0262・切り込み その3
Side:イシス
<時空の狭間>に戻って<物品作製装置>の箱に手に入れた銃を入れておき、後は<解放調整室>で休憩する。
そこまで回復にも時間は掛からなかったので戻り、そこからは一気に海を駆ける。
大型船から銃は撃たれるものの、タワーシールドを抜く事は出来ず、大砲なぞ当たる筈が無い。
そもそも人間みたいな小さなサイズを狙うような武器じゃないしな。
さっさと近付いた俺達は、<時空の狭間>で話し合った通り、バラバラの位置から敵の大型船に乗り込む。
俺は舳先から、ヌンは前の方。
バステトは後ろの方から乗り込み、そしてハトホルは船尾へと着地。
それぞれが大型船へと乗り込んだら、後はひたすらに敵の船員を海へと放り投げていく。
既にタワーシールドは【ストレージ】に回収した。
「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
ドボーン! ドボドボドボーン!!
一旦投げ落とされると分かったら、敵も及び腰になるのが当たり前だ。
しかしながら内部に逃げ込みでもしない限りは海に落とされる。
とはいえ内部に逃げ込んだところで引きずり出して落とすんだけどね。
俺達は次々に投げ落としつつ、俺は面白そうな銃を探していた。
しかし、あのキャラベル船の船乗りだけが特殊だったのか、他に面白い銃を持っている者達は居ない。
残念な事だ。
甲板にいた船乗りは全員叩き落したが、未だ船内に居るのは魔力反応で分かっている。
中型船の連中は外に出て戦ったっていうのに、この船の連中は内部に篭もって震えているらしい。
そんな根性無しは落とすに限る。
「さて、甲板は制圧したし、次は内部の敵の掃討だ。バステトみたいに喉を突き殺してもいいが、どうする? それとも殴りつけて引きずり出すか?」
『どちらでもいいのでは? 引き摺り出すのが手間なら、殺して【ストレージ】に収納すれば簡単に出せますよ。その際は喉を穿って窒息死させるのが、一番汚れないでしょうね』
「それか首を圧し折るかだな。どっちにしたところで、そこまで手間でもない。俺達が【身体強化】すれば容易く出来る。さて、それじゃ突入だ」
俺達は船尾にあるドアから内部に侵入し、それぞれの部屋を開けて中に居る者達を殺していく。
タワーシールドを構えて突入しているので、いきなり撃たれたところで何の問題も無い。
敵にコレを抜く武器が無いので安心して突入できる。
ガチャッ! ……バン! キィン!
「くそっ! なんだそのデケェ盾は!? 卑怯じゃねえか!!」
「こんな部屋に引き篭もって逃げてる奴に言われたくないもんだ。甲板で戦うなら、まだ命があったんだがなー。お前はここで死ね」
俺は空いている右手でナイフを投げると、それは相手の喉に直撃。
敵は倒れた後、息が出来ない事にもがき苦しむ。
こちらに銃を撃ってきた段階で殺しあいは確定なんだから、敵に容赦をする必要は無い。
俺とヌン、バステトとハトホルに分かれて殺しているが、俺は未だ死んでいない船乗りを通路まで引き摺り出して放置。
後で死体を回収するにしても面倒なので、目立つ分かりやすい所に置いておく事にした。
向こうはハトホルが盾を構えて突入し、バステトが喉を穿って殺害する形だ。
俺の方は一人で済むが、ヌンさんに一応の警戒を頼んでいる。
一人より二人の方が安全だからな。
そのまま少ない船員を的確に殺して回り、遂に船底と大きな一室を残すのみとなった。
バステトとハトホルには船底に行ってもらい、俺達は一番大きな部屋へと入る。
ドアを開けて盾を構えながら突入するも、いきなり衝撃を受けてビックリした。
ギィィン!!
「ぬっ? まさかこれほど大きな盾を構えて突入してくるとは……誤算であった」
「女? しかも見た目は……虎? いや、獅子か? 珍しいな、獅子族なんて初めて見たぞ。いや獅子人族と言うべきか」
「私を目の前にして随分と余裕だな!! 他の者は負けたかもしれぬが、私が負けた訳ではない!!」
ギィン!!
「負けた訳では無い! とか言われてもなぁ……。既に船乗り達は死亡、もしくは海に転落。そして残っているのはお前さんと船底に居るヤツだけだ。俺達は魔力反応で位置を確認しているんでな、隠れる事は出来んぞ」
「ちぃ! ならば貴様らを殺して押し通るのみよ!!」
キン! ガキッ! ギィン!
「残念。お前さんの持っているそれじゃ、俺の盾を抜く事は不可能だ。材質が違いすぎる。それに片手剣でどうにかなると本気で思っているのか? 随分と近接戦闘を軽視しているな?」
「銃を扱うだけで戦いを忘れた、貴様らガルディアンに言われたくないわ!!!」
ギィン! キン! ビキィ!! ……ドス!
「あーあー、部屋の壁に刺さったがどうする? その折れた剣でまだ戦うのか?」
「ふん! 剣が折れた程度で、私の心が折れるような事など無い!!」
ドゴッ! ……ドガッ!!
「あっそ。つまらんから、さっさと沈め」
俺はシールドバッシュを叩きこみ、尻餅を突いた相手の顎を蹴り飛ばした。
獅子人族としてどうなのかは知らないが、それなりに近接戦闘は出来たと思う。
とはいえ絶望的に相性が悪かった。
あんな軽い片手剣じゃ、タワーシールドを抜くのは無理だ。
そのうえ場所は部屋の中という狭い場所。
しかも船の中なので揺れていて踏ん張りが利きにくい。
どう考えても防御側が有利な条件が揃い過ぎている。
挙句の果てには、防御側である俺は【身体強化】を使うんだ。
どうにもならない。
俺達は責任者というか、偉い地位にある者だと思う女をロープで縛りつけた。
後は船底に隠れている者だが……。
特に争う音とかは聞こえないんだよな?
何かあったのか?
俺は気絶している女を担ぎ上げると、一応船底へと下りてみる事にした。
すると……
「あのね、死んだって良い事なんて無いんだし、ここは生き残る方がいいと思うわよ?」
「そうです。そもそも貴女がここで自殺したところで、意味などありません。ですから、そのナイフをとりあえず置きましょう」
「こちらに来ないで下さい。私は……?」
「二人とも何をしてるんだ? こっちは終わったぞ。それなりに強い獅子人族だったが、残念ながら俺の方が圧倒的に有利だったな」
「シロコ! 貴女までもが殺されてしまいましたか……私も「生きてるぞ?」これで?」
「別にこの女は殺していない。責任者みたいだったからな、生きて捕縛して連れ帰る。聞かなきゃいけない事もあるし、そもそも襲ってきたのはお前達からだろうが。何でお前達が被害者みたいな顔をしてるんだ?」
「それは……」
「まだ子供だろうし、グィズマ王国ってのはどうなってんだ? 子供に責任押し付けて好き勝手やってんのかよ」
「………」
「ま、とりあえず黙ってないで、行くぞ。別に殺しはせんが、敗者が勝者に従うのは世の常だ。お前さん達の国だって、勝者になったから出来たんだ。国が出来るまでに敗者は沢山いる。今まで踏み躙ってきた側だったが、負ければ踏み躙られる。甘んじて受け入れろ。自分達にだけ都合の良い事など無い」
「………分かりました」
その後、素早くバステトがナイフを奪い取り、そこでようやく一安心したように安堵の息を吐く二人。
流石に目の前で子供が自害とか、見たくないわな。
とはいえ俺の言っている事が理解できるくらいには聡明なんだよなー……。
もしかしなくても貴族の子、もしくは王族か?
何だか嫌な予感がしなくもないぞ?
しかし王族だとしたら何故こんな所に居たのか、どうして俺達を襲ってきたのか。
この辺りが判明しないと想像もつかないな。
いずれ分かるとは思うが、尋問という意味でも<時空の狭間>を頼ってきそうだな、あいつら。
本体ヌンさんの前では嘘が吐けないって知ってるし、それの利用ぐらいは考えるだろう。
でもなー、俺も真相を知りたいという思いもあるし、難しいところか。
本体ヌンさん次第だが、協力は吝かじゃない。




