大雪
三十四話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
彼が扉を開けると、まず視界に入ってきたのは雹の驚いた顔だった。
彼のコートにはかなりの雪が積もっていて、雪山で遊んだときの雹と同じぐらいだったからだ。
「ど、どうしたの…!?」
声をあげて急いで彼に近づき、雪をパラパラと雹ははらう。
そんな彼女を見ながら彼はあはは…と、苦笑いを見せた。
「外、凄い量の雪でさ…その中を走ってたらこんな風に…」
「か、傘は…?」
「誰かに取られちゃってたみたい…コンビニとか寄っておけば良かったね…」
「と、とりあえず、コート脱いで、わ、私暖かいの用意するからっ…!」
彼よりも取り乱している雹は、お茶の葉が取りたかったのだろうか、入り口近くに置かれているフクロウの人形を掴んで、ぽぷーと気の抜ける音を鳴らしながらポットまで向かう。
「ごめんね……って雹!それフクロウ!」
「えっ?あっ…」
彼のカップにはフクロウがぎゅうぎゅうと詰められている。
歪んだ顔が悲しそうにお湯を待っていた。
「危なかった…」
「もう少しでフクロウティーだったね…」
雹はカップからフクロウを取り出して、今度はぽぺーと音を鳴らしながら毛糸の木の人形の傍に置く。
フクロウの人形は嬉しそうに木にもたれ掛かった。
「…僕が淹れようか?」
「ダメッ、私がやるの…!」
「心配だなぁ…」
「君はストーブで暖まってて」
「うん…」
「こぼさないからだいじょーぶだよ」
雹が見えるようにストーブを背中側にして、彼はしゃがむ。
ポットのカチッという音で跳び跳ねて驚く雹からは一抹の不安が残る。
ドキドキしながら見ていると、お湯を淹れ終わったのか雹はカップをお盆に乗せる。
湯気が天井に向かってゆらゆらと揺れていた。
「………」
雹がテーブルにお茶を置くと
彼も見るのをやめてテーブルの傍の椅子に座る。
「ね、こぼさなかったでしょ?」
「うん…それは…凄いんだけど…」
彼の不安は取り除かれたが、また別の不安が出てくる。
カップいっぱいに注がれたお茶。
こぼれんばかりのお茶は少しカップに触れただけで、大きく揺れる。
それを何とか飲むと、苦味のあるお茶らしさの美味しさと、暖かさが口に広がる。
「どう…美味しいかな…?暖まるかな…?」
「うん、どっちも完璧だよ」
「やった…!」
「でも…ちょっと量が…」
「えっ…足りなかった…?ごめんなさい…」
「いや…あの…」
「そうだ!私のカップのも淹れてくるね…!待ってて!」
「あ…」
閃いた!と言わんばかりに急いで雹はもう一つカップを用意する。
鼻唄混じりの彼女はとても楽しげで、邪魔なんて出来ない。
…彼はゆっくりと、諦めたように顔を俯かせた。




