0204・過ぎたるは猶及ばざるが如し
Side:イシス
俺達が王都前で隊列を組んだりしていると、ここ王都前近くにオムテス王国ではない軍がやってきた。
おそらくはモルドン王国かヤンマ王国だろう。
その軍はオムテス王国軍から離れた位置に陣を敷くと、こちらに対して使者を出してきたようだ。
また五騎が来たので微妙な気分になりつつも、こちらに来た五騎は<サルグォ>から下りて挨拶をしてきた。
「私はヤンマ王国の将軍補佐を任されている、ダトリ・ガーワンです」
「うむ。私はシュードラ・ジェン・ウィムド・オムテスである」
「これは、オムテス王国の王族の方でありましたか。御会いできて光栄にございます」
「ここは戦場でもある。今は貴族や王族としての事は置いておき、この後どうするかをそちらと詰めたいのだが? 貴国もアレを見たら分かるであろうが、そう簡単に一国の首都を陥とす事はできん」
「ハッ! 我々もその事があり、貴国の陣に参った次第であります。アレは迂闊に攻めても上手くは行きませぬ。それ故にお話し合いをと」
両国ともに自分達の被害は少しでも減らしたい。
しかし王都は分厚い壁で囲まれていて、そう簡単には陥ちそうにない。
ならば他国の軍を上手く利用しようってハラだろう。
分かりやすいねえ。
それよりも軍儀が終わるまでダラダラ過ごす事になりそうだが、仕方ないと諦めるか。
…
……
………
俺は軍儀に参加するつもりも無いし、何よりオムテス王国の連中だけならいいが、他国の前では平民を参加させられない。
当然そういう事を言って俺は逃走した。
ウェロヌ達が若干睨んできたが諦めてほしいもんだ。
俺が平民なのは事実だっつーの。
そう思いながらダラダラしていると、ゼンス王国の王都の北から「ドォォォン!!!」という大きな音が聞こえてきた。
いったい何だと思って見てみると、黒煙が上がっている。
もしかして事故か何かが起きたのか?
そう思っていたら、ゼンス王国の王都から慌ただしい音が大量に聞こえてくる。
悲鳴のような声も聞こえなくはないので、どうやら何か爆発するような魔法でも撃ったかな?
流石に爆発物を作りだしたという事は無いだろう。
この星は魔法があるだけに、そういう部分では遅れてるからな。
地球では紀元前に既に火薬があったが、何も無くてもいい魔法があれば火薬は作られないだろうと思う。
練習すれば誰でも使えるんだしさ。
それはともかくゼンス王国の守りが爆発音のした場所に集中してるっぽいので、今が攻めるチャンスだと思うんだが……。
まだ軍儀をしているのか? っと思ったらテントから出てきた。
「何だ今の音は!? いったい何が起きている!!」
「先程の音はあちら側、おそらく王都から北の方角から聞こえてきました! 王都も混乱しているようですので、何処かからの攻撃である可能性が高いと思われます!」
「北? という事はモルドン王国か!?」
「確かめた訳ではありませんが、その可能性が高いと思われます!」
「殿下! モルドン王国と思わしき者達が原因のようでございますぞ!」
「そうか。ならばそちらの方に敵が集中している筈。今の内に我らも攻め込む。いたずらに攻めるのは危険なれど、モルドン王国だとしたら全ての功を奪われる訳にはいかん」
「ハッ! 用意せよ!! 王都攻めの時ぞ! 用意せよ!!」
慌ただしく動くなか、ヤンマ王国からの使者も慌ただしくこちらの陣から去って行った。
一応挨拶はしていたので、最低限の礼儀は守っていると言えるだろう。
とはいえ今の状況ではどうでもいい事か。
俺達は慌ただしく準備を終えると、王都攻めを始める事になった。
あの大きな音がフェイクでなければいいんだがな?
大きな音に釣り出されただけなら、むしろ大失態になりかねないぞ。
そんな事を思いながら攻め込むと、王都側が混乱している事が分かった。
ここの王都は東西南北に門があるらしく、どの門も鉄の格子状の分厚い門が下りている。
その周りが石壁であり簡単には陥ちないだろう。
さて、どうするかな?
そんな事を考えていると、兵士達が近付き石壁の近くに魔法で穴を掘り始めた。
どうやら多くの人員で穴を掘り、石壁を崩落させて開けるのが目的のようだ。
魔法がある世界だと、こうやって門を越えるんだな。
上から敵の矢や石が降り注ぐも、大きな木の板のような者を頭上に掲げ、何とか敵の攻撃を防いでいる。
あまり多くの魔力は無いのか、すぐにこちらに戻ってくる兵士。
兵士が土木をやる事も多いので、【土魔法】を使える者は多いのだろうか?
色々な場所から攻撃を仕掛けているものの、なかなか簡単には石壁も崩れない。
どうやら地中奥深くまで石を積んであるらしく、多少の穴を空けただけでは崩落までいかないようだ。
石壁を作る際にも考えられて作られているらしい。
そんな攻防を繰り返していると、第二王子やウェロヌがこちらにやって来た。
いったい何の用だ?
「すまぬ。思っている以上に石が地中深くまで積んであるらしく、簡単には突破出来そうもない。早めに離脱させているので死者は出ておらぬが、このままではマズいのだ。何か良い方法はないだろうか?」
「………もし俺達を使いたいのなら兵士を全て戻してくれ。でないと巻き添えで死ぬ」
「わ、分かった。すぐに全兵士に撤退の合図を送れ! すぐにだ!!」
第二王子がそう命じると打鐘のような物が「ジャン!ジャン!ジャン!ジャン!」と鳴らされ、兵士はすぐさま王都の壁から離れた。
撤退する際は早いんだなーと思ったが、生き残る為には必要な事か。
それはともかくとして味方の兵士が居なくなった事によって被害を出さずに済むようになった。
なので俺達は敵の弓矢が届かないギリギリに立ち、四人で前方に一つの塊を作り出していく。
これは<時空の狭間>で冗談混じりに練習していた【魔術】の一つ。
その名も【ロックバスター】だ。
もちろん元の星のアレをネタ元としている。
この【ロックバスター】は非常に単純で、大きな石の塊を超高速で撃ち出すだけである。
しかしながらヌンさんの計算上、厚さ10メートルの鉄板でもひしゃげて壊れる威力があるとの事。
つまり物理攻撃万歳という超脳筋【魔術】だ。
今回は足元の土を使っているので【アースバスター】となるが、名前は元のままの【ロックバスター】でいいだろう。
それはともかくとして、俺とバステトとハトホルで土を空中に集めていき、それをヌンさんが圧縮して固めていく。
そして弾頭の形に固まったら、今度は回転を始める。
凄まじい速さで回転をさせながら、俺達は弓を引き絞るかのようにエネルギーである魔力を溜めていく。
それが臨界になりかけた時、タイミングを合わせる為の声を掛けた。
「それじゃあ、行くぞ、三人とも! 【ロックバスター】発射まで、5、4、3、2、1、ゼロ!!!」
ゼロの掛け声の瞬間発射された弾頭は、音を置き去りにして飛翔した。
回転が加えられた土の塊は、空気の壁を切り裂きながら衝撃波を発しつつ飛翔。
崩れる事無く鉄の格子の門に衝突し、紙屑のように引き裂いた。
そのまま鉄の格子の門を突き破り破壊した弾頭は、王都の東門通りを直進。
途中に居た<アンズル>の全てを挽き肉にしながらも飛び続けていく。
尚、通りの建物も崩壊中だ。
そして王城にぶつかると、そのまま一階を突き抜けて西の大通りへ。
直進し続けた弾頭は西の鉄の格子門も破壊。
そのまま王都の西へと突き抜けて行った。
「………うわぁ、コレは駄目だ。まさかヌンさんの計算以上とは思わんかった。絶対に厚さ10メートルの鉄板なんて目じゃないだろ」
『そうでもありません。そもそも【ロックバスター】をイシスが思いつき練習を開始したのは、ハトホルが加入する前です。更には<魔力増強薬Ⅱ>を三度飲む前。ですから前回の計算は意味を為しません』
「いや、前の計算で厚さ10メートルの鉄板だったのかよ!?」
これは封印するべき【魔術】だな。
うん、そうしよう。
………ちなみに、あの威力の6割はヌンさんの所為だったりする。
だって一番悪ノリしてたし。
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