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階段の司書室  作者: いす
43/84

すれ違い

43話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

新入生歓迎会の準備が予定より早めに終わり、昼下がり。

冬の時なら寒さに震えていたが、この時期のこの時間ならそんな心配は必要ない。

有意義に階段を上がっていく。

…しばらく階段を上っていると、手すりを挟んだもう片方の階段から、上から人が来るのが見える。

その人の持つ暖かな風になびく金髪はサクラのピンクを色立てて、華やかさをより際立たせる。

綺麗なものと綺麗なものを合わせても、必ず綺麗なものが生まれるわけではないが、この場合はベストマッチ。

俺が写真家だったら絶対撮らせてくださいって頼んでた。

金髪…綺麗だなぁ…。

ん…?金髪? 

その珍しい髪にしか目が行かなかったが、次は顔へと視線が動く。

大人びているというよりかは可愛いげのある整った顔と、海のような青色の目はこちらに向けられていて、見ていた事の気恥ずかしさもあり慌てて視線を反らす。

…あれあいつじゃね?

どう考えてもあいつじゃね?

嫌だなぁ…疲れてるんだよなぁ。

これで捕まったらすんなりと帰してくれる訳ないよなぁ…。

ここは、見ていなかったということで何とか出来ないのだろうか。

すいー、と目線を下にさげて、あなたの事に気付いてませんよー、別に声かけてこなくても大丈夫ですよーという空気を出しながら階段を少し早めに上がる。

「……………」

徐々に近づく二人の距離。

下りる彼女と、上る俺の距離はかなりの早さで近づいていく。

残り二十段。

顔を横へと動かし、彼女の事を絶対に見ないようにする。

…十段…五段…。

そして…

「ユ~キィ~?何故未来の妻がとなりを通ったというのに挨拶のひとつも無いんですか?」

捕まりました。

手すりを越して、彼女の細い腕が俺の腕を掴んでくる。

「ん?…あ、あぁ!ニア!お前だったのか!」

「さっき目、合いましたよね?ワタシのことずっと見てましたよね?」

「いやぁ、ちょっとボーッとしててな、疲れかな?お前は…買い物か。気を付けて行ってこいよ」

「ちょっと!なに普通に帰ろうとしてるんですか!」

階段を上らせまいと、彼女のもう一つの片腕がまた、こちらの腕を掴む。

「…なんだよ」

「どうやらその様子だと、予定より準備が早めに終わったようですね?ユキ」

「そうだけど…ていうかなんだよそのゲームのやけに察しの良いNPCの台詞みたいなのは」

「お暇なら、デートしませんか?」

昨日のように、彼女は笑顔を見せてくる。

服装も春に合わせてか爽やかなワンピース。

だからだろう、より一層その笑顔は可愛さを増してくる。

「しません」

…まぁ、だからと言ってデートに付き合うわけじゃないんだけど。

聞いた彼女は、むーっと唸った。

「どうしてですか?」

「さっきも言ったろ。疲れてんの」

「なら、ワタシと一緒に甘いものでも食べに行きましょうよ」

「嫌だ。俺はそういうのより家にいた方が疲れとれるタイプなの」

「えーっ、行きましょうよ~!ほら、今来たらワタシがあーんしてあげますよ?」

「…行かないぞ」

「今一瞬悩みませんでした?」

「な、悩んでない」

「ふふっ、ユキもやっぱり男の子なんですね」

「悪かったな…」

「いえいえ攻めてなんていません!むしろワタシとしてはユキのそういうところが見れるのは嬉しいですし」

「嬉しいって…はぁ、ともかくだ。俺はデートには付き合わんからな」

「そうですか…それは残念ですがそこまで言うならユキも本気なんですね」

「ああ」

「はぁ…ユキは女の子を街に一人で行かせるような冷たい男性だったんですね…」

「………」

「あぁ!これでもしワタシが危険な目にでもあったら!」

わざとらしくではあるが、こいつの見た目が見た目だから目立つし、可能性が無いわけではない…。

「…………」

「…デート、行きません?」

わかった上で、わざと彼女は聞いてくる。

いじらしい笑顔は小悪魔のようだ。

「……分かった。行くよ、付いてくよ」

「ふふ~ん♪それじゃあ、行きましょう!」

腕だけでなく、彼女自信も手すりを越してこちらに引っ付いてくる。

それを剥がしながらまた、上ってきた階段を下りていく。

桜降る街へと二人で、ゆっくり向かっていった。


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