0260・切り込み
Side:ハトホル
イシスが何を言い出すかと思えば、どうやら私達が接近して蹂躙してくればいいようです。
その為にタワーシールドまで作製しているとは……。
後は綿甲を着けて突進ですが、【身体強化】を使ってジャンプすれば船に届くそうです。
それはヌンが言ってくれました。
『水の上を走る際には、自分の足下を硬くするんです。ただしカチカチに硬くする必要はありません、そんな事をすれば無駄に魔力を消費するだけです。足が簡単には沈まない緩さで構いません。すぐに次の一歩を出せば済みますので』
「そうやって次の一歩、次の一歩と出し続けて行くと走れる訳だな。ただ、届かないほど甲板が高い場合はどうする?」
『その場合は水を上に持ち上げればいいのです。高い所からジャンプすれば届くでしょう? 簡単な事ですよ。水なんですから上手く使えばいいだけです』
「成る程な。とりあえずは分かった。このまま撃沈される恐れがあるのなら、俺達が海を走って切り込んだ方が早い。皆、敵は皆殺しだ。一人足りとも逃がすな。それと、なるべく船を汚さないようにな。牽引すれば持って帰れるだろ?」
「どうなんですの、船長?」
「まあ、船一つにつき一隻を曳航すれば何とか……。ですが、問題はあの大型船でして。あれも持って帰る事になるのなら、船員を減らしてアレに乗せるしかありませんぜ」
「それでも中型船が四隻に大型船が一隻増えるなら、やり甲斐はあるのではなくて?」
「……仕方ありませんなぁ。そこまで言われちゃ、海の男は応えざるを得ませんぜ。上手く手に入れられたら、全て持って帰りましょうや」
「良かった、お願いね。幾つかは維持費もあってバラす事になるでしょうけど、上手く補修材に使えるように残しておかないとね。それに相手の持つ砲も気になるし」
「完全に細長い長射程タイプの砲だな。口径は小さいから、威力よりも射程を重視したヤツか。敵の方が射程が長いっていうのは厄介だぞ。出来るだけ離れて距離をとるといい。それじゃ、準備開始だ」
私達は綿甲を着てフードを被り、そしてタワーシールドを持ったら準備は完了。
イシスがリリエに逃げ回るように指示を出し、そして最初にヌンが飛び降りました。
ヌンは水面で着地した後、すぐに前に走り出します。
足の下にしか魔力を使っていない事が分かりますね。
おっと、イシスも降りましたしバステトも降りました、最後は私です。
私も着地した場所は硬くし、その後はなるべく足が着く場所だけを硬くします。
それでも範囲が広いのは恐いからですが、これは仕方ありません。
それにしても水面を走るって、ちょっと面白いですね。
前に二隻が並んでおり、後ろの左右に二隻という形だったのですが、既に前の左に居る船以外は皆が乗り込みました。
なので私も前の左の船に乗り込みます。
派手に【身体強化】でジャンプをすると、あっさりと船に乗り込む事に成功。
ここからは近接戦闘ですが、私の相手になる者など居ないでしょう。
早速とばかりに襲ってきた者が居ますが、私はそれより早く頭をカチ割ります。
ゴシャッ!!
「うわぁ!! な、なんてことしやがる!!」
私は余計な口を開く事なく次の敵の頭を潰し、左から来た者は盾で殴りつけます。
途中で銃を撃たれましたが、私ではなく前に居る敵の背中に命中したようですね。
同士討ちを始めましたか、ならこのまま利用しましょう。
「くそがっ! ふざけんじゃねえぞ!!」
「てめぇが邪魔なんだよ! オレの前から消えろや!!」
ズダァン!
「てめぇ! 味方を撃ち殺すとはどいう了見だ!」
「うるせえ!! てめぇも気に入らなかったんだ! ここで死ねや!!」
ズダァン!
あーあー、敵を前にして内輪揉め。
何をやっているのですかね? この者達は。
まあ、私はそんな事も気にせず、次々と殺戮をしていきます。
元々こいつらを全滅させるのが私のやるべき事なのですから、当たり前の事ですけどね。
頭を潰して盾で殴りつけていると、あっと言う間に敵が殆ど死んでいました。
残っているのは同士討ちの生き残りくらいです。
「ふぅっ、ふぅっ! ……まったく、ふざけやがって! 目の前に敵がいるってのに、いったい何をやってやがるんだ!!」
「本当にそうですよねえ。御労様でした」
「えっ? おん」
ドゴンッ!!
さて、これで終わりましたから、後は死体を捨てて綺麗にするだけですね。
とにかく【身体強化】を使って、さっさと死体を海に捨ててしまいましょう。
せっかくですから良さ気な物があれば頂いていきましょうか。
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Side:バステト
ジャンプして船に乗り込んだ私は、早速重いタワーシールドを足下に捨てて短剣を両手に握る。
敵は連射できない銃しか持っていないから、接近したらこっちのものなのよね。
「て、てきしゅぐぶぇ!!?」
いちいち叫ぶなんていう無駄な事をしている場合じゃないでしょうに。
前にいる敵と戦わないと死ぬわよ? ほらほら。
「ガブッ!?」
「ゲヒュ?!」
「くそおまぶぇ?!」
「いったんはなれどぉ!?」
「近付くな、離れて銃を撃て!!」
チッ! 流石にこのまま殺らせてはくれないか。
とはいえこの綿甲を貫くのは簡単じゃないわよ?
ズダァン! ……キィン!
「なに!? まさぐぁっ!?」
「じゅぶぇっ!?」
「くそ! 撃て撃て撃て撃て撃てーーーー!!!」
バンバンバンバンバン!! ……キンキンキンキンキン!
一斉に撃ってくるけども、その弾が私を傷付ける事は無い。
なので私は気にせず前に突っ込み、どんどんと喉を突き刺して殺害していく。
これが一番船を汚さない殺し方なのよ。
派手に血を流させると汚れちゃうからね。
そうやって殺し続けると、すぐに全滅。
中型船だからそこまで人員も居なかったみたい。
とりあえずさっさと死体を海に捨てましょうか。
残していても良い事なんて無いし。
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Side:ヌン
私は右後方にある船へと乗り込むと、即座にリボルバーを発砲。頭を撃ち抜きます。
これで一人。
「くそ! 何か変なのが乗り込んで来やがった! さっさと「ドン!」」
「殺られた! 相手は拳銃を持ってやがる! それも恐らくはガルディアンのかいて「ドン!」」
「なか「ドン!」」
「くそった「ドン!」」
「はやくあ「ドン!」」
「ヤツをたお「ドン!」」
おっと弾を入れ替えないといけませんね。
その間は船の上をウロウロしていてもいいですし、海の上に一旦逃げても構いません。
私の好きに戦えますし、私の選択肢を奪える程この者達は強くありませんからね。
楽なものです。
私はリボルバーへの弾込めが終わったので、また敵の頭を狙って撃ちます。
この至近距離で外すほど私は愚かではありませんのでね、敵も銃を撃ってきましたが意味がありません。
幾ら木の上から金属を被覆しただけのボディとはいえ、その金属は練魔鋼なのです。
貫ける訳がないでしょう。
キンキンキンキンキン!
「くそっ! なんだありゃ!? きいて「ドン!」」
「弾をもう込め「ドン!」」
「このままじゃ殺さ「ドン!」」
このままでなくとも、貴方がたは殺されるしかないんですけどね?
どうやらまだ自分達が生きられると思っているようです。
しかしアレですね。
見られない、もしくは全滅させるのであれば自動拳銃が欲しいところです。
リボルバーではどうしても込められる弾数が少ないですし、私なら総練魔鋼の拳銃でも問題ありません。
弾丸は例の9ミリでいいでしょう。
普段は【ストレージ】に入れていれば済むんですし、スピードローダーと共にイシスに頼んでおきますかね。
っと、気付いた時には全滅していましたか。
まあ、この程度だからこそ、適当な思考をしながら戦闘をしたのですけど。




