クリスマス
二十五話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
街の装いは完全にクリスマス一色となり、至るところに量産型サンタが蔓延っていた。
そんな浮わついた街を進み、学校の階段を上って司書室の扉を開ける。
すると、嬉しそうに紅茶を用意していた雹が出迎えてくれて、その頭にはサンタ帽がちょこんと乗っていた。
彼は雹に一言挨拶をして、持ってきた『past』と書かれているケーキの箱ともう一つの違う店名が書かれたのをテーブルに置いた。
past箱に真っ先に近寄り、ワクワクしながら彼女は開けるとほおぉ…と感嘆の息を漏らす。
「雹、気に入ってくれたかな?」
「うん!モンブラン…チョコ…イチゴ…他にもこんなに…!…あれ?こっちは?」
雹はケーキに夢中だったが、横に置かれた箱に視線が移り、不思議そうに箱を色々な角度から見始める。
コートを掛けた彼は、そんな彼女に近づいて、まじまじと見つめている箱を開け、中身を取り出す。
「これね、今日限定のゼリー。限定、って言葉に釣られちゃって買ってきちゃったんだ。とっても柔らかいんだってさ」
「へぇ~確かにぷるぷるしてて美味しそう…」
「気に入ってくれたなら良かったよ」
「ありがとね!それじゃあ私も紅茶、準備するから!」
「こぼさないようにね!」
「うん!」と返事をしながらも浮わついている足取りを見て、不安になり忠告をする。
雹と昔からの仲の彼ならこういった時に彼女がうっかりドジを踏む予想は出来る。
注意しても変わらずルンルン気分でティーポットをお盆に乗せる彼女を見て、よりいっそう不安が襲う。
「~~♪」
「…雹、絶対だよ?」
「だいじょ~ぶだってぇ……って…うひゃあ!」
予想通り、雹は床につまずき、ティーポットとお盆は宙に舞う。
だが、予想していたことならば対処は出来る。
彼は素早くお盆を掴んで、ティーポットの落ちる位置を読み、そこにお盆を構える。
その際、舞った中身の紅茶を少し浴びたが、それでも中身全てがこぼれることはなかった。
「ふぅ…危なかったぁ…」
「おぉ…!すごい、とってもすごいよ!」
「ひょ~う~?」
「お、怒らないでよぉ…事故なんだもん…」
「はぁ…」
ため息をつく彼に近づくと、雹はスンスンと鼻を鳴らした。
「君、紅茶の匂いで良い匂い…」
「どうしようかな…この服」
「サンタさんの服ならあるけど、着るかな?」
「何でそんな物が…まぁ、仕方ないね」
「君のサンタ姿なんて久しぶりだね」
「誰のせいかな?」
「うぅ……」
こうして、彼も今日だけの量産型サンタの仲間入りをしたのだった。




