0261・切り込み その2
Side:イシス
俺は左奥のキャラベル船に乗り込み戦闘を開始する。
ヌンさんだけはタワーシールドも無しに突っ込んだが、俺達は無いと危ない。
しかし乗り込めばこっちのもの、後はどうとでも出来る。
そして俺は今、武器も抜かずに戦闘中だ。
【身体強化】をすれば、男達を片手で放り投げるなんて容易いんだよ。
船を汚さずに済む一番の方法はコレだ!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドボーーン!!
「ちくしょう! こいつオレ達を海に落とそうとしてやがる! 近付くな! ちかづあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ドボーーン!!
バカなのかね?
離れたところで、近付いて放り投げるっての。
そして近付いて短剣を突き出したところで、この綿甲を貫けないから意味は無い。
それにそもそも、そんなのには当たらないしな。
俺は突き出された短剣を持つ手を左手で内側に弾きつつ、右手で敵の正面から服の襟を掴んで放り投げる。
【身体強化】を使うと良く飛ぶなぁ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドボーン!!!
「もらったぁ!!」
キィン!
後ろから短剣で襲ってきた男に対し、綿甲に魔力を流して防御を上げる。
すると当たり前のように弾き、敵の攻撃は意味を為さない。
そして……
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!!」
ドボーーン!!
「このクソやろうが!! 死にやがれ!!」
バンバババババン!!! ……キンキキキキキン!
おいおい!
アレはヌンさんが言っていたペッパーボックスピストルじゃないか!?
しかも当時も頻発したという暴発、<チェーンファイア>まで起こすとはな!
ちょっとそれ寄越せ!!
「ガッ! こいうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ドボーン!!
俺はペッパーボックスピストルを持つ奴の手を蹴り、銃を弾き飛ばしたらすぐに放り投げた。
これでペッパーボックスピストルをゲットだ! 今の内に【スロー】の応用で近くに移動させて、と。
よし! 【ストレージ】に回収した。
他にも面白ヘンテコ銃を持っているヤツが居るかもしれない。
ここは慎重に敵を見極めないといけないぞ?
「こいつ、なんだ? 急に睨んできやがって……。もしかして体力切れか? ヤロウども! 今の内にこ、ちがうのかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ドボーン!!
おもしろ銃を持っていないヤツはどうでもいい!
何か面白そうな物を持っているヤツは居ないのか!?
「クソやろうが! 隠し持ってたコイツでブッ殺してやる!!」
パパン! ……キキン!
おい、冗談だろ!
アレはデリンジャー!!
しかも上下二連のデリンジャーじゃないか!
なんて素晴らしい骨董品を持ってるんだ!
でかした!!!
「なんだ、コイ、ゴブェッ!?! ガハッ! うぉぇぁぁぁぁっ!!!!」
ドボーン!!
マジか!?
グィズマ王国ってのはマニアックな銃の見本市みたいな国なのかよ!
この銃、完全にレミン○ン社のアレにそっくりじゃないか!
凄いぞ、グィズマ王国。
俺にもっと寄越せ!!
「クソッ! 後はオレ様だけだが、貴様だけは絶対にブッ殺してやるぞ! コイツでな!!」
ガシャ、ガシャ、ガシャ!
「おま! そいつはオルガン砲じゃないか!? お前らどんだけ骨董兵器を持ってるんだ! おもしろ過ぎるだろ!!」
「骨董だと!? はははははは! コイツの恐ろしさを知らねえようだな! コイツは今すぐテメェをブチ殺す事すら出来るんだぜ!!」
「一斉に発射するも一発ずつ発射するも出来るが、撃ち尽くしたら最後、チマチマ一門ずつ装填しなきゃならない悲しい武器な。パイプオルガンのパイプを束ねた見た目だから、オルガン砲と呼ばれたが、弾幕張れない所為で廃れた骨董品だろうに」
「ふざけんじゃねえ!! コイツの恐ろしさを見せてやる!!」
ドドドドドドドドドォン!! ……キキキキキキキキキキィン!
俺は敵が撃ってくると分かったので、すぐに顔の前を両手で覆い、綿甲に魔力を流して防ぐ。
砲の口径が銃より大きいとはいえ、あの巨大蠍の甲殻を抜けるほどじゃない。
あいつには【身体強化】をして魔力を武器に流しても苦労させられたんだ。
たかがオルガン砲ごときでやられるかよ!!
そらぁ!!
「グガァッ!! ガ、グ……くそ、おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ドボーン!!
よっしゃ! これで制圧完了だ!!
あいつらじゃこの船には上がれないし、これで完全制圧が出来たな。
ヌンさんを始め、バステトとハトホルも制圧と掃除を完了させたようだ。
こっちに向かってきている。
とりあえず、俺はオルガン砲をアイテムバッグに仕舞っておこう。
その後は大型船をどうするかの作戦会議と魔力の回復だな。
それと………あの三隻にも面白い銃とかあっただろうか?
それを確認しておかないと。
黎明期の面白い武器って、見てて楽しいよな。
有名どころだと<パンジャンドラム>とか。
絶対に使いたくないけど、見て使うところを想像するのは楽しいんだよ。
あんなバカ兵器、絶対に紅茶の国じゃないと作れない。
だってあの国、たまに物凄くトンチキな事をやらかすんだよ。
これだから紅茶狂いは……って、言われるのも納得なぐらいだし。
…
……
………
「皆、お疲れ様。ちょっと聞きたいんだが、変な形の銃とか、面白そうな銃とか持ってるヤツ居なかったか? こっちはペッパーボックスピストルと上下二連のデリンジャー、それとオルガン砲があったぞ」
「私の方は見なかった……と思う。ごめん、ちょっと分からない」
「私の乗り込んだ船も、おかしな銃は無かったと思います」
『私の方にはありましたよ。ほら、コレです』
「なんだ、そのおかしな銃? シリンダーの所に横に長い箱が付いてるのか? なんのために?」
『イシスも知りませんか。コレはハーモニカガンと呼ばれる物です。この横に長い箱がハーモニカという楽器に見えるでしょう?』
「確かに見えるけど……って、ああ! 成る程! これ横に長い箱に弾が入る薬室が付いてるのか。それでズラしながら弾を撃つ、と。……バカじゃね? もちろん良い意味でバカなんだけどさ」
『仮にコレを思いついても、実際に作って売り出そうとは思わないでしょう。それをやるんですから、人間って凄いですよね。これなら小銃の方が良いでしょうに』
「本当だな。黎明期ってこういうのが当たり前なんだけど、色々な意味でトンチキだよなぁ。見てる分には、それが面白いんだけどさ」
『それよりもイシス。私はスピードローダーとマグナム弾が使用できるリボルバー、もしくは自動拳銃を要望します。どちらかを【ストレージ】に入れておきたいので作って下さい』
「自動拳銃は駄目だ。見た目で違う銃だとバレるし、技術を寄越せと言いだす阿呆が必ず出る。ヌンさんが前に言っていた、コ○ト・アナコンダに似た銃なら許可する。44マグナムのアレだ」
『良いでしょう。今はマグナム弾を作れないので仕方ないですが、それは切り札というか見られない状況で使います。流石に威力が違いすぎますのでね。私も余計な揉め事に巻き込まれたい訳ではありませんし』
「そうしてくれると助かるし、リボルバーですら最新である可能性が高いからな。こっちとしてはそれ以上を出すのは難しい。最悪はヌンさんもコンバットナイフで戦うしかないんじゃないか?」
『あまり近接武器で戦いたくないのですよね。ボディが汚れるので』
「それより二人とも、大型船をどうにかする方が先では?」
「アレに関しては全員で突っ込んで制圧した方が手っ取り早いと思ってな。どうせ、それで終わるだろ?」
『ですね。大型船とはいえ、乗り込んで制圧してしまえば終わります。向こうの船長か偉そうな者が乗っていたら、その者は生かして拷問ですね』
「まあ、それぐらいしか無いわよね。あと、イシスみたいに敵を放り投げるのが一番早いかしら。それぐらい?」
「そう……ですね。それが一番早そうです」
「なら<時空の狭間>で魔力を回復したら、一気に突っ込んで終わらせる」
それでこの海戦も終了だな。
俺達にとっては特に難しい事じゃない。




