0256・元凶への拷問
Side:イシス
もう一人の治療と洗脳も終わったので話を聞いたが、やはり同じ結果だった。
命令してきたのは家令であり、自殺するようにも命じられている。
ここまで証言が揃っているならば、あの家令をここに連れて来て全て暴くべきだろう。
俺はこの二人に<解放調整室>で休んでいるように言い、惑星へと一度戻った。
「ヌン、バステト、ハトホル。お疲れ様だ。……で、ソブトル家の家令は何処に行った?」
「家令ですか? ……ああ、成る程。そういう事ですね」
「そういう事みたいね。通りでおかしな事を口走ってると思った。何かされてた訳ね」
『家令ならば、あそこに居ますよ。まだ逃げていないという事は、こちらに見つかったとは思っていないようですね。まあ、隠して連れて行きましたし、あの場所を想像しろと言っても不可能でしょう』
「では連れて行くか。せっかくだから全員で行こう。その方が証明にもなるだろう。複数の者が聞いている方がいい」
『そうですね。両巡視官やファーバク家の者も聞いていたとなれば、信憑性が違います。後での説得力にも関わりますから、聞かせた方がいいでしょう』
ヌンも賛成したので、俺達はサッティア、アックレト、リリエフル、ラディアントを連れて家令の下に行く。
ソブトル家の屋敷が燃えたのだから、俺達が家令に話をするのはおかしな事では無い。
驚いて呆然としているように見えて、目が笑っている家令に対して俺は話しかけた。
「ちょっといいか? 聞きたい事があるんだが……」
「は、はい。皆様がお集まりという事は、お休みになられる場所でございましょうか?」
「いや、そうじゃなくてな」
その瞬間、全員を<時空の狭間>へと連れて来た俺は、即座に家令を引き摺り倒して床に押し付ける。
ズダンッ! ガシッ!!
「ガァ!? グッ! い、いったい何を!?」
「悪いな。お前がグィズマ王国の回し者だという事は既に分かってるんだよ。残念だったな。……チッ! 暴れるな!「ドゴッ!」。ヌン、縛る物をアイテムバッグから出してくれ」
「分かりました」
俺は膝蹴りを喰らわせた後、ヌンと手分けして家令をロープで縛り、自殺も出来ないようにする。
ようやく終わったので立ち上がると、アックレトの顔色が凄まじく悪いのが見えた。
「あっ、こりゃ駄目だな。ここが完全なトラウマになっているみたいじゃないか。仕方ない、お前さんは<生物修復装置>での治療だ。こっちに来い」
「は、はい!!」
あーあー、こりゃ本当にトラウマになってるな。
流石にここに連れてきたらフラッシュバックするか。
仕方ない、こいつもキッチリと治すしかないな。
反省の為にも傷は残したかったんだが、その傷が深すぎたみたいだ。
俺はアックレトを連れて<生物修復装置>に行き、中に入れて寝かせると治療と最適化と調整を行っておく。
これで問題なく心も回復する筈だ。
俺はそのまま放っておき、魔法陣部屋に戻って拷問を始める。
「さて、こいつがグィズマ王国の回し者である事は既に判明している。何故ならリリエを撃ったヤツと、屋敷に火を着けたヤツは確保してあるからだ」
「そんな事は無い!!」
「そりゃ、お前はそう言うだろうな。グィズマ本国から取り寄せた危険な薬を使って暗示を掛けていたし、事を行った後は自殺するように命令していたんだ。だが、残念。世の中にはお前の想像を遥かに超えるものはあるんだよ」
「あー……そういう事なのね。私は撃たれたけれど、イシスが装置とやらで治してくれたわ。それを使ったんでしょう?」
「正解だ。薬を抜いた後で、逆にこっちが洗脳してやった。その御蔭で全てペラペラ喋ってくれたよ。お前がグィズマの商人を呼んでいた事も、イゴーも暗示に掛けられていた事もな」
「なにっ!?」
「リリエが言っていた通りの男なら、自殺なんてする筈が無い。にも関わらず自爆して死んでいるのは変だろう? 答えは犯人に掛けられた暗示だ。それと同じ事をイゴー・ソブトルも受けていた。そしてダードゥ・ソブトルもだ」
「なんですって!? ダードゥ、つまり山賊ネッカスも家令に何かをされていたというの!?」
「ダードゥへの暗示はファーバク家の領地を徹底的に荒らすこと。特に自殺に関しては命令をしていなかったようだ。おそらく薬を盛った期間が短かったのと、先代がダードゥに潜入命令を出したからだ」
「潜入命令……」
「そうだ。つまり先代当主は山賊をしろなんて命じていない。それをやらせたのはコイツだ。ダードゥに暗示を掛けて凶暴化させ、山賊の真似事をさせたんだよ」
「この男が……!」
「くっ! 何を勝手な事を!! それよりも早く縄を解かないと、罪人として兵士に捕縛させますよ!」
「ここで? いったいどうやってだ? 俺達しか居ないのに兵士を呼ぶのか? そりゃあ、無理というものだ。周りを見てみろよ」
そこで初めて周囲を見たらしく、明らかに先ほどまで居た場所ではない事が分かったらしい。
かなりの動揺をしている。
「い、いったいここは何処だ! 私は何故こんなところに居る!?」
「こんなところとは失礼なヤツだなぁ。これから楽しい楽しい拷問の始まりだというのにさ?」
「は? ご、ごうも………拷問!? なんで私がそんな事を!!」
「お前の意見など、どうでもいい。さて、徹底的に吐かせようか。ヌンも楽しみにしている」
「それは当然でしょう。生命体を生きたまま潰せるのです。貴方がたが虫を潰すように、私は生命体を潰すのですよ。そもそも私にとっては生命体など、その程度ですからね。羽虫を見ているようなものです。ああ、簡単には命乞いなど止めて下さい? 楽しくないのでね」
その後の拷問は苛烈を極めた。
そうなる前に木製ヌンさんがラディを<解放調整室>に移動させたぐらいだ。
そして治療が済んだアックレトの顔が青褪めて白に近付く程度には、見た目がアレな結果で終了。
それでも死んでいないのだから素晴らしい。
十分に吐かせた後で<生物修復装置>に突っ込んで治療。
その後に足の指全てと、手の小指と親指を切断。
焼いて止血をして全てが終わった。
一部始終を見届けて貰ったが、お疲れさん。
「本当にね。何かもう、色々と強くなれた気がするわ。今までの私ではないわね。そう言えるくらいよ。ははははは……」
「リリエフル嬢も乾いた笑いしか出ないようだが、あんなものを見せられては仕方ないであろう。全て吐かせる事は出来たが、あれこそが本物の拷問なのであろうな。私達はまだ軽かった……」
「ええ、本当に。ですが二度と見たくありません……」
「それには心底同意する」
「まあ、こいつがグィズマ王国からの工作員であり、裏の部隊の者である事も分かった。それなりの地位であった事もな。なかなかに有意義な話を聞けたが、ヌンさんは不完全燃焼っぽいね?」
「ええ、もっと追い込める筈なのですよね。心が壊れては楽しくありませんが、まだ余裕がありそうなのが何とも……。ギリギリまで追い込んでこその拷問ですし、余裕があるまま終わらせるのは納得が……」
「「「………」」」
三人がなんとも言えない顔をしてるなぁ。
当然と言えば当然だろうが、生き物を虫けらとまでは言わないが、そういう風にしか見ていないんだよ。
ヌンさんはさ。
ヌンさんからすれば肉体を持っている存在自体が、自分とはまったく違うナニカでしかない。
つまり根本的に違うんだ。
「獣人や人間が苦しんでいても、ヌンさんからすれば虫が苦しんでいるくらいでしかない。お前達は虫が苦しんでいて、何か手助けをするのか? つまりはそういう事だ」
「「「………」」」
「根本的に違うっていうのは、本当にその通りなのよねえ……。元々自分に無い肉体を持っているって事は、自分とは完全な別種だし、痛みも何も理解出来ないものなのよ」
「だからこその観察なんですよね。私達が虫の足を千切って観察しているのと同じです。それに何かを思いますか?」
そう言われて三人は理解し、同時にヌンさんの情け容赦の無さも理解した。
個本的に通じないのだ、全く、欠片も。
どれだけ痛みを訴えてもヌンさんには無いものだから、本質的には理解出来ない。
伝わらないというのが、どれほど恐ろしいのか。
苛烈にやられたそこの家令が一番理解しているだろう。




