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0257・証拠の調査とお茶




 Side:イシス



 俺は拷問が終わったので、木製ヌンさんにラディを連れて来てもらった。

 ここからは取ってきた物の調査と選別だ。

 結構な量があるので皆でやる事にし、俺達も頑張って中身を調査していく。

 もちろん洗脳した二人にも手伝わせる。


 リリエを始め、全員が唖然としていたが、そんな暇は無いので無理矢理に始めさせた。

 食べる物や飲み物は持って来てやり、魔法陣部屋で必死になって資料一つ一つを調べる。



 「ここだと向こうの時間は過ぎないからな。それに危険な事をし出すやからも居ないし。なので資料を整理するにはここが一番いい」


 「この飲み物美味しいですね? いったい何かは知りませんが……」


 「それは水飴を水で溶かしただけだ。そこに生姜を入れれば<冷やし飴>になるが、今のところは生姜が無いんで無理だな。ハチミツでもいいけど……茶葉はまだだよな?」


 「いえ、何度か収穫していますよ。イシスが飲みたそうにしていたのと、アレは交易品になる可能性が高ったですしね。茶葉の段階で<物品作製装置>の箱に入れていますから、煎茶でも烏龍茶でも紅茶でも作れますよ」


 「「「紅茶!!!」」」


 「な、なんですか、急に!? 姉上を始め、いったいどうなさったんです?」


 「ラディ、貴方は知らないでしょうけど、西のカーウェント王国から僅かに輸入している飲み物よ。<赤い宝石>とまで呼ばれる物で、メチャクチャ高価な物なのよ」


 「<赤い宝石>………キラキラしている物なのですか?」


 「いえ、違うけれど……私も一度だけしか飲んだ事が無いし、どんな物かは詳しく知らないのよ」


 「へー……、もしかしてカーウェント王国は、その<赤い宝石>と言われる紅茶を作っている国なのですか?」


 「いや、紅茶は浮遊大陸から手に入れている貴重品だと聞く。カーウェント王国は浮遊大陸と交易が出来る国だからな。自国の土地の上を頻繁に通るからこそだが……」


 「ははぁ……つまり浮遊大陸の連中はチャノキを独占しているのか。それで買うしかないんだな。かつての大陸国とやってる事は一緒かよ」


 「チャノキ? それが必要な物なのか?」


 「ああ。高さは7メートルから10メートルにもなる木だよ。ただし栽培するチャノキは低く抑える事が多い。その葉っぱを収穫して、炒ったり、蒸したり、発酵させたりする事で、それぞれの茶葉に変わる訳だ」


 「その一つが紅茶なんですか?」


 「そうだ。簡単に言うと発酵させていない物を緑茶、半発酵させた物を烏竜茶、完全発酵させた物を紅茶と言う。ここで言う発酵は酸化の事で、厳密には発酵じゃない。浮遊島が紅茶を売っているという事は、発酵させた茶葉を売っているんだろうな。もしかしたら送っている際に発酵しているだけかもしれないが」



 元いた星でも、大陸が西の方の国々に売っていた際に、船の長旅で発酵していただけだと聞いた事がある。

 本当かどうかは知らないが、そもそも大陸で一番飲まれているのは緑茶なんだよな。

 それも釜炒りしたヤツ。


 祖国の緑茶は蒸したタイプだから、基本的に大陸のお茶と同じではないんだろう。

 蒸した茶葉を手揉みするのも動画とか映像で見た記憶がある。

 ただし自分の目で見たかどうかは分からない。

 俺のプライベートな記憶は全て消されてるからな。



 「そうなんだ、お茶っていうのも色々あるんだね」


 「ヌンさんが茶葉を摘んでいてくれたみたいだし、それぞれのお茶を取ってきてやろう。ちょっと待っているといい」



 俺はそう言って移動し<物品作製装置>の部屋に行くと、紅茶と煎茶の茶葉と急須を2つ、そして各々の湯のみを用意する。

 そしてたっぷりの水が入った甕と鍋を用意したら、それらを全てアイテムバッグに入れて戻る。


 皆の下に戻った俺は、特に作法など気にする事も無く、急須を【魔術】で温めつつ鍋で水を沸騰させる。

 そして十分に温まったら茶葉を入れ、そこに沸騰したお湯を注ぐ。

 紅茶は熱々の湯で淹れるべき物だ。


 そして30秒ほど待った後、少し急須を回してからそれぞれの湯のみに注ぐ。

 熱いので気を付けるように言ったが、早速のように貴族三人は熱がった。



 「「あちっ!」」 「あちゅ!」


 「ふふふ。姉上にしては可愛い声が、あいたっ!?」


 「五月蝿いですよ。それにしても熱すぎませんか、これは?」


 「紅茶はポットや急須などを温めて、更には熱々のお湯を注がないと旨味が抽出できないんだ。だから淹れたてが熱いのは仕方がない。紅茶とはそういう物だと思えばいい」


 「そうなんだね。ところでそれは?」


 「これは緑茶……というか、その中の一つで煎茶だ」


 「急須っていう物に茶葉を入れるまでは同じだけど、温めないの? それに水をそのまま入れたけど……」


 「これは水出しと呼ばれるものでな、緑茶に多いカテキン類を出さない為の淹れ方となる。カテキンというのは渋さとか苦味の一つだと思えばいい。それを出して飲むお茶も美味しいんだが、慣れてないだろうからな。だから苦くない淹れ方をしている訳だ」


 「へー……そんなのがあるんだね。……まだ?」


 「すまんがお湯で淹れるのと違い、水出しは5分くらいかかる。基本的にお湯で淹れた方が簡単に出来るんだが、水出しには水出しの良さがあるからな。ゆっくり待つといい」


 「ようやく少し飲めるようになってきましたわ。それにしても……かつて飲んだ紅茶はこんな味だったかしら? もっと美味しくなかったような……」


 「ふむ。私も何度か飲んだ事があるが、こんなに美味しかった記憶が無いな。何故あんな物に高い金を出すのだと思っていたが、これならそこまで嫌うものでもない」


 「私は初めてですので、確かに赤い飲み物だなとしか思えません。三男では紅茶があっても回ってきませんので……」


 「あつつ……。こんななの? あんまり美味しくないね」


 「それならちょっと待ってるといい」



 俺は再び<物品作製装置>の部屋に行き、小さな陶器の瓶にハチミツを入れて作製。

 それとスプーンを作って戻る。

 そしてラディの前に置いてやった。



 「そのハチミツを入れて混ぜてみな。その後に飲むと大分マシになるだろう」


 「貴方……紅茶といいハチミツといい、高価な物をそうポンポンとよく出しますわね?」


 「俺達にとってみれば腐るほどある物だし、茶葉に至ってはここで作っているくらいだ。幾らでも、とまでは言わないが、作れば手に入る物を惜しむ必要は無いだろう」


 「「「ここで作ってる!?」」」


 「では、チャノキとやらを貰えば、私達でも茶葉を作れるんですの?」


 「それは知らないが、ヌンさんに聞いてみたらいいんじゃないか? 世話も収穫もヌンさん任せだし」


 「貴方、それは幾らなんでも……」


 「ヌン殿、お聞かせ願いないだろうか?」


 「チャノキは一年を通じて、ある程度は温かい場所。年平均でいうと13度以上であり、雨がそれなりに降る場所でないと育ちません。まあ、とりあえずは育つかどうか試してみては如何いかがでしょう。増やしていますので、売る事は可能ですよ」


 「おお! それはありがたい、助かります!」


 「あの! 我が家もお願いします! 割と一年を通じて雨が降りますので!」


 「とりあえず、今から育てる為の方法も書き記してきましょう。こうやったら絶対に大丈夫というわけではありませんので、あくまでも参考にとどめて下さい。書いてあった方法を行って失敗したと言われても、こちらに責任はありませんので」



 そういう事で、俺が紙と書く物を用意する事になったが仕方ない。

 さっさと取ってきた俺は木製ヌンに渡すと、煎茶を入れて飲みつつ資料の仕分けを行う。

 なかなか終わらないが仕方ない。


 唯一良かった事は、この星では羊皮紙ではなく繊維紙が普通だという事か。

 それなりに薄くても丈夫みたいだし、良い繊維で作られているんだろう。

 でも木材なんて簡単に手に入らないだろうし、ダンジョンか?


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