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六、戦いのはじまり(2)

 カノンは、ムッとしているシエラを見て、


「最初は、領主を尻にしいてた女だから、よほどゆだんのならない女かと警戒してたが、実物を見て、ただの十七かそこらのガキだったと、まあ、ある意味安心してんだよ。マクラムもまさかお前が、ここまでガキだったとは予想もしてなかったようで、かなり悪どくだまくらかしてたんだな、って笑ってる最中なんだ。」


 そして、シルは大変だなと付け加えた。カノンの授業は、ごく短時間で終わった。乗り方とたづなの取り方を少し教えてもらっただけで、シエラはハクをすぐに乗りこなせるようになった。


 そして、翌日から修行が終わった午後の少しの時間、シエラはシルといっしょに外の空気をすっていい事になった。シエラは、ハクに乗ってるのがうれしくてたまらないようだ。


 きゃあきゃあ、さわぐシエラのうしろから、シルは茶色い馬にのりつつ、のんびりとついてきている。ハクは、シエラの言ってる内容が理解できるようだった。あっち行こうと言えば、すぐに向きをかえ向かう。走れと言えば、シエラが落ちないよう気をつけつつ、走った。シルはハクをふしぎな馬だと感じていた。


 いつのまにか城からだいぶ(はな)れ、シルはそろそろ帰ろうと言う。シエラは不満だったが、シルににらまれ、しぶしぶ城へと足を向けた。


 ハクが急に姿勢を低くし、シエラは落ちそうになる。地面には矢が突き刺さっていた。シルが走れとさけび、ハクはかけだした。矢がまた飛んできた。敵は見えない。二人はとにかく、城に向かって逃げるしかない。


 かなりの距離を走ったので、シルの馬は、ばててしまった。さいわい川があったので、馬に水をのませ休憩をする。ハクは、平然としていた。シルは、


「どんだけ体力があるんだ、その馬は。たいていは、へばるぞ。とにかく、少し休憩したら城にむかおう。おれもうかつだった。」


「ナルセラが、戦争しにきたのかな。」


 シルは、少し考えた。


「戦争するんだったら、こんなせせこましい事しないで、はでに始めるはずだ。」


 きゃあ、シエラが悲鳴と同時に、背後のしげみへと消えた。シルは、しまったと思う。そして、矢が数本飛んできて、すぐに止んだ。シルはさがした。が、見つからない。襲撃者のねらいは、最初からシエラだけだったようだ。


 ナルセラの領主が命令したのは事実だろう。いままで、シデンに戦争をしかけてこなかったのは、シエラを誘拐するチャンスを待っていたせいなのだろう。シルは、自力では無理だと思い、城へと応援をたのみにもどろうとした。


 ドサリと音がし、背後に大男が立っていた。男は、シエラを荷物のように肩にかついでいる。シルは、あわててシエラを男から受け取った。


「ジン! どうしてここに。」


「マクラムの旦那から護衛をたのまれてたんだよ。お前一人じゃたよりないからな。あんのじょう、これだ。」


 シルは、眠っているシエラをよかったとだきしめた。ジンは、


「シエラの人脈は、あまく見ないほうがいい。マクラムのもとにはな、シエラがいるというだけで、かなりの応援が集まっているんだよ。いままで、水面下でバラバラになっていた、イーデンに不満をもつ連中が集まってきているんだ。


 シエラは、かなり顔が知られているようだし、なにせあの美貌だ。領主が、奴隷女にのぼせ上がっていたのは、みんな知ってる事実だし、それが夫が助けにきたとたん、顔を切りきざんで、手のひら返すようにして逃げたんだしな。みんな、スーッとしたと言ってるんだよ。よくやってくれたとな。


 それに、シエラは、領主をやる前に、なんか言ってなかったか。」


「ああ、言ったよ。シオン信者のうらみを知れってね。なんか、言わなきゃ決まらないって。」


 ジンは、ニヤリと笑った。


「領主が、それにえらい腹をたててるってウワサだ。あれだけ、かわいがって大切にしてたのに、すべては裏切られたとな。そして、イーデンの神への背教(はいきょう)者として、シエラを魔女とし公開処刑をして、シオン信者への見せしめにしてから、こっちへと攻めてくる算段のようだ。」


「背教者で魔女ね。シエラは改宗なんかしてないよ。生きるために、ウソの改宗なら今まで、さんざんしてたもんな。」


「それが、おしつぶされていた、シオン信者に火をつけたんだ。領主の顔に一太刀(ひとたち)だぜ。未遂(みすい)におわったが、お前らは瀕死(ひんし)の重傷を負わせた。マクラムが言ってたよ。シエラがした意味は、大きいってな。だから、お前も早く強くなれ。いつまでもガキの剣技じゃ守りきれないぞ。」


 シルは、シエラの寝顔を見つめた。


「おれにとっては、シエラは妹で女房だ。おれのたった一人の家族なんだよ。女房だけなら、他の男にうばわれているのが、ガマンできなかったろう。でも、妹だと思えばこそ、再会し助け出す勇気をもてた。シエラもたぶん、そうのはずだ。」


 シルは、泣いているようだった。ジンは、帰ろうと言う。ハクは、シエラをだきしめているシルを乗せてくれ、シルが乗ってきた馬はジンがあやつった。



 そして城に帰ったその晩、マクラムはシエラを養女にしたいと、シルに持ち出した。


「ジンから話はきいているだろう。どのみち、シデンはナルセラ、いやイーデンと戦うしかない。シデン一つだけでは、ナルセラを相手にするのは無理があるが、協力者が出始めている今なら勝ち目はある。


 シエラが私の娘になってくれるのなら、シオン信者達の協力もとりつけやすくなるし、シデンの娘をさらわれたうえ奴隷にされ、なぐさみ者にされたとの、戦争のための正当な理由もつくだろう。


 それに、だれかが先陣(せんじん)を切って立ち上がらなければ、いつまでたっても、だれも何もしようとしないし、このままではエイシア人としての魂が死んだと同じになってしまう。」


 シルは、


「養女ね。女房としてでなくて残念なんだろ。」


 マクラムは、ニヤリと笑う。


「それもいいかもな。お前は、適当に処分してな。」


 シエラは、


「シルが死ぬんだったら、私も死ぬよ。絶対、はなれないって決めてんだしさ。」


 マクラムは、


「死なれちゃ、こまるしな。ちょうどいい白馬も手に入ったし、明日からそれに乗って、あちこちに行ってもらいたい。ジンを始めとして、護衛はつけるから。」


 シルは、


「ねらわれてんのに、仕事させんのかよ。」


「ここにいたって同じなんだよ。それだったら、あるていど、動いていた方が敵もかくらんできる。」


「私、やる。」


「シエラ。」


「やらせて。どのみち逃げられないのなら戦ってやる。リタからたのまれたもの。この国を解放してくれって。」


 マクラムは、ニヤリと笑った。



 シエラは、農民の娘からマクラムの娘になった。マクラムはこの土地の領主で、貴族の地位に匹敵(ひってき)するほどの身分をもっている豪族(ごうぞく)だったので、シエラは、その日から、姫様と呼ばれるようになった。

千年王国との転生過程について

  マクラム・・・サイモン(千)

  ジン・・・・・エッジ(千)


読み比べてみるとわかりますが、同一の魂が転生してるだけあり、性格がまったく同じです。やってることも同じです。魂は自分にあった環境を選び仕事を選び、この世界に生まれてきているのです。

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