0214・港町へ
Side:イシス
再び惑星に下り立った俺達は、まず森を抜けようと適当に歩いていく。
するとそこまで時も掛からずに森を抜けた。
どうやら俺達が居たのは森というより林というべき場所であり、そこまで深くはなかったようだ。
そして目の前にはなだらかな下り斜面と、その向こうに港町と海が見える。
青い空と白い雲、そして綺麗なう……? なんだアレ?
「空を何かが飛んでるな? 小さいから遠いんだろうが、もしかしてアレが<空船>か?」
「そうじゃないの? っていうか、空を飛ぶって厄介よねえ。敵が空を飛んで逃げるなら、追いかける事が出来ないじゃない。こっちはあんなの攻撃する武器も無いんだし」
「バステトはあるでしょう? あの光の爪。あれで攻撃すれば切り裂いてしまうと思いますよ?」
「アレを使える時間ってメチャクチャ短いのよ? 遠くなれば届かないまま魔力切れを起こすっての。流石に空まで届かないわよ」
「それがありましたね。となると……どうすればいいんでしょう?」
「この星はあんなのが在るんだから、当然ながら対抗する為の武器もあるだろう。最悪は下りて来た所に乗り込んで奪えばいい。ヌンさんなら喜んで解析するだろ」
『むしろ解析する為に手に入れたいですね。出来れば動く状態で欲しいところですが、おそらくは動かない状態でも解析は可能でしょう。完全ではなくとも、それに近い状態まで解析できる筈です』
「ならヌンさんに任せて、俺達は適当に戦えば済むな。まずは港町に行ってみよう」
俺達はなだらかな斜面を歩いて下りて行き、町に近付いていく。
遠目で見えていたが、町の近くには畑が多く緑豊かな光景が広がっていた。
何が植えられているかは知らないが、まだ緑色なので収穫には遠いのだろう。
そんな中を歩いて行き、俺達は町までやって来た。
が、町の入り口には誰も居らず、門番すら居ない。
おそらくは入っても問題ないのだろうと思い、俺達はさっさと町に入って色々と見て回る事にした。
できれば今日中に金を稼いで、宿に泊まりたいもんだ。
最悪は持っている物を売ればお金は稼げると思うが……。
何が価値があるのかは分からないんだよなぁ。
鉄の価値が高い場合もあるし、難しいところだ。
適当に見て回っていると、突然「ガシャーン!」と音がして男達が外に出てきた。
なにやら手に色々と持っているが、もしかして盗賊か何かか?
「ケッ! てめえみてえな金貸しが居るから皆が不幸になるんだよ! 俺達が有効活用してやるぜ!!」
「ふざけるな! ワシは今まで真っ当にやってきておるわ! 貴様ら如き盗賊が偉そうにホザくな!!」
何かを持っている男達は獣人で、熊耳や犬耳に猫耳などバリエーションは豊かだ。
そして爺さんの方は完全に人間だった。
どうやらこの星には人間が居るらしい。
通産三つ目の惑星にて初めて人間に出会ったな。
ある意味で長かった。
見ていると、爺さんは左手に持っていた長い筒を向けて構える。
って、あれ銃じゃないか! やっぱりあったのか!
俺が驚いていると「バン!」と音が鳴るものの、誰一人当たった気配は無かった。
「ぎゃははははははは! フリントロックの銃なんて骨董品を持ち出しやがって、そんなもんがオレ達に当たると思ってんのかよ!」
「はははははははは!! ジジイ、せめてコレぐらいの銃は持っとけや!!」
そう言って狐耳の男が構えたのは小銃だった。
それを爺さんに向けて発砲。
「キィン!」という音がして、爺さんは顔を顰めるものの傷は無いようだった。
その爺さんはすぐに玉を込めて撃とうとするが、男達は既に逃げていて追いつけるような距離ではない。
爺さんは銃を下ろし、肩を落としながら店へと戻って行く。
俺達はそれを見つつ、追いかけないのは何故かと悩む。
『もしかして、この惑星でも魔力感知は一般的じゃないのか? それともこの星には魔法が無い?』
『【錬金術】がある代わりに魔法が無い星ですか。可能性としてはありそうですね。まあ、魔法が無かろうが【魔術】は使えますので、私達には特に問題などありませんが』
『そうね。とりあえずさっきの奴らを追いかけましょうよ。叩き潰して取り戻せば一割ぐらいくれるんじゃない?』
『だな、そうしよう。今も連中の魔力は追えてるし、問題なく追いつける。ちょっと小走りする感じで移動しよう』
俺達はさっさと方針を決めると、先程の盗賊連中を追いかけていく。
爺さんには無理でも、俺達なら楽勝だ。
そもそも盗賊連中の足が遅いので、俺達なら簡単に追いついてしまう。
入り組んだ港町の中を駆け抜け、とある民家の前までやってきた。
しかし、ここが本命の場所じゃない。
何故なら盗賊達の反応が地下へと下りていて、そこから更に遠ざかってるからだ。
俺達は廃屋のような建物に入り、地下へと下りる場所を探す。
するとボロボロのカーペットの下に階段を発見。
かなり急な階段だが、それを下りて進んで行く。
下は狭い通路になっていて、そこをどんどんと進んで行くと、奥には梯子が壁に付けられていた。
上には蓋がされているようだが、その上の近くには盗賊の気配がある。
それも盗賊達三人だけではなく、数えただけでも八人の魔力反応だ。
しかも蓋から近い位置にその反応が、って思ってたら動き始めたな。
何処かへ移動しているみたいだが、とりあえずバレないように上がれそうだ。
上の蓋をゆっくり開けて上がった先は、何の変哲も無い部屋の一室だった。
俺は素早く辺りを警戒するも、俺達の事は見つかっていない事に胸を撫で下ろす。
バステト、ハトホル、ヌンが上がってくると蓋を閉め、そして部屋の入り口へと移動する。
実はこの部屋、扉がある筈の場所に扉が無い。
なので向こうからの大きな声が丸聞こえだ。
「がはははははははは!! 貴様らが上手くやったおかげで資金が貯まったぞ! これでワシの船にも大砲が積める。まったく、業突く張りの商人が吹っ掛けてきやがって」
「大砲さえ付けばこっちのもんですぜ! これでオレ達をバカにしていた奴らの船を沈めて奪い放題だ!」
「バッカやろう。沈めちまったら奪えねえだろうが!」
「「「「「「「ははははははははは……!」」」」」」」
何かバカ話をしてるなぁ。
大砲を積むのはいいが弾をどうするんだ? 発射する為の火薬は?
全てが全て俺の居た星とは違っていても、大砲一つで戦力差が引っ繰り返る事なんて無いだろ。
むしろ撃ち尽くしてバカにされるのがオチじゃないか?
どのみちこいつらはここで死ぬんだが、こんなマヌケだから死ぬんだろうなぁ。
何処の星でも変わらない事か。
ドドドスッ!!
少しズレたものの、部屋の中に居た八人の頭を【ヒートバレット】で撃ち抜いて殺害。
俺達は部屋の外へと出た。
そこはリビングのような場所で、テーブルの上に金を置いていたらしく、赤い物や青い物が見えた。
………あれ、今気付いたけど魔力を発してるな?
そういう素材なのか?
……これが貨幣なのかと首を傾げたくなるが、俺達はそれを回収。
更にこの家の中を家捜しして色々な物を手に入れた。
緑の物と黄色い物もある。
更に壁の中に白い物も発見したが、これは一枚だけのレア物のようだ。
どれも透き通っている物で、貨幣のような形と大きさをしている。
それに奪ってきた物が赤と青の物だったのだから、おそらく貨幣で間違い無いだろう。
価値が全くの不明だが。
それはともかく死体を【ストレージ】に回収して<時空の狭間>に持っていき、魔法陣部屋で全て剥いで放置。
惑星に戻ったら何食わぬ顔で建物から出た。
どうやら現在地は町の隅っこらしく、それなりの距離を地下から移動して来たのが分かる。
俺達は先ほどいた場所まで戻りつつ、ここが港町の西側に広がっていた住宅地かと理解した。
周りを見ても建物が犇きあっていて、ここがスラムだという事がよく分かる。
子供達が元気に遊んでいるので、そこまで酷いスラムではないらしい。
おそらくは海が近いからだろう。
最悪は自分達で食べ物を獲れば済む以上、内陸よりは生きやすい筈だ。
すぐ近くに塩の元もあるわけだしな。




