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0202・ゼンス王国の王都に到着




 Side:イシス



 俺達は更に西へと進み、ついにゼンス王国の王都までやってきた。

 ここまでほぼ素通りで来れた最大の理由は、通った村で聞いた「家族が帰ってこない」というものだ。


 民兵とする為に連れて行かれ、そして「未だに息子が帰って来ない」と言う村人を見て、俺達も含めて全員が悟った。

 この国はもう駄目だと。


 他国が攻めて来ても抗えない程に民を連れて行き、兵と仕立て上げて戦わせたんだ。

 そしてその多くは戦死している。

 しかし問題の本質はそこじゃない、国が維持できないほどに連れて行った事だ。


 おそらく北にも南にも同じ事をしたんだろう。

 だからこそ打ち破られたら抵抗が出来ない。

 既に平民でさえ数が減り、農業従事者も足りているかどうか不明だ。

 【死霊術】はあるが<死霊術士>の大半は殺されている。


 つまり三国に勝てなかった時点で終わりと言わざるを得ず、挽回の方法は存在しない。

 なぜなら戦う為の兵士が足りず、それどころか若い働き手が足りない有様だ。

 既に国として終焉に向かっている。


 そんな事を王都の前での会議中に語ると、周りの連中も抵抗の無さに何とも言えない顔をしつつ口を開く。



 「そうだな。そなたの言う通り、この国はやるべき事を間違えたのだ。他国の領土さえ奪えばどうにかなる。己の欲を救国の策だと思い込んだのが間違いの始まりだろう」


 「途中の村の村人も、他国の土地を奪えば助かると言われ連れて行かれた。そう言っておりましたからな。しかし三国は勝った。これではもう逆転の芽はありません」


 「あってもらっても困るが、何を考えてこんな愚かな事を始めたのやら。どれだけ言い訳をしようが、敗者は負けた責をとらねばならん。この国の公爵が主導しておったそうだが、公爵は責任をとれるのか?」


 「とれなかろうが、とらせねばなりませぬ。我が国も多くの兵士が亡くなりました。それを放っておく事など出来ませぬ。ここまで来た以上はゼンス王国に責任を追及せねばなりますまい」


 「そうね。元々ゼンス王国が攻めて来たからこうなったのだし、それまでにも散々我が国で破壊活動をしてくれてるんだもの。それも合わせて知識を貰わないとね、割に合わないわ」


 「うむ。亡くなった者達の為にも、勝ったうえで貰うべきものを貰っていくか。それ、うん? ……何者かが来ておるが、来たのは五騎だけか」



 そちらの方を向くと、確かにこちらに向かってくる五騎の者達が見える。

 俺達は緊張感を持って構え、いつでも動く事が出来るように武器を抜く。

 俺は既に<聖銀の杭>を取り出して構えながら待っている。


 <サルグォ>に乗った騎士っぽいのが乗ったまま話し掛けてきたが、こいつらは礼儀も知らんらしいな。

 降りもしないとは。



 「そなたらはオムテス王国の軍か? だとすれば愚かなものよな。わざわざ質になりに来るとは……」


 「ふむ。私を前にして<サルグォ>を降りようともせん蛮族に言われてもな? 何も響かんぞ」


 「ふん! ここで死ぬような下賎な者が、ようも偉そうに言うものだ! やれい!!」


 「「「「ハッ!!」」」」



 他の<サルグォ>に乗っていた連中が【収納魔法】から何かを出したが、それは冒涜的に歪なキメラだった。


 ゴブリンの上半身が背中から生えているクェルベアーや、鎌が六椀もあるカマキリの魔物。

 背中から二つも狼頭が生えている狼の魔物に、四本の腕を持つグレイ……? 人型か!?



 「貴様ら正気か!? 同じ<アンズル>をアンデッドとして操るなど何を考えている!!」


 「ふはははははは! そんな事に驚くとは愚かよな。使えるならば何でも使えば良かろう。死体など幾らでも転がっておるではないか!」


 「こやつら……あまりにも狂っているし、まともではない! これがゼンス王国か!!」


 「狂っている? はははははははは……! 食う物も碌に無く、飢えに苦しめば貴様らも分かるわ!! 腹いっぱいに食えるような連中が、我らを狂っているなどとホザくな!!!」


 「「「「「「………」」」」」」


 「ふん! 何も知らぬ愚か者どもめが! 精々我らの役に立つがいい!!」


 「お前らさっさと動けよー。何を勘違いしているのか知らんが、こいつはこの国の中でも贅沢をしてきた側だぞ? 偉そうに言う資格など全く無い。あるのは庶民だけだ。こいつはそれを都合よく利用しているに過ぎん」


 「ハッ! どこの愚民か知らぬが、おま「ドスドス!」ウギャァァァァァァァァァ!!?!?!!」



 俺は面倒になったので【ヒートバレット】を両足に撃ち込み逃げられないようにすると、<聖銀の杭>を呪いのアンデッドに投げつけていく。

 既に呪いのアンデッド用に<聖銀の杭>は量産してあったんだよ。


 なので一体一体に対して一本すつ投擲し、俺は敵を弱めていく。

 何故か今までよりも呪いが弱いらしく、<聖銀の杭>が刺さった時点でアンデッドは動きを止めた。

 理由は分からないものの、弱いなら楽で助かるというところだ。


 <死霊術士>に関しては既にウェロヌ達が<サルグォ>から引き摺り倒しており、現在兵士達と一緒になってボッコボコにしている。

 殺されても文句は言えないんだから、あのまま放っておくのが最良だな。



 「第二王子、浄化が完了した。既にこいつらは死体なので安全だ。だからそいつの尋問か拷問を始めた方がいい」



 俺は<聖銀の杭>をアンデッドだった死体から抜きつつ、固まっている第二王子に話しかけた。

 俺が問答無用できなり攻撃したからビックリしたんだろう、まだ固まってるぞ。



 「あ、ああ……。そうだな、あの者を尋問せねばならん。……うむ! 私は大丈夫だ」



 大丈夫と言っている時点で大丈夫じゃない事に気付いていないな。

 まあ、いちいちツッコむ気も無いから放置でいいだろう。

 将軍のオッサンは既に縄で縛って逃がさないようにしてるし。



 「第二王子殿下、拷問の用意が出来ましてございます。早速はじめましょうぞ!」


 「う、うむ。拷問な、拷問……」


 「我が国の第二王子殿下を愚弄したのです。徹底的にやらねば舐められますからなぁ。苦しみに苦しみ抜いても己が悪いで終わる話ですぞ」


 「そうそう。だからこそ国同士で礼儀は忘れないようにするもんだ。侮辱すればそういう目に遭うと理解させなきゃならん。そもそもそいつに礼儀が無いのはゼンス王国の所為だからな。徹底的に教えてやればいい」


 「うむうむ。こういう愚か者には後悔と慟哭と絶望を味合わせねばなりませぬ。そうでなければ陛下も含め、王族の方々がこれからも舐められてしまいます。第二王子殿下お一人だけの事ではありませんぞ?」


 「そうか………確かにそうだな。私は王族なのだ。私が舐められるという事は、私を派遣した陛下が舐められるという事。そのような事があってはならぬ。この者が何故なにゆえこのような事をしたかを吐かせるぞ!」


 「「「「「ハッ!!」」」」」



 側近どもと将軍が第二王子の命に嬉しそうに返事をしている。

 あいつら舐められた所為で激怒してたんだろうなぁ。

 ま、あんな態度で来たバカが全て悪いんだから放っておけばいい。


 それよりもさっさとキメラを穴に入れて焼いてしまおう。

 こんな死体があったって邪魔なだけだ。


 俺はヌン達と共に穴を掘ってキメラを放り込み、【魔術】で熱量を上げて焼いていく。

 しっかしマッドサイエンティストが大量に居る国だと改めて思う。

 切り裂いて改造する事に躊躇ちゅうちょも無いんだろう、こういう事をする奴らは。


 言葉は悪いし元の星の奴らに怒られるかもしれないが、こいつらきっとプラモデルのような気分でこねくり回したんだと思う。

 そうとしか思えない異常さだ。

 生命を冒涜しているという自覚が無いんだと改めて分かる。


 体の中の呪いの元も関係なく燃やしていくが、それを見て喚き散らす<死霊術士>ども。

 言っている事が「傑作が!」とか「勿体ない」という時点で、俺とは相容れない連中だ。


 ま、そんな事を言う度にボコボコにされているんだが、同時に別の方向からは悲鳴が聞こえてきた。

 間違いなく拷問の結果だが、第二王子はともかく将軍と側近は何で嬉しそうなんだよ。


 お前らマッドサイエンティストとは別の意味でこええよ!


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