ストーブ
二十三話目です
誤字・脱字があったら申し訳ありません
いつもなら、扉を開けたら暖かな風と雹の声が出迎えてくれたのだが、今日は違う。
外で味わったのと同じな冷えきった空気と、滅多に聞くことの無い雹の震えた声が出迎えた。
「ど…どうしたの?」
「すすストーブ…壊れた…」
毛布に全身をくるんで、顔だけを見せて雹は言う。
ストーブを見れば『故障中』
と書かれた紙が、セロハンテープで貼られている。
「…図書室の方なら暖房効いてるんじゃ…」
「図書室には時々人来る…」
「雹って一応図書委員だよね?」
「…読む専門」
その証拠、と言わんばかりにテーブルの上に置いてある本を見る。
今日は恋愛ものを読んでいたのだろうか、しおりが挟まっている。
「えっと、じゃあどうする?このままここにいたら風邪とか…」
「大丈夫…ちゃんと暖まれるの考えてある」
「どんなの?」
「…こっちこっち」
ソファへと手招きをして、ポンポンと生地を叩く。
誘われるがままに彼がコートを着たままソファへと座ると、「邪魔」と言って彼のコートを剥ぎ取る。
そして、制服になった彼に自分が装備していた毛布をかけて、全力でピタッとくっついた。
「あ、確かにあったかい」
「でしょ~?えへへぇ…だからぁ、もっとくっついて…」
磁石のように密着すると、彼の肌に雹の体温がじんわりと伝わる。
ふへぇ…とにやける彼女は頭を彼の肩に乗せた。
微笑む雹の耳は真っ赤に染まっていた。
「…ねぇ、どうして急にストーブが壊れたの?」
レモンティーを淹れたカップをテーブルの上に置き、ストーブを見ながら彼は聞いた。
昨日まではあんなに元気に温風を出していたのに、そんな唐突に壊れるものなのかな?
「機械の命は儚い…人間と一緒」
「……………」
「命の大切さと尊さを知ってね」
「話が変わったような…」
「とにかく、来週までには直ってるから気にしないで…」
「うん…」
彼の疑いの眼差しに、変わらない表情の雹。
その瞳には嘘は一つとして見られなかった。




