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0263・お話し合い

すみませんが、本日より一話更新となります。


文芸・歴史カテゴリで「式神と霊兵」という新作を公開しました。宜しくお願い致します


https://ncode.syosetu.com/n5672me/





 Side:イシス



 俺が女をファイヤーマンズキャリーで運び、バステトが女の子を背負っている。

 甲板かんぱんに出ると既に海の魔物に食われたのか、海に投げ捨てた連中は居なかった。

 その海に俺達は通路の死体を捨てていく。


 女の子は通路の死体に怯えていたが、「これこそが君達のやろうとした事だ」と言ったら納得はしたようだ。

 そういう部分を見ても、やっぱり唯の貴族の子じゃない気がする。


 俺達は海に下り、一気に元の大型船へと走っていき、最後は海の水を持ち上げてジャンプする。

 あっさりと戻ってきた俺達にリリエもラディも驚いているが、何故ここに巡視官の二人も居るんだ?



 「我々が居るのは二度手間になるのを防ぐ為だ。君達もいちいち同じ話を何度もしたくあるまい? それと家令をこちらに運んでおいた。もしかしたら聞かなければいけない事があるかもしれないのでな」


 「まあ、確かにそういう事もあるかもしれないな」



 そう言いながら、俺は女を甲板かんぱんに下ろし、バステトは背負った女の子を下ろす。

 その子の顔を見た王族のお坊ちゃんは、驚いた後で名前を呼んだ。



 「まさかあの大型船にナズトーラ第三王女が乗っていたとは……。いったいグィズマ王国はどうなっているのだ? 我らを襲ってきた船が王女の船というか、王女を護衛する船とは訳が分からぬ」


 「貴方はサッティア第二王子。貴方が何故このようなところに……?」


 「我が国の王子は必ず国の裏側を見ねばならぬのですよ。その為に地方巡視官という仕事を行う事が義務付けられている、という訳です。王太子殿下は数年で終わりますが、私は第二王子ですのでね、このままでしょう」


 「そ、そうなのですか。大変なのですね」


 「そう、ですね。それでナズトーラ第三王女は何故あの船に? 言葉は悪いですが、我々を襲ってきた船団を実質差配していた船でしょう?」


 「え、ええ……。その、それは…「う、うう」……シロコ!?」


 「シロコ? その人物はシロコ・ローデムスか……。<グィズマの白獅子>と恐れられる人物だ。よくもまあ、彼女が相手で我々は勝っ……いや、勝ってないな。我々は勝っていない。彼らがおかしいだけだ」


 「失礼だな。俺達が変だという言い方は止めて「う、ここは何処だ!?」もらおうか。っと、目覚めたか」


 「うん? その声は私の剣を受け止めていた人間だな!? ……くっ! 手足が動かんとは!!」


 「そりゃ縄で縛られてるんだから、動くわけが無いだろう。動いた方が困るわ。それよりも、既に負けたうえに、ここは俺達が乗る船だ。負け組の大将として甘んじて受け入れろ」


 「まだ私は負けていない!!」


 「負けていないと言い張れば負けないとか、お前は子供か!」


 「ぷっ……」


 「ほらみろ。王女にすら笑われてるじゃないか。自分は負けたのだと自覚しろよな」


 「くそ! 第三王女殿下、御無事ですか!! 縄を打たれているのでは!?」


 「お前みたいに暴れないんだから、そんな事をする筈がないだろ。白獅子とか呼ばれているらしいが、考え無しなだけなんじゃないのか? それとも今までの相手が弱かっただけだろ。強い相手なら、あっさり負けるくらいなんだしさぁ」


 「なんだと!?」


 「いや、それは流石に違う。君達が反則すぎるだけだ。幾らなんでも可哀想だろう。何処の国に海の上を走り、敵船に一人で乗り込んで制圧する者が居るんだい? あり得ないんだよ、普通は」


 「そんな事を言われてもなぁ……。ほら、現にやっちゃった後だし」


 「うん。出来る時点でおかしいと理解してほしい。普通の者は君達のように常識から外れてないんだよ?」


 「「「「「うんうん」」」」」



 俺達は出来る事をやっているだけだがな。

 それより、この獅子の尋問をどうするか聞くのが先か。



 「まあ、それはいい。それよりこの獅子の尋問をどうする気だ? こいつ間違いなく本当の事は喋らないと思うぞ?」


 「<グィズマの白獅子>と呼ばれる人物が、簡単に喋るとは思ってないよ。我々がやるべき事は、王都へ護送する事ぐらいさ。後は向こうで取調べを受けるだろうし、私は関知できないだろうと思う。特に第三王女だからね」


 「ご迷惑をおかけします」


 「いえ、そんな事はありませんよ。我が国としても、王族の方に手荒な真似をする訳にもいきませんからね。戦闘になったのは、そちらからでしたし」


 「その事も含めて話し合いといこうか。俺達も真相を知りたいんでな」


 「話し合い? ……って、まさか!!」


 「話し合いは監獄で行うのが当たり前だろう。俺の許可がないと出られない監獄でな!」



 そう言った瞬間、俺は<時空の狭間>に全員を飛ばす。


 実はヌンさんが、何としても<時空の狭間>に連れて行けと五月蝿いんだ。

 理由は反抗する者に対して、記憶の覗き見だけでどこまで出来るのかの実験らしい。



 「またここですの? 仕方がないと諦めるべきでしょうか……」


 「今回は話し合いだから<解放調整室>を使う。そこはストレス、つまり心と体が受けている圧を軽くする為の部屋だ。行けば分かる」



 そう言いながら俺は獅子の縄を外す。

 何故ならここに来た以上は逃げ場が無いからだ。

 外すとすぐに立ち上がり周囲を牽制し始めたが、第三王女が居るので大人しくなった。

 自分が暴れて第三王女に何かあっては困るというところだろう。


 俺はヌンとバステトとハトホルに任せ、<物品作製装置>の部屋に行ってお茶の用意をする。

 紅茶と緑茶の茶葉に湯のみにティーポットの追加。

 それと増えていたじゃがいもでポテトチップスを作り持って行く。


 オリーブオイルなどの油も作れたので、簡単に大量生産出来る様になった。

 助かるったらないね、本当。

 ちなみに焼き芋もあるので、こっちが良い人もいるだろう。

 適当に出すかな。


 <解放調整室>に戻った俺は、早速湯飲みを大量に出して紅茶を入れていく。

 今回は大きなティーポットに入れたので、結構な人数が飲めるだろう。

 俺は熱々の緑茶を飲むので、今回も紅茶は飲まない。


 適当に出したポテトチップスと焼き芋に怪訝な顔をされたが、俺は一切気にする事もなく進めていく。

 お茶が全員に行き渡ったら、後は話し合いの開始だ。



 「食べる食べない、飲む飲まないは好きにしてくれて構わない。あと、トイレは向こうな? で、ここからは話し合いだ。まず第一に何故こちらを襲ってきた? そもそも無視すれば良かっただろう」


 「ふん! そちらを海賊だと思っただけだ。そうしたところ、おかしな連中に負けたがな」


 「ヌンさん、どんな感じ?」


 「どうやらソブトル家の島である、ソノトン島の様子見をする為に向かっていたようですね。実際には占領する前の下見です」


 「なっ!?」


 「成る程なぁ……。ああ、この場ではヌンさんに記憶とか含めて全て覗き見られるからな。嘘を吐いたところで何の意味も無いぞ。さて、話し合いを続けようか」


 「ふざけるな! こんなものは話し合いではない!!」


 「俺達にとっては話し合いだ。それに、ここから出るには俺の許可が要るんだよ。その許可が無い限り、ここからは永遠に出られない。だからこそ、お前の縄を解いたんだ。出られないなら縄で縛る必要も無いからな」


 「何を訳の分からん事を……!! 貴様の下らん嘘など聞く訳がなかろうが!!!」


 「なら自由に動き回っていいぞ。半日も動き回れば気付くだろ、どうにもならないという事実がな。それまでゆっくりしているか、阿呆が諦めるまで待てばいい」


 「面倒ですが、仕方ありませんわね。先ほどからラディが「パリパリ」させているのが気になっていましたし、そちらを頂こうかしら」


 「姉上、これ美味しいですよ。何かは分かりませんけど」


 「それはポテトチップスだ。簡単に言うと、じゃがいもを薄く切って、油で揚げただけだな。最後に塩を振ってはいるが」


 「ふむ、パリパリしますがそれだけですわね」


 「メチャクチャ美味しいものじゃないが、気付いたら沢山食べているという物だ。ま、好きに食べるといいさ。あの阿呆が疲れて諦めるまでは暇だしな」


 「早く諦めてほしいけど、そう簡単には諦めないだろうね」



 俺もそう思うが、納得できないんだろうなと思う。

 とはいえ、俺達がそれを斟酌しんしゃくしてやる理由はないが。


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