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0259・港町モンモに向けて出発




 Side:イシス



 『【星魔術】とは惑星規模の【魔術】であり、つまり私が使っているように大気中の魔力ですら使用する【魔術】の事です。そして【神術】とはそのまま、神の扱う術の事ですね。これは神力を使うので、根本的に別のものとなります』


 『それは俺達が使えるようになるものか? 【神術】の方は無理と分かるが、【星魔術】の方も無理だろ』


 『いえ、可能ですよ。【星魔術】を扱うには、今の魔力回路では弱いのです。新たに【星魔術】用の魔力回路を構築しなければいけませんが、それをするには肉体改造を施す必要がありますから、今すぐは無理ですね』


 『別に今すぐしたいとは思わないが、肉体改造かぁ……。何か人間を離れそうでイヤだな。それでもしなければいけないならするが、おかしな生命体になるんじゃないかっていう不安が拭えない』


 『そんな事はありませんけどね? そもそも肉体を持っている時点で、どうなろうと変わりませんよ。アンデッドだって広義の意味では肉体を持つ生命体です。生命活動をしていないとは言えませんし』


 『いや、死んでるんだから生命活動はしてないだろ』


 『他者を喰らって命を取り込むという生命活動、つまり食事をしています。それしかしないとも言えますが、食べるという事に関しては人間となんら変わりません。そういう意味では生きているのですよ』


 『そう……なのか?』


 『とにかく、肉体を改造したところで大した変化などありませんよ。今までの歴代の<時空の旅人>だって行った者は居るんですし』


 『全員じゃないのか?』


 『行かされる星によっては、そもそも素材が手に入らない場合があるので、全員は無理ですよ。それと【星魔術】用の魔術回路は簡単な物ではありませんからね、肉体改造も一度では済みません』


 『つまり改造の回数が足りなかった人達も居た訳か。確かにそうなると全員が手に入れられた訳じゃないな。俺もそこまで届かない可能性があるし、それにこんな星じゃ手に入らないだろう』


 『既に改造用の幾つかは手に入っていると思いますよ。毒とか心臓とか、そういった素材が多いですからね。ダンジョンなんて一番手に入る場所でしょう』


 『ああ……そういう素材なのか。分からなくはないが、仕方ないんだろうなぁ』


 『仕方ないというより、強力な肉体にする為に必要な素材というのは、そういった物が多いだけですね。そもそも必要なのは特殊な薬品類ですが、それを作る為に素材が必要なので』


 『薬と考えたら、確かに毒とか心臓が要るのは仕方ないのかね? 毒はまあ、薬の元っていうイメージが無い訳じゃないし、納得は出来なくもない』



 そんな事を話していると、何とか港町に着く事が出来た。

 俺たちはすぐ係留してある船に乗り込んでいく。

 既に夕日が出てきているが、今日は船で泊まる事になるだろう。


 乗り込んだ船に残っていた船長に話しかけるリリエ。

 説明だけはしっかりしておかないと、理解されない可能性があるからな。



 「船長、明日船を出して帰る事は可能ですか? もし無理ならすぐに準備を」


 「そりゃまあ、帰るのに一日で済むんで、特に準備も何も必要はありませんが……。どうされたんで?」


 「南のグィズマ王国の者がここに潜入していました。そしてその所為でソブトル家は滅ぼされたのです。血族が居らず、ソブトル家の血筋は途絶えたと言っていいでしょう。分家はあるようですが、分家は分家でしかありません」


 「グィズマがですかい!? そりゃまたなんで?」



 その後は船に乗りながら話したが、それで事の深刻さが分かったのか、船長はすぐに出港の準備に取り掛かった。

 しかし船を出すのではなく停泊したままだが、今日はいつでも出られるようにしたまま休む事になる。


 この島にはグィズマ王国の間者が居る可能性があるし、そちらが家令を奪還、もしくは殺害を企てる可能性がある。

 ちなみに洗脳した二人は船に乗ってから出している。

 現在は俺達の方の大型船に乗せている訳だ。


 そして家令は巡視官の方の船に乗せているので、こちらが狙われても家令は無事という形にした。

 分けておくのは当然だし、銃だと遠くから狙撃される可能性もある。

 俺達なら復活するが、他はちょっとマズい。


 ヘッドショットされて蘇らせる事が出来るかは不明なんで、いちいち調べたくもないのが正直なところだ。

 それよりも今日は船で休むしかない為、俺達は甲板かんぱんの一角に固まる。


 船乗り達は船内に寝床があるが俺達には無いし、ここの方が何かあった時に対処がしやすい。

 雨が降って濡れたら濡れた時だ。

 それに雨音に混じって攻めて来る可能性もある。

 俺達が甲板かんぱんに居る意味は大きい。


 とりあえず船乗り達も警戒しながら休んでいるが、俺達はヌンさんに任せて寝る。

 二人は酒を飲みつつゆっくりしているが、ベンヌは<時空の狭間>で乳を飲んでいるのでとっくに就寝中だ。


 船が揺れているから心地良かったのか、二人ともいつもより少ない量で撃沈したらしい。

 俺はコップなどを片付け、その後もチビチビと飲んでいたが、限界になったので寝転んだ。

 ベンヌはヌンに預けたし、それじゃ、おやすみ。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日。

 まだ朝焼けの中で出港した船は、みるみる陸地から離れて進んで行く。

 結局のところ昨夜は襲撃なども無く、今日の朝には出発する事ができた。

 何もなくて良かったが、警戒は怠れない。

 何があるかは分からないし。


 どんどんと西へと進んで行き、ある程度の距離を進んだ時、前方から中型船の船団がそのまま進んできた。

 いったいどういう事だろうかと訝しんでいると、突然相手の船が舳先にある大砲を撃ってくる。


 ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!


 四隻の船から放たれた砲弾は遠い事もあり当たらなかったが、問答無用で撃ってくるとはどういう事なのか。

 しかも相手の船は旗を掲げていない?



 「敵船、旗がありません! 海賊の船です!! 旗がありません! 海賊の船です!!」


 「船長、戦闘を開始します! 巡視官の乗る船を危険に晒す訳には参りません! こちらが前に出て囮の役目を!」


 「アイサー! お前達、海賊如きに負けるんじゃねえぞ!!」


 「「「「「おうっ!!」」」」」



 ……ん?

 中型船は四隻あるんだが、その向こうに大型船が居るな?

 あれも敵船なんじゃないのか?

 距離を保っている気がするんだが……。



 「あの向こうの大型船も海賊の船なんじゃないのか? 近付きもせずに向こうに居るぞ?」


 「………確かにありゃ海賊船の可能性が高そうだ。しかし大型船を持つ海賊なんて多くはないぞ、それに中型船を四隻も持ってるなんて絶対におかしい。海賊にそんな金がある訳ねえし、船を維持するのだって結構な金が掛かる」


 「このタイミングでコレって事は、もしかしなくてもグィズマ王国か? そこが海賊のフリして襲ってきてる可能性は?」


 「十分にあり得ますわね。イシスの言う通り、このタイミングはあまりにも出来すぎています。予想以上に我が国に食い込んでいた? もしくは金に任せて好き放題をしていた可能性が高いでしょう。そしてそれになびいた現地の者も」


 「まあ、金さえ貰えば商売をするのは当たり前だろうさ。それがどれだけ怪しくとも、金を稼がなきゃ生きていけない以上はな。それよりも、あいつらをどうやって倒すかの方が重要だぞ」


 「そう、ですわね……」



 リリエがチラリと俺の方を見てくるし、船長も俺達の方を見てくる。

 こいつらは揃いも揃って……!



 「言っておくが、前の海戦で物資はかなり消費している。その所為で銃弾も含めて碌に残っていない。まずそれが前提だ」



 そう言うと、あからさまに渋い顔をした二人。

 当たり前だが、物資が無けりゃ戦えないに決まってるだろ。

 しかしそれは話が半分でしかない。

 俺はまだ全てを言ってないしな。



 「だからいつもと違う方法を使わなきゃいけないわけだ。少なくとも全くやってない訳じゃないが、ぶっつけ本番でやるしかない。少なくとも【ウォーターコントロール】が使えた以上は何とかなるだろう」



 銃弾は補給できてないが、魔力は全快なんでな。

 やりようはある。


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