0263・お話し合い
すみませんが、本日より一話更新となります。
文芸・歴史カテゴリで「式神と霊兵」という新作を公開しました。宜しくお願い致します
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Side:イシス
俺が女をファイヤーマンズキャリーで運び、バステトが女の子を背負っている。
甲板に出ると既に海の魔物に食われたのか、海に投げ捨てた連中は居なかった。
その海に俺達は通路の死体を捨てていく。
女の子は通路の死体に怯えていたが、「これこそが君達のやろうとした事だ」と言ったら納得はしたようだ。
そういう部分を見ても、やっぱり唯の貴族の子じゃない気がする。
俺達は海に下り、一気に元の大型船へと走っていき、最後は海の水を持ち上げてジャンプする。
あっさりと戻ってきた俺達にリリエもラディも驚いているが、何故ここに巡視官の二人も居るんだ?
「我々が居るのは二度手間になるのを防ぐ為だ。君達もいちいち同じ話を何度もしたくあるまい? それと家令をこちらに運んでおいた。もしかしたら聞かなければいけない事があるかもしれないのでな」
「まあ、確かにそういう事もあるかもしれないな」
そう言いながら、俺は女を甲板に下ろし、バステトは背負った女の子を下ろす。
その子の顔を見た王族のお坊ちゃんは、驚いた後で名前を呼んだ。
「まさかあの大型船にナズトーラ第三王女が乗っていたとは……。いったいグィズマ王国はどうなっているのだ? 我らを襲ってきた船が王女の船というか、王女を護衛する船とは訳が分からぬ」
「貴方はサッティア第二王子。貴方が何故このようなところに……?」
「我が国の王子は必ず国の裏側を見ねばならぬのですよ。その為に地方巡視官という仕事を行う事が義務付けられている、という訳です。王太子殿下は数年で終わりますが、私は第二王子ですのでね、このままでしょう」
「そ、そうなのですか。大変なのですね」
「そう、ですね。それでナズトーラ第三王女は何故あの船に? 言葉は悪いですが、我々を襲ってきた船団を実質差配していた船でしょう?」
「え、ええ……。その、それは…「う、うう」……シロコ!?」
「シロコ? その人物はシロコ・ローデムスか……。<グィズマの白獅子>と恐れられる人物だ。よくもまあ、彼女が相手で我々は勝っ……いや、勝ってないな。我々は勝っていない。彼らがおかしいだけだ」
「失礼だな。俺達が変だという言い方は止めて「う、ここは何処だ!?」もらおうか。っと、目覚めたか」
「うん? その声は私の剣を受け止めていた人間だな!? ……くっ! 手足が動かんとは!!」
「そりゃ縄で縛られてるんだから、動くわけが無いだろう。動いた方が困るわ。それよりも、既に負けたうえに、ここは俺達が乗る船だ。負け組の大将として甘んじて受け入れろ」
「まだ私は負けていない!!」
「負けていないと言い張れば負けないとか、お前は子供か!」
「ぷっ……」
「ほらみろ。王女にすら笑われてるじゃないか。自分は負けたのだと自覚しろよな」
「くそ! 第三王女殿下、御無事ですか!! 縄を打たれているのでは!?」
「お前みたいに暴れないんだから、そんな事をする筈がないだろ。白獅子とか呼ばれているらしいが、考え無しなだけなんじゃないのか? それとも今までの相手が弱かっただけだろ。強い相手なら、あっさり負けるくらいなんだしさぁ」
「なんだと!?」
「いや、それは流石に違う。君達が反則すぎるだけだ。幾らなんでも可哀想だろう。何処の国に海の上を走り、敵船に一人で乗り込んで制圧する者が居るんだい? あり得ないんだよ、普通は」
「そんな事を言われてもなぁ……。ほら、現にやっちゃった後だし」
「うん。出来る時点でおかしいと理解してほしい。普通の者は君達のように常識から外れてないんだよ?」
「「「「「うんうん」」」」」
俺達は出来る事をやっているだけだがな。
それより、この獅子の尋問をどうするか聞くのが先か。
「まあ、それはいい。それよりこの獅子の尋問をどうする気だ? こいつ間違いなく本当の事は喋らないと思うぞ?」
「<グィズマの白獅子>と呼ばれる人物が、簡単に喋るとは思ってないよ。我々がやるべき事は、王都へ護送する事ぐらいさ。後は向こうで取調べを受けるだろうし、私は関知できないだろうと思う。特に第三王女だからね」
「ご迷惑をおかけします」
「いえ、そんな事はありませんよ。我が国としても、王族の方に手荒な真似をする訳にもいきませんからね。戦闘になったのは、そちらからでしたし」
「その事も含めて話し合いといこうか。俺達も真相を知りたいんでな」
「話し合い? ……って、まさか!!」
「話し合いは監獄で行うのが当たり前だろう。俺の許可がないと出られない監獄でな!」
そう言った瞬間、俺は<時空の狭間>に全員を飛ばす。
実はヌンさんが、何としても<時空の狭間>に連れて行けと五月蝿いんだ。
理由は反抗する者に対して、記憶の覗き見だけでどこまで出来るのかの実験らしい。
「またここですの? 仕方がないと諦めるべきでしょうか……」
「今回は話し合いだから<解放調整室>を使う。そこはストレス、つまり心と体が受けている圧を軽くする為の部屋だ。行けば分かる」
そう言いながら俺は獅子の縄を外す。
何故ならここに来た以上は逃げ場が無いからだ。
外すとすぐに立ち上がり周囲を牽制し始めたが、第三王女が居るので大人しくなった。
自分が暴れて第三王女に何かあっては困るというところだろう。
俺はヌンとバステトとハトホルに任せ、<物品作製装置>の部屋に行ってお茶の用意をする。
紅茶と緑茶の茶葉に湯のみにティーポットの追加。
それと増えていたじゃがいもでポテトチップスを作り持って行く。
オリーブオイルなどの油も作れたので、簡単に大量生産出来る様になった。
助かるったらないね、本当。
ちなみに焼き芋もあるので、こっちが良い人もいるだろう。
適当に出すかな。
<解放調整室>に戻った俺は、早速湯飲みを大量に出して紅茶を入れていく。
今回は大きなティーポットに入れたので、結構な人数が飲めるだろう。
俺は熱々の緑茶を飲むので、今回も紅茶は飲まない。
適当に出したポテトチップスと焼き芋に怪訝な顔をされたが、俺は一切気にする事もなく進めていく。
お茶が全員に行き渡ったら、後は話し合いの開始だ。
「食べる食べない、飲む飲まないは好きにしてくれて構わない。あと、トイレは向こうな? で、ここからは話し合いだ。まず第一に何故こちらを襲ってきた? そもそも無視すれば良かっただろう」
「ふん! そちらを海賊だと思っただけだ。そうしたところ、おかしな連中に負けたがな」
「ヌンさん、どんな感じ?」
「どうやらソブトル家の島である、ソノトン島の様子見をする為に向かっていたようですね。実際には占領する前の下見です」
「なっ!?」
「成る程なぁ……。ああ、この場ではヌンさんに記憶とか含めて全て覗き見られるからな。嘘を吐いたところで何の意味も無いぞ。さて、話し合いを続けようか」
「ふざけるな! こんなものは話し合いではない!!」
「俺達にとっては話し合いだ。それに、ここから出るには俺の許可が要るんだよ。その許可が無い限り、ここからは永遠に出られない。だからこそ、お前の縄を解いたんだ。出られないなら縄で縛る必要も無いからな」
「何を訳の分からん事を……!! 貴様の下らん嘘など聞く訳がなかろうが!!!」
「なら自由に動き回っていいぞ。半日も動き回れば気付くだろ、どうにもならないという事実がな。それまでゆっくりしているか、阿呆が諦めるまで待てばいい」
「面倒ですが、仕方ありませんわね。先ほどからラディが「パリパリ」させているのが気になっていましたし、そちらを頂こうかしら」
「姉上、これ美味しいですよ。何かは分かりませんけど」
「それはポテトチップスだ。簡単に言うと、じゃがいもを薄く切って、油で揚げただけだな。最後に塩を振ってはいるが」
「ふむ、パリパリしますがそれだけですわね」
「メチャクチャ美味しいものじゃないが、気付いたら沢山食べているという物だ。ま、好きに食べるといいさ。あの阿呆が疲れて諦めるまでは暇だしな」
「早く諦めてほしいけど、そう簡単には諦めないだろうね」
俺もそう思うが、納得できないんだろうなと思う。
とはいえ、俺達がそれを斟酌してやる理由はないが。




