0209・王都の交差地点で雑談
Side:イシス
とりあえず防具を作り終えた俺は、栄養剤と食事を作って食べる。
それが終われば寝室で仮眠をし、本当の意味で回復した後に魔法陣の部屋へ。
再び惑星に下り立った。
「「「「「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!??」」」」」」」」」」
そういえば呪いのグレイがモルドン王国軍の方へ行ったんだったなと思い出したが、アレを追いかけるのが良いのか分からない。
たとえ敵国とはいえ、堂々と大きな声で王城の宝物を奪えって言うか?
呪いのグレイでなくとも盗賊としか思わんぞ。
「あの呪われたグレイ、王城の宝物を奪うって言葉に反応したんだと思うんだが……。となるとアンデッドになっても何がしかの自我があるって事か? それとも呪いの武具がそういう意思を持っている?」
『アンデッドにも意思がある者も居ます。たとえば高位のアンデッドであるヴァンパイアや、いわゆるリッチなどですが、あれらは相当数狂っているというのが正直なところですので……』
『一度死んでるんですから、その時点で狂っているのでは? アンデッドがまともな方がおかしいと思いますよ。もちろん何事にも例外はあるでしょうが……』
『まあねえ。一度死んで変な蘇り方とかしてるんだし、それなら狂うのは普通でしょ。<ムンガ>だって狂ってたし、瘴気や呪いで汚染されると壊れるんだと思うわよ? 別の何かに変わるなら可能性はあるけれど』
「そうだな。元の人格や記憶は死んだ際に失われるか、あっても僅かだろう。死体がアンデッドになっても動くだけで生きているわけじゃない。あくまでも動くだけだ」
『ええ。ですので頭の中身は腐り続けますし、腐敗もし続けます。ゾンビを使っているとスケルトンになるのも当たり前の事なのですよね。そして骨が強い筈も無く』
『簡単に砕かれるでしょうし、骨だけなら脆くて当たり前です。呪いなどが付いていれば強いのかもしれませんが……』
『リッチなどがそれに当たりますね、そもそもアレは瘴気と呪いのスケルトンですので。だから自我があるんですけど、当然ながら狂っています』
『なんか、そういう意味では<ムンガ>と似てるわね。呪いが本体だったのと、呪いで自我を持った者。どっちもアレ過ぎて駆除対象にしかならないわ』
「まあ、いつの時代でも、この世は生きている者の為にあるからなぁ。死んだ者の為には無い。死者の国なら死んだ者の為にあるんだろうが、この世は死者の国じゃ無いし」
『ですね。どのみちアンデッドは死体に還さねばなりません。死者の国ではない以上、ここではアンデッドとして生きる事を許す訳にはいきませんので』
「さっきから会話ばっかりだけど、アレは放っておいていいわけ?」
俺達がダラダラと会話をしているので、ウェロヌ達と第二王子達が近付いてきた。
「それを言われても困るな。俺達だけなら戦うが、そもそも盗賊が居る以上はどうにもならんだろ。呪いのグレイがやっているのは盗賊退治だ。俺達が何かをする訳にもいかない」
「確かにな。あのように堂々と他国の宝物を奪うなどと言うとは、正気の沙汰とは思えん。自らの祖国に恥を掻かせるだけであろう。むしろワザとか? と言いたくなる」
「で、ございますな。流石にアレは無い、としか思えませぬ。何処の誰かは知りませぬが、あの一言でモルドン王国が如何な国か分かるというもの。警戒しなければなりませぬな」
「流石にあれはオレ達も無いとしか思えないぜ。幾らなんでも堂々とデカい声で言い出したからな。何と言うか、色々と通り越して酷い」
「ああ。あの一言で国のイメージを相当程度悪くした。それが分かっているのか分かっていないのかは知らないが、その程度の者を最前線で使っているという事だ。だからああなっても文句は言えない」
「「「「「「「「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!??!?」」」」」」」」」」
呪いのグレイが剣を振り、呪いを飛ばして敵を殺す。
すると死体がアンデッドとなり更にモルドン王国の兵士を殺して行く。
呪いのグレイ一体で相当の脅威になる事が分かったな。
あれは思ってるよりマズい、一体だけでアンデッド軍団を作りかねない能力だ。
おそらく剣以外の何かの能力なのだろうが、放っておいたら手がつけられなくなる可能性がある。
とはいえモルドン王国の奴らを助けるのもなぁ……。
気乗りしない。
いったいどうするべきかと思うものの、今は見守るしかないかな?
あのアンデッドの目的がなんだか微妙だから、何とも言えなくなってくる。
どういう結果で生まれたのか分からないけど、少なくとも悪徳なヤツを倒そうとしている感じなんだよ。
とはいえ王城を潰したのは俺達なんだから、俺達が一番の敵な筈なんだけどな?
もしかしたら、それを知らないのかもしれない。
「遠かったし、元々は北に居たんじゃなかった? だったら見てない可能性は高そうよ。今言う事ではないけど」
「そうだな。今言ってもアレがこっちに来るだけだし、何の得も無いと思うぜ。あいつらが倒れてからだろ、あの呪いのアンデッドを倒すのはさ」
「うむ、そうだ……南門も突破したようだな。ヤンマ王国もこちらに来るらしい。おそらくは大丈夫だと思うが、おかしな事を言うとあのアンデッドどもに襲われるぞ」
「仮にそうなったとしても、不用意な発言をする者が悪いとしか言えませぬ。まともな者であれば、あのような発言など致しませぬ。いえ、あり得ぬと言って宜しいかと」
俺達が会話をしながら止まっているのは、王城前の十字路だ。
この国の首都は東西南北の道路が交差する中心、その西に王城がある。
軍の建物も王城近くにあるみたいなので、何か変な感じがするぞ?
首都の中心に城を置いている訳ではなく、少し西にズレているなんてな。
何がしかの理由があってこうなっているのか、それとも唯の設計ミスか。
西にも王都は広がってるから、王城しかない訳じゃ無いし……。
なんだかよく分からない都市設計だと思う。
それでも現実にあるんだから仕方ないけどさ、それでも普通は王城を中心に持ってこないか?
「王城が王都の中心だった筈よ? この道が交差しているのは、単に王城に行く為の合流場所ってだけなんじゃない?」
「言いたい事は分かるが、それぞれの門から真っ直ぐ来るとここなんだよ。それが変っていうか気持ち悪いっていうか、門が中心からズレているって事だろ?」
「ああ、そういう事か。王都というか首都を広げる場合に、そうなる事もあるのだ。おそらくゼンス王国の王都はそうなのであろう。門の位置までは変えなかったのであろうな。それゆえにズレた」
「王城を新たに大きくする場合などは、元の場所からズレた所に建てるしかありませんからな。王城を一度潰してから、などという事はできませぬし」
「そんな事をしたら狙われるわ。そもそも王城は王を守る為の施設なんだから、新しいのが完成してから移るものよ。だから今までの中心からズレるのは仕方がないと言えるわね」
「大通りも門も既にある以上、それを王城の位置が変わったからといってズラす訳にはいくまい。結果として王都の通りの交差する場所では無くなったという事か」
「必ずしも王城が中心になくても良かろう。それよりもヤンマ王国の使者がこちらにやってくるようだな」
こちらに歩いてくる者達が見えるが、その先頭は話し合いの為にオムテス王国の陣に訪れていた者だと思う。
俺はチラリとしか見てないし、あの時には<サルグォ>に乗っていたから分かったんだ。
相変わらずだけど、グレイの顔の区別がつかず声で判断するしかない。
しかもよく関わる奴らの声しか覚えてないんだよ、俺。
当たり前だけどさ。




