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階段の司書室  作者: いす
29/84

メガネ

二十九話目です

誤字・脱字があったら申し訳ありません

先程から本を読む彼に向かって、ひとつの強い視線が送られている。

その視線の元には、メガネをかけた雹がいて、何時になったらその事に触れてくれるのかと、彼を見つめていた。

彼もメガネをかけた彼女に気づいていないわけがないのだが、今までの彼女との思い出を遡ると大抵こういう場合は触れない方が良い。

ということが分かっているので、あえてそのまま放置しているのだ。

彼女が立ち上がり、彼の前を往復する。

時折、ちらっと顔を覗き込んできて、メガネをくいっといじる。

その顔には期待という言葉が

書かれていて、そわそわしている所も一部見られる。

…彼は諦め本を閉じ、意を決して聞いてみた。

「…どうしたの、そのメガネ」

「気になる?気になっちゃうかな?」

雹はずずいと迫ってきて、またメガネをくいっと上にあげる。

「すごく気になるよ」

「んふふ~♪これねぇ、だて眼鏡。ほら、こうやって本を読むと知的な人に見えないかな?」

愛用のテーブル前の椅子に座り、本を持って彼に顔を向ける。

知的な人に見える…。

というか、彼女自身本当に知的である。

教科書も一応彼女にとっては本の扱い故、暇さえあれば読んで、暗記している。

だから昔、彼も勉強を教えてもらおうとしたのだが、教え方がかなり独特なので一般人に伝わる事はなかった。

それ以来彼は勉強は自力で頑張るようになった。

「とっても賢く見えるよ。うん、すっごく似合ってる」

「ほんと!やった~!えへへ~」

「…あれ、ていうかそのメガネってどこから持ってきたの?」

「んーっと、図書室に置いてあって、そこの忘れ物の箱に入れておいたの」

「…つまりは人の物ってことね…戻してきなさい」

「え~、もうちょっとつけてたい…」

「落とし主が来たらどうするの」

「むぅ…分かった」

渋々メガネを外して、悲しそうに入り口脇の箱へと戻す。

別れ惜しそうに、一度振り返って箱を見たが、吹っ切れるためかよし!と小さく言って彼のもとに戻ってくる。

だが、その顔は少し暗い。

「よろしい…って、そんな悲しそうな顔やめてよ…」

「相棒が…」

「相棒だったんだあれ…」

「一時間限りの相棒…」

「じゃあ今から代理の相棒を紹介しようかな」

「…?」

鞄からオレンジ色のパッケージの袋を取り出すと、彼女の目がきらめく。

ぱあっと笑顔が咲き、視線は袋へと一直線になる。

「グミ。買ってたの忘れちゃってた」

「ほぉぉぉ……」

いつもの調子に戻った彼女を見て、メガネが少し可哀想に彼は思った。

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