっ!」
「…………っ」
…………。
「ユキの…やる気もないし、意気地もないし、優しくもないいつもの姿を!」
「けなしてるだろ」
一瞬、本当に心を奪われてしまったというのに一瞬にして帰ってきた心。
おかえり心。
「ワタシにここまで言わせても…ダメ…ですか?」
心を奪われていたなんてことに気づいていない彼女は、呆れている様子を見せる俺にまた言葉を掛けてきた。
「あぁ…はぁ…分かったよ…看病頼む…なんかより頭が痛くなってきた…」
「…!!本当ですか…!?」
「あぁ…」
「やった!やりましたよワタシ!ついにあのユキのお家に行けるんですよ!」
まるで、宝くじに当たったかのように嬉しそうで笑みを溢す。
彼女の嬉しそうな大声が、ズキズキと頭に響いてくる。
「うるさい…頭に響くから…」
「あっ、ごっ、ごめんなさい…」
「じゃあ…行くか」
「はいっ!んふふ~♪ユキのお家だぁ~♪」
「変な期待するなよ。普通の家だからな」
「~♪」
俺の言葉なんか耳に届く様子もなく、ルンルン気分で彼女は階段を上る。
本当に看病だけで済むのか、少し不安になった。




