0203・マヌケと死霊術士の処遇
Side:イシス
嬉しそうに拷問していた奴らの行動も終わり、吐き出す事が出来るだけの情報を吐き出させたようだ。
尚、それを見ていた<死霊術士>どもは震え上がっている。
自分達も同じ事をされるんじゃないかと思っているんだろう。
「う、うう……」
「第二王子殿下。流石にこれ以上の情報は持っておらぬようでございますな。流石にここまでされてでも守る情報などございますまい」
「う、うむ……。で、あろうな。そこまで大した情報はなかったが、この者がマヌケである事は分かった。いや、公爵家の分家である事もだがな」
「この者の申す通り、己が活躍して公爵の覚えを良くしようと思っただけのようで。それにしてもマヌケな結果になっておりますが、如何なさいますか?」
「この者の処遇か? …………よし、帰そう。このままここで殺しても面倒であるし、その事を利用されるだけだ。どうせ帰してもこの者達に先など一切無いし、公爵にも役立たずやマヌケ扱いされよう。わざわざこちらが手を下してやるまでも無い」
「そうですな。既に終わっておる奴らですし、帰してやりましょう。貴族としても、公爵家の分家とやらとしても終わり。ハッキリいえば無能の烙印を押されました」
「うう……」
「ではこやつが乗ってきた<サルグォ>に乗せて、ケツを蹴ってやりましょうか。他の<死霊術士>は如何なさいます?」
「殺せ。敵の戦力を生かしておく意味は無い。このマヌケは帰しても役に立たんが、そやつらは敵の戦力として戻ってくる可能性がある。で、ある以上は容赦をするな」
「「「「「ハッ!」」」」」
将軍や側近からの厳しいテストだな。
あのマヌケに対してどう裁くか、そして<死霊術士>達をどう裁くか。
今回は及第点っぽいが、これからああいうのが続くんだろう。
王子というのも大変だ。
そしてそのテストで赤点をとりまくったのが、マヌケな王太子か。
見捨てられるとはそういう事だし、見捨てられたという事はどこかの時点で〝病死〟するって事だ。
上の立場の者はそれだけ重い責任を背負う。
当然の事だな。
特に王など国家そのものでもあるんだ、無能が上に立てるほど甘い立場じゃない。
国を傾ける訳にはいかないのだから、無能は容赦なく歴史の闇に消える事になる。
それも天下万民の為だ。
俺が元の星で生きていた頃もそうだが、少数派は切り捨てられる事もある。
だが古い時代においても、王族という少数派が消える事はあるんだよ。
多数の為に少数が消える。
王族なんて贅沢をしてるだけと思われがちだが、贅沢をしている〝だけ〟なら消されるのが王族というものだ。
本当に贅沢をしているだけで許されるのは、むしろ放蕩貴族や豪商だろう。
そっちが本当に腐っている奴らだというのは、歴史的にもよくある事でしかない。
革命をしたところで国が良くなったかと言えば、良くなんてなっていないのが現実だ。
むしろ長く続いた伝統と文化である王族を失っただけ。
国としての格は落ちている。
まあ、元の星の事はどうでもいい、破壊して手に入るものなんて所詮はその程度だ。
重厚な歴史と伝統は薄っぺらくなり、コルシカ島のよく分からんヤツが皇帝を名乗る。
欧州の重厚な歴史の国かと思ったら、やっている事は中原と一緒。
情けないと思わんのかねえ?
平民だったヤツが皇帝を名乗って様々な事を欧州中にやらかした。
平民が皇帝な時点で、結局は易姓革命じゃないか。
唯の王朝交代、もしくは乗っ取りだ。
市民革命だった筈が易姓革命になってるんだから笑うしかないだろう。
せめて共和制の国なら分かるんだが、あの時代には無理だしな。
大統領や首相じゃなくて皇帝な時点で、俺は市民革命と呼べないと思う。
そもそも煽ったのは貴族だし、操られたのが平民だ。
果たしてそれは本当に〝市民〟革命と言えるのか?
おっと、また横道に逸れた。
それはともかく既に<死霊術士>どもは処刑されたようだ。
特に<アンズル>の死体を操るヤツが居たからな、生かしておく訳にはいかない。
確実に殺しておく必要がある。
<ソーリャ>のように確実に葬儀を行う為に遺体を連れ帰るなら構わないが、ゼンス王国の奴らはアンデッドを戦力化するだけだ。
むしろそのようには使わない<ソーリャ>にしか使わせたら駄目だろう。
彼らは未だに神罰がいつまた落ちるか分からないという恐怖がある。
だからこそ【死霊術】を悪用しないが、ゼンス王国の奴らは平気で悪用するからな。
………だから〝野望〟なのか。
ゼンス王国の奴らは食い物がどうとかゴチャゴチャ言うが、とどのつまり己らの欲だ。
第二王子も言っていた、いつの間にか己らの欲を救国の策だと思い込んでいたと。
だから〝野望の打倒〟なんだな。今分かったわ。
つまり俺達のやるべき事は、ゼンス王国の崩壊だ。
今のゼンス王国が侵略を諦めない以上は、国そのものを打倒するしかない。
事ここに至っても尚、アンデッドを嗾けてどうにかしようとするぐらいだ。
ゼンス王国の連中に反省など無いし、未だに諦めていないと思われる。
そもそもここの土地が悪いのは神罰の所為だし、それの文句は祖先に言うべき事でしかない。
何故そんな所に住みつき国を興したんだと。
その事を<ソーリャ>から聞き出せば良かったものの……いや、違うか。
<コーヴァ>は言っていた、連中は逃げるという選択は出来なかったんだろうと。
国が無くなるとは自分の地位を失うという事。
それに耐えられないという訳か。
しかしその結果が【死霊術】での他国の侵略なんだから笑うしかない。
綺麗なお題目を掲げておきながら、やっている事は欲望塗れの事。
あまつさえ、それを贅沢している連中が掲げているんだから滑稽だとしか思わない。
そしてその結果が王都まで攻め込まれるという体たらくだ。
もはや完全に喜劇にしかなっていないな。
『本当にそうですね。ここまで見事にバカバカしい結果になる事はなかなか無いでしょう。もちろん<時空の旅人>が関わっているのですから当たり前ですが、この星の後世にまで語り継がれるでしょうね。そのマヌケっぷりは』
『そう考えると、それこそがゼンス王国に対する罰でしょうか? 未来においてまで自分達が笑われる存在になるという事。そこまでが罰なら分からなくもないですし』
「あんたら容赦ねえ事を考えるなぁ。まあゼンス王国の奴らは確かにバカだとは思うけどよ。それでも後世にまで笑いものにされるのかよ……」
「逆だ、逆。後世にまで笑いものにされるから意味がある。このゼンス王国と同じ事をさせない為に、マヌケな連中として残さなきゃならないんだ。アンデッドを利用しようとしたら、ゼンス王国のような国か? とバカにされるようにしなきゃいけない」
「成る程な。確かにそれなら【死霊術】に対する多少の抑止力になるだろう。広まれば広まるほど、同じ事をすれば後世においても笑われる結果となり、国の格は落ちるだろうしな。後世の国は同じ事をし辛くなる」
「王侯貴族ほど高いプライドがあるからね。そのプライドを汚されるような事は難しいでしょう。確かに多少とはいえ抑止力になりそうだわ。ただ簡単に手の平を引っ繰り返すのも王侯貴族だから、本当に多少でしかないでしょうけど」
「それでも、噂だけで多少の抑止力になるなら十分なような気も……」
「それはそうね。大したお金も必要なく使える手ではあるわ。根本的な抑止力は、アンデッドに対する特効武器を持つ事でしょうね。イシスが持つ聖銀みたいな物だけど……」
「無理だな。お前達も知っているだろうが、作り方が不明だ。浄銀は銀のみ。清浄銀は銀と各種素材。そして聖銀は銀とダンジョン9階の素材だ。ただ、おそらくどれも魔力を必要とする筈」
「その素材が分からないのよねえ。名前は書き写させてもらったけど……。清浄銀は聞いた事も無い素材が多いわ。だから狙うなら聖銀ね」
「俺としては、ダンジョン9階に行かなきゃ手に入らなかった時点で驚きだがな。今までは手に入らなかったし」
「ああ、うん。〝今まで〟はね」
俺達が別の星も知っている事を、こいつらも知っているからな。
前の星には聖銀に関する素材は無かったんだよ。
もしかしたら在ったのかもしれないが、俺達には見つけられなかった。
こっちではダンジョンにあるから、無限に手に入れられるしな。
となるとダンジョンで手に入れた方がいい。




