0255・惑星に戻る
Side:イシス
リリエへの説明は終わり、落ち着いたところで<魔法陣部屋>へと行く。
一度、深呼吸をさせて落ち着かせ、その後に魔法陣から惑星へと帰還。
すると喧騒の中へと戻ってきた。
「姉上! 姉上、大丈夫ですか!!」
「無事ですから落ち着きなさい。それよりラディは外に出て来てはいけません! まだ賊が居るかもしれないのです、安全が確保された訳ではありませんよ」
「で、ですが……」
「この通り、私には何の問題もありません。それよりも、これはいったいどういう事かしら? 最初から私達ファーバク家の者を殺す気だったのでしょうか? それとも残党が残っていた?」
「リリエフル嬢、大丈夫か!? 先ほど銃声が聞こえたが!?」
「無事でございますよ、サッティア巡視官殿。それよりも私が狙われたのか、それともラディが狙われたのかは少々分かりかねるところです。それと今さら私を殺したところで、既に明るみになっている事が多すぎて取り返しがつかない筈なのですが……」
「何も分かっていない愚か者が行った可能性があるのと、もう一つはグィズマ王国の手の者の場合だ。当主の部屋などバレては「ドォン!!」困る物が「火が出てるぞー!!」置かれ……」
「しまった! 証拠を焼く気か!? ここまで来てむざむざ証拠を消されてしまうとは……!!」
「まさかこれほどの強行手段に出るとは……。本当に彼の国はなんでもありですのね」
「何という事だ、これではグィズマ王国の謀だと証明できんではないか……」
さっきから何度も俺は承認しているんだが、ヌン、バステト、ハトホルが<時空の狭間>に帰りまくってるな?
これってもしかして証拠物を適当に持って帰ってる?
物凄い速度で承認しなきゃいけないんだけど、勘弁してほしいところだ。
ハトホルだけは少ないから、おそらくアイテムバッグに証拠物を突っ込んでるんだと思う。
それよりもリリエを撃った犯人はどうなったんだ?
無事に確保できたんだろうな?
その辺りが分からないまま、俺達は周囲を警戒する。
そして屋敷には火が回り続け、もうどうにもならない程にまで広がってしまった。
既に火を消そうとしていた者達は退避し、燃え盛る屋敷を見ている事しか出来ない。
「流石にここまで屋敷が派手に燃えるっておかしくないか? 油か何かを撒いていたのか、それとも魔道具か何かを使った可能性が高いな。最初に爆発音が聞こえたし」
「そうだな、その可能性は高いと思う。それよりも女性達とゴーレムが居ないようなのだが……まさか!」
「心配しなくても大丈夫だ。そもそもあの三人が逃げ遅れるとか、あり得ないからな。おそらく屋敷の向こう側に出たんだと思うぞ。……ほら、向こう側から歩いてきたろ」
俺は屋敷の向こう側から歩いてくる三人を見ながら、いったいあの連続承認が何だったのかと考えていた。
俺の予想通りなら良かったんだが、何かの緊急事態だったら困る。
そんな事を考えていると、早速とばかりにヌンから【念話】で話しかけられた。
『イシス。<時空の狭間>に銃を撃った者と放火した者を捕縛しています。向こうに行って犯人を洗脳しておいて下さい』
『洗脳? なんでそんな事をする必要があるんだ?』
『犯人達は何かの薬で暗示を受けているのか、自分達の目的を達した後で自殺を試みました。強制的に気絶させましたから死んではいませんが、洗脳しないと自殺を試み続けます』
『マジか……。グィズマ王国の奴らかどうかは知らんが、本当に碌な事をしないな。薬を使ってまでやらせるのかよ。仮に捕らえられても、そいつらから情報は得られないという形か』
『でしょうね。それでも洗脳して情報を吐かせれば、解決の糸口が見つかるかもしれません。薬で自我が壊されている場合、本体でも全ての記憶が覗き見れない可能性があります。場合によっては洗脳して吐かせた情報頼りになるかもしれません』
成る程。
ヌンさん本体にも弱点というか、何でも出来る訳じゃないんだな。
仕方がないとはいえ、おかしな薬を使ってくる可能性はこれからもある。
情報が全て手に入らない可能性も考えておこう。
俺は<時空の狭間>へと移動し、魔法陣部屋の床に寝かされている男達を<生物修復装置>へと運ぶ。
一人ずつしか無理なので、もう一人は縄で縛り、カプセルに入れた方に治療と洗脳を行う。
治療を行うのは薬の影響を排除する為であり、これをしておかないと薬での暗示が悪影響を及ぼす可能性があるらしい。
「私でも完全には読み解けませんね。質の悪い薬を使っている証でしょう。その所為で随分と色々なところに不具合というか、エラーが発生している感じです」
「人の肉体に対して使う言葉じゃないと思うが、言いたい事は何となく分かる。きちんと繋がってないから、断線していて読み取れないって事だろ?」
「そうです。とりあえず治療と洗脳が終われば、私も限界まで読み取れるようになりますので、終わるまでは待つしかありませんね。それでも断片的には手に入っています」
ヌンの話を聞くと、どうやらこいつらはソブトル家に雇われていた小間使いなんだそうだ。
そんな立場の者達でしかないにも関わらず、何者かに薬を盛られて暗示を受けている……ねえ?
「これって、どう考えても内部に犯人が居るよな? それも犯人だとはバレないように蠢いているヤツがさ」
「でしょうね。その可能性は相当に高いと思います。屋敷の内部の者なのか、それとも分家の者なのか。その辺りはちょっと分かりませんね。調べるにしても治療が終わってからでしょう」
「そうするしかないな。それにしても厄介な事だと思うが、こういう時代なんだと思えば納得もあるか。ヤバい薬があったら、利用するのが欲のある生き物だよなー」
「それは仕方ありませんよ。それ故に発展するのですし、滅びるのです。それが惑星を巻き添えにするのか、生き物の国だけが滅亡するのかの違いですよ」
「十分大きな違いだと思うが、ヌンさん的には大した違いじゃなさそうだ、っと、一人目が終わったか」
プシュー………カチャッ!
俺は開けたカプセルの蓋から中のヤツに出てくるように言い、外に出てきたら縄を解いてもう一人を入れる。
再び治療と洗脳を指定して、カプセルの蓋を閉じた。
さて、話が聞けそうだな。
「まず、お前は自分が何をやったか覚えているか?」
「はい。ファーバク家の馬車から出てきた者を撃ちました」
「それは何故だ?」
「命じられたからです」
「誰に?」
「家令様にです」
「やっぱりか……。アレ、ずっと怪しかったんだよなー。何だか奇妙だし、こうも上手くソブトル家の者が居なくなるなんて不自然に過ぎる。誰かが抹殺しようとしたしか考えられないし、疑惑の最有力候補はあの家令なんだよ」
「あくまでも予想と事実は別ですけどね。これであの家令とやらを堂々とこちらに持って来れますね。流石に神々も文句を言わないでしょう。誰も彼もを連れて来て暴くのは問題ですが、既に疑惑の徒なら別です」
「まあな。それより、お前は自殺しようとしたらしいが、それも家令からの指示か?」
「はい。家令様は見つかると面倒な事になるので、成功しても失敗しても銃で頭を撃って死ぬようにと」
「他に家令は何か言っていなかったか? グィズマ王国とか」
「はい。グィズマからの命令とはいえ、商人達が薬を持ってこないと先に進まぬ。長い期間を掛けねば薬も暗示も上手くいかぬと」
「成る程なー。………うん? 暗示で自殺? もしかしてイゴーとかいう嫡男も暗示を受けていたのか?」
「その可能性は高いでしょう。最初からソブトル家を潰すつもりで血族を絶やし、分家から入れてきた者を操るか、それとも途中で入れ替える。似たような人物を連れてくれば、成り済ましは可能です」
そこまで考えていたかどうかは、本人に聞けば済むだろう。




