0205・余波と結果と元凶と
Side:ウェロヌ
ズドォォォォォォン!!!! ……ドゴォォン!! ………ズドォン!
私は今日ほどイシス達が恐ろしく、そして今日ほど阿呆に見えた日は無いだろうと思う。
土の塊を空中に浮かせている時には「コイツらは頭が狂ったの?」と思ったけど、その結果は狂っているという他なかった。
ゼンス王国の東門は吹き飛んで意味を為さず、真っ直ぐ飛んでいった土の塊は王都の通りを突き抜けていき、王城を貫いてそのまま飛んで行く。
自分でも何を見たのか、ちょっと分からない。
常軌を逸しているとか、そんなチャチなものじゃない。
もっと恐ろしい何かを見た気がする。
……っていうか、今も私の頭が理解する事を拒否するのは何故かしら?
なんだかアレは考えてはいけないものの気がするのよ。
恐ろしい事をすると思うけど、とにかく動きましょう。
今は戦争の最中なのだし、戦いは………始まるのかしら?
敵が居なくなっちゃってるし。
「いやー! すまんな、失敗だ。ちょっと威力が高かったらしい。失敗だから笑ってくれ。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」
「ハハハハハじゃないっての!!! 何よアレ! 確実におかしいでしょうが!! そもそも鉄の格子門を紙屑のように吹き飛ばしたんだけど!? もう、アレよね? 私達って別に要らないわよね? あんた達だけで制圧できるでしょ、この国!!」
「えー、めんどい」
「否定しろ!! あんた達だけで国が制圧出来る事を否定しろ!!!!」
「あー、伯母さん。そんなに怒っても疲れるだけだし、もう考えない方がいい。色々とイシス達が滅茶苦茶なのは知ってるだろうに。今さらだよ、今さら」
「今さらって、ねえ! あの一撃で戦争が終わってるじゃないの! アレの後で私達は何をすればいいわけ!? なんかする事あんの!?」
「まあ、まあ。怒っても仕方ないし、綺麗な顔が台無しだよ。あまり興奮しないで」
「//////」
「おおー、流石はディアンズ。一撃で黙らせたなぁ。っと、これ以上言うとまた噴火しそうだから止めておくか。それはともかく門は開いたんだから早く入ろう。戦いが少なくなった分、楽になったと思えばい、い?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………ガラガラガラガラガラガラ……………ズズゥン!!!
「あーあー、流石に一階部分の大半を吹っ飛ばされたから城も保たなかったかぁ! こーりゃ仕方ないな。HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!」
「だからハハハハハじゃないって、言ってんでしょうがぁ!!!」
コイツ、ほんともうヤダー!!!
私、お家帰る!
帰って妊娠するまでヤりまくるんだから!
ディアンズ、帰りましょう!!
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Side:イシス
茶化しすぎたのかウェロヌが若干ながら幼児退行というか、すべてを放り捨てたくなったらしい。
俺的には先程の【ロックバスター】の衝撃を緩和させる為にギャグっぽくしてみたんだが、ウェロヌはお気に召さなかったようだ。
それはともかくとして、そろそろ真面目に王都に足を踏み入れよう。
【ロックバスター】で吹っ飛ばしすぎたからアレだが、通りの左右の建物は崩壊し、その壁に肉がこびり付いている。
アレが何なのかは極力考えないようにしつつ、俺達が先頭に立って王都の中を歩いていく。
何というか自分のやった事を改めて確認すると、色々とマズいのがよく分かる。
これ、確定で恐怖からの暗殺を引き起こすぞ。
ここまでの威力の攻撃が出来るヤツなんぞ、恐ろしくて排除したくなるのは当然だ。
元の星の歴史でも、多くの暗殺は欲ではなく恐怖から生まれている。
だからこそ、この状況は危険極まりない。
今はまだ衝撃だけで済むが、やがて王侯貴族は確実に俺達に恐怖を向けてくるだろう。
その状態でとれる方策は二つ。
一つは懐柔する事であり、もう一つが暗殺する事だ。
そして確実に暗殺に向く。
何故って? 懐柔しても危険は無くならないからだ。
恐怖の根源を殺してしまわないと、その恐怖は無くならない。
だから恐怖の対象を暗殺するんだよ。
これは元の星の歴史でも、よくあったという程度の事でしかない。
よくあるからこそ、高い確率で暗殺者を差し向けてくる事が分かる。
知恵あるモノのサガだ。
自らに対する恐怖は拭い去る事が出来ない。
自分で自分の恐怖を増幅し続け、最後には必ず暗殺しようとする。
ウェロヌ達以外は。
あいつらは俺が<時空の旅人>であり、無限に蘇る事を知っている。
だから絶対に暗殺なんて事はしない。
当然だが、そんな事をしても無駄だからだ。
それどころか反対に殺されてしまう。
それが分かっているから絶対にそんな愚かな事をしない。
むしろ「この惑星の指令を熟して、さっさと出て行ってくれ」と思うだろう。
おそらく間違っていない筈だ。
「それにしても酷いな。まさかソニックブームというのがここまで酷い事になるとは思ってもみなかった。知っていても知らないっていう状態だったんだな。流石に【ロックバスター】は封印決定だ」
「ソニックブーム?」
「音速。つまり音の速さを超えると、空気の壁に衝突する事になるんだが、その空気の壁を突き破った際に衝撃波が発生するんだ。それをソニックブームという。決して両腕を超高速で交差すると発生する変な光じゃないぞ?」
「は?」
「いや、伝わらない事を言って悪い。ついつい口から出てしまった」
「???」
ソゥニックブゥーム!
……でも俺あのキャラ滅多に使わなかった気がする。
だってサマソ好きじゃないし、溜めばっかだし。
「それはともかくとして、土の弾頭は真っ直ぐ飛んだけど、その周囲に衝撃波が発生したんだ。それが周囲の建物まで破壊されたのと、通りに居た敵兵が挽き肉になった理由だろう。本当にソニックブームで挽き肉になるのかは知らんが……」
だって元の世界には魔法も【魔術】も無かったからなぁ。
物理法則を無視されると、俺如きではサッパリ分からん。
ヌンさんなら説明してくれるだろうけど、前提知識の無い俺には念仏と変わらない。
つまり聞いても意味不明って事だ。
俺達は王都の東通りを歩き、崩壊した王城付近まで来た。
すると北側で何やら争っている音が聞こえる。
どうやら向こうは元気に戦っているらしい。
そちらを見ると、鉄の格子の門が下りたままなのがチラ見できた。
つまり、あの大きな音はフェイクであり虚仮威だったみたいだ。
………こりゃ色々な意味で失敗したな。
南を見ると、そちらも門は閉じたままで争っているのが見える。
つまり東西だけが吹っ飛んだ状態ってわけか。
どう考えてもマズイなこれは。
しかしまだ指令が完了したというアナウンスが無い。
まだ倒すべき敵が残っているのか、それとも陥落させなければいけない場所があるのか。
そんな事を考えていると、北側から悍ましい気配と共に何かがやってきた。
「あそこに居る者どもだ! あれらを殺せ!! でなければ我が国は滅ぼされるぞ!!!」
「あれは………アルハム・ゼオルキンス!! このゼンス王国の公爵であり、アレこそがアンデッドを利用した醜き家の当主だ!!」
「ふざけるな! 我が国の困窮も知らぬ肥え太った者どもが! 我らが怒りを知れ!!!」
「貴様こそ、ふざけるな!! それは貴様らの我欲であり、正しき道などではないわ! そもそもここはかつて<ソーリャ>の国があった場所であり、驕った<ソーリャ>が神の罰を受けた場所ぞ!! それ故に作物が育たんのだ! そんな事も知らずに偉そうな口を叩くな!」
「な、なんだと!? ……そんな馬鹿な! 我が国は関係なく<ソーリャ>どもの所為だと!? ………おのれ<ソーリャ>どもめ! この世から根絶やしにしてくれようぞ!!!」
「何を言っておるか! この国は<ソーリャ>の国が崩壊した後、勝手に貴様らの祖先が住み着いた場所ぞ! 文句があるならば貴様らの祖先に言え! 迷惑に過ぎるわ!!」
第二王子が正論を言っているが、正論だけにこいつらは聞かないだろう。
聞いたところで自分達に得が無いからな。




