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0210・呪いのアンズルとの戦い その3




 Side:イシス



 ヤンマ王国の者達はこちらに来て早速とばかりに話し出した。

 グレイ同士だと表情というか顔が分かるようで、すぐに会話が始まる。

 それは良いんだが、敵地の中心近くで俺達は何をしてるんだろうな?



 「オムテス王国第二王子殿下。私はヤンマ王国の総指揮官であり、将軍位を戴いている、ラッテイム・オルムウィと申します。………不肖の息子がお世話になっておるようで」


 「不肖の息子?」


 「………もしや第二王子殿下はご存知で無かったので?」


 「殿下、私の名はディアンズ・オルムウィと申します」


 「そなたヤンマ王国の者だったのか! ウェロヌ・ウィーグン、何故教えなんだ?」


 「えー? 教える意味も無いし、何度も戦って助けてくれてるじゃない。だったら良いでしょうに。それに彼は開拓者よ? どこで戦争に参加しても問題ないわ。開拓者になるってそういう事なんだし」


 「まあ、ディアンズは家族から止められる事も無かったどころか、無視されてたって言ってたからなぁ。開拓者になるって事は国替えする事もあるし、それを貴族家が止めないって事は………そういう事でしょう」


 「「「「「………」」」」」


 「我が国は貴国と揉めるつもりはないが、開拓者だというのであれば、そういう事なのであろうな。オルムウィ卿、何故止めなかったのだ? と問われたら……反論はあるのかな?」


 「いえ………」


 「「「「………」」」」



 実はここまでは決まっていた定型文を喋っているだけだ。

 想定していた事なので、こちら側は回答を最初から用意していた。

 それが先程の会話になる。


 つまりは……

 「お前の息子だが、既に自由の身である開拓者だ。そうなっている以上はガタガタ言うな。止めなかったお前が悪い」

 って言ってるわけだ。

 実際に事実なので全く反論など出来やしない。


 そもそも自由の身である開拓者を各国は悪用しているんだよ。

 その悪用には当然スパイも含まれるが、だからこそ自由の身となるのは何処の国も否定できない。

 いや、紐付きだと公言する事は出来ないと言うべきだな。


 だからこそ自由の身という立場は保証されるし、自由である以上は他国で活動しても許される。

 その結果、祖国の情報が抜かれても仕方ない。

 特に不遇な身の者を懐柔されても文句は言えないのだ。

 他の国もやっているから。


 強いて言うならば、不遇な環境に置いていた者を開拓者にする阿呆が悪い。

 だからオルムウィ家が悪いとなるわけだ。

 ヤンマ王国の総指揮官が黙ったのは、そういう理由となる。



 「それはともかくとして、そちらがこちらに近付いてきた理由は何かな?」


 「それは私から。実はオムテス王国の方々がここに留まっておられるので、ここから先に進むのに、何か危険があるのでしょうか? もしくは何か別の理由があって留まっておられるので?」


 「北側を見れば分かるが、現在モルドン王国軍が呪いのアンデッドに襲われている。あの呪いのアンデッドは相当の強者なうえ、呪いを放出して生きたままアンデッドに変えるようなのだ」


 「なんですと!?」


 「そもそもはゼンス王国の公爵である、アルハム・ゼオルキンスと共に居たのだが、ゼオルキンスはあの呪いのアンデッドに殺害された。あれは多くの呪いの武具を持っており、<死霊術士>が居なくとも勝手に動き回るようだ」


 「そのようなものが……」


 「一応言っておくけど、完全な欠陥品よ? 味方を殺すなんて役に立たなさ過ぎる。自国の軍をアンデッドに変えられたくなかったら、下らない事は考えない方がいいわ」


 「「「「「………」」」」」


 「そんな事を言っても無駄だぞ? 有史以来やる事なんて変わらないさ。自分達で手酷い失敗をしないと反省しないし、その一回で国が滅びる事もある。欲に負けて禁忌を犯す、なんて事はよくある事でしかない」


 「一国の王子として耳が痛いな。とはいえ碌でもない者というのは何処の国にも居るし、居ない国など存在せぬ。それは仕方のない事よ」


 「愚か者が居ない国など存在しないからな。皆が賢くなれば、賢いなりの愚か者が出てくる。愚か者とは結局のところ、他の物より劣った者でしかない。そして生きとし生ける者に能力の差がある以上、劣った者は必ず存在する。故に愚か者が居なくなるという事は、絶対にあり得ない」


 「賢さの平均が上がろうが、その平均以下は必ず居るもの。どうしようもないわ」


 「ああ、そういう事か。そりゃ確かに絶対だ。平均以下ならいつの時代にだって居る。その平均が上がろうが下がろうが、それより下が居る事だけは変わりゃしない」


 「まあ、それより上だろうが下だろうが、それと欲に負けるかどうかは別なんだけどな。頭が悪いのと欲に弱い事に因果関係は無いから」


 「無いのかよ!」


 「あるわけないだろ。あるのなら、学問を学ぶ貴族の中に何故欲に負けているヤツが多いんだ? 平民に多く貴族には少ないという状態じゃないと説明がつかないだろうに」


 「確かにそうだ。学問を学んで賢い癖に、欲に負けて犯罪に手を染めている者は多いな。賢い者が欲に流されぬなら、貴族は全て品行方正でないとおかしい」


 「耳が痛いが、それより北側に動きがあったみたいだぞ? 大半がアンデッドに………アレは何をしている!?」



 呪いのアンデッドは多くのモルドン王国軍の兵士をアンデッドにしていたんだが、それらを呪いで真っ黒に染めてから吸収し始めた。

 それも呪いの武具だけでなく、呪いのグレイ自身もだ。


 己を真っ黒にしつつ、見た目は黒いグレイに変貌していく。

 目の部分だけが灰色に光り、おぞましさが更に増大した異常な存在へと変わったようだ。

 明らかに周りの連中は怯えている。


 そんな中、俺達は前へと出て戦闘を始めた。

 もはや最終決戦といくしかない状況だからな。

 しかも俺達が勝たないと相当にマズい。


 俺は聖銀の盾を構え、左半身を前に出して対峙。

 黒いグレイは手に持った剣で切り込んできたが………速い!!


 ギィン! ガッ! ガンッ!!


 最後の返しで強引に防御させられた。

 後ろに跳ぶ事で衝撃は逃がしたが、尋常じゃない速度に変わっている。

 これを続けられたなら俺は絶対に敵わないぞ、どうする?


 バステトとハトホルも浄化してくれているが、全くと言ってもいいほどに呪いが削れない。

 ここまでだと、どれだけの時間が掛かるのやら……。

 俺だって聖銀の盾だから対峙していられるが、近付きたくない程に濃い呪いになっていて厳しい。


 近付くだけで吐きそうな程のおぞましさを受けていて、集中して戦う事が難しいんだ。

 ここまで異常な存在になると知っていたら逃がしはしなかったんだが……バカの見本みたいな事をやらかしたか。


 盾を持って戦えるようになったからって、勝ったわけでもないのに敵を軽く見た所為だ。

 何とか他のヤツの所に行くのだけは防がないとな。


 キン! ギィン! ドゴッ!!


 あっぶねえ、体ごと突っ込んで体当たりしてきやがった。

 体当たり自体も強力だが、それ以上に纏っている呪いが最悪だ。

 あれは危険過ぎて避けるしかない。

 こいつの呪いが強力になり過ぎて、近付く事そのものが危険すぎる。


 何とか盾で凌いでいるだけで、まともに戦えている訳じゃない。

 防戦一方というより、防戦しか出来ないと言うべきか。

 それでもあっさりと殺されるほど差が無いのが救いだ。


 呪いは大量に得たらしいが、達人の技術力は上がっていない。

 その御蔭で何とかなっている。

 それでも厳しいし、要所で目に【身体強化】を行っている有様だ。

 それでスローモーションに見る事ができるから何とかなっている。


 それでも疲労は溜まるし、魔力も減っていく。

 このままだと再びジリ貧で負ける可能性が高いぞ。

 どうにかしなきゃいけないんだが、どうにもならないから今の状態なんだよなぁ……。


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