グリコ
51話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
階段でする遊びと言えば、誰だって一つ、思い出す遊びがある。
その遊びの話を彼女はどこかで聞いたらしく、ここも階段だしとやろうということになった。
「でも…ここの階段でやると、普通に数時間はかかるぞ」
学校の階段でやるならともかく、街の階段でこれをするのは無理がある。
その事を伝えてみると、『じゃあ』と言って、彼女が満足するまでという曖昧なところまでということになった。
「それじゃ、いきますよ~?ジャーンケーンポンッ!」
「………」
彼女がパー。
俺はグー。
残念ながら一回目から俺は負けてしまった。
「んふふ~♪勝ちですね~♪パ・イ・ナ・ッ・プ・ル」
意気揚々と階段を6段上る。
このゲームのタイトル名だというのに何故負けるんだグリコよ。
「じゃ、もう一回」
「はーい。最初はグー!ジャーンケーンポン!」
彼女の手の指は開かれ、俺の指は拳の形になる。
…負けである。
グリコよ、貴様の力はそれほどなのか。
俺は信じているぞ。
どこか呆れている彼女が、またさっきと同じようにパイナップルと間延びしながら言って、階段を上る。
「それじゃーいくぞー、ジャーンケーンポーン」
「……。ワタシの勝ち…なんですけど、全然嬉しくないんですけど」
彼女の言う通り彼女はパーを出して勝った。
つまり俺の負け。
彼女がまた6段、遠くへと行く。
グリコ、お前はどうしてパイナップルに負けるんだ。
そもそもグリコとパイナップルは争う必要なんて無いじゃないか。
お菓子と果物。
共に子供へと笑顔を送ろうではないか。
和解への道を指しながら、またじゃんけんを始める。
「ジャーン、ケーン、ポーン!」
「………」
「お、勝った」
彼女の指はチョキの形。
グーを出していた俺の勝ちとなる。
やっぱり出来るじゃないかグリコ。
お前は強いんだグリコ。
どちらかというと相手の善意に頼る勝ち方だけど。
その名の文字数分、階段の段数を上る。
やはりグリコには勝てないなチョコレートは。
なんたってグリコが作ってるんだから。
3段を調子良く上る。
彼女との段数の差は15段。
後5回。
連続で勝てば隣へと並べるが、一度でも負けてしまえば、二倍の差がつくという恐ろしいゲーム。
子供はこの恐ろしさに無邪気さ故に気づいていない。
この…恐怖を…
「あの、ユキ」
「ん、どうして階段を下りてきたんだ」
彼女がいつの間にか、近くにいる。
口調が少し呆れている。
「ユキ、やる気ないですよね?」
「え」
「ユキって、やる気が無いことだと色々と雑になりますし」
「いや真面目に…」
「真面目に三回グーを連続で出すのは作戦なんですか?」
「グリコに対する信頼感だ」
「…はぁ。普通に帰りましょうか」
いつも通りの感じで、彼女が帰宅を提案してくれる。
「何か…ゴメンね」
「だいじょーぶです。こういうところも含めてユキですから」
「そっか」
春の陽気に当てられた一日だった。




