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階段の司書室  作者: いす
30/84

ミカン

三十話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

ミカン味のグミだったり、オレンジの飴だったり、デコポンのジュースを飲み食いしている彼女だが、実は、柑橘類自身はさほど好きではない。

確かに、実際に食べる果物と加工された果物味のお菓子では味の違いは出るものの、ここまで柑橘類のお菓子を好んでいながら実物は好きではないと言うのは、初めて彼が聞いた時もいまいち理解はできなかった。

彼女に確認のためにもう一度聞くと、「パンは好きでも小麦は食べないよね?」と返され、「うん…」としか彼は言えなかった。

何というか…凄く考えなければならない理論だった。

今、美味しそうにグミを食べる雹に実物のミカンを出してなら、たちまち嫌そうな顔をするというのはどう頑張っても想像がつかない。

結局、考えないと言うことを答えに今日も彼は幸せそうな彼女を眺める。

「どう、美味しいかな?期間限定のそれ」

「うん!すごーく美味しい!」

「なら、僕のもあげるよ」

「…いいの?」

「どうぞ」

「やった~♪」

残り少ない雹の柑橘類のお菓子の横に、彼は自分の器を動かす。

沢山に戻ったお菓子を見て、雹の笑顔は輝いて、目の中にキラキラが見えるような気さえする。

お菓子だけでここまで幸せになれるのはこの世で雹だけなんじゃないかな、と彼は思う。

受け取った雹は、グミを一つつまんだが、そのまま自分の口に運ばず、何故か彼に差し出す。

「…?全部雹にあげるよ?」

「私のだから、どうしようと私の勝手…ね?あの…あーんしたいから口開けて欲しいの…」

「分かったよ。ほら、あーん」

「あーん♪」

雹の指に口がつかないように、慎重にグミを食べる。

甘さと爽やかな風味が口の中に広がった。

「ありがと」と雹に言うと、ぱあっと笑顔になり、もう一個、とまたグミを取る。

「あーん♪」

「うん、とっても美味しいよ」

また、口の中にミカンの味が。

えへへと嬉しげに笑う彼女はまたグミをつまむ。

「あーん♪」

「あの、雹…」

「あーん…」

元気のないあーん、が彼の耳に届く。

「あ、あーん…」

「…美味しい?」

「う、うん…」

しばらく続いた。

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