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0200・防衛の終了と西進




 Side:イシス



 砦は無事に守れたが結構な兵士が亡くなった。

 これは仕方のない事とも言える。

 何故なら向こうがアンデッドを使って攻めてくるからだ。

 本当の意味での死兵なのだから犠牲者が出るのは諦めるしかない。


 ただ当たり前ではあるものの、そんな事で悲しんでいる暇なんてなく、多くの兵士は片付けと補修に明け暮れている。

 といっても片付けが殆どで、土壁の補修は俺達がやっている有様だ。


 魔法が使える者が多くないのと俺達がやった方が手っ取り早い事もあり、壊れた土壁を直して少々強化しておいた。

 それぐらいならやったところで問題は無いだろう。

 それに強化したのも補修した所だけだし。


 それが終わった後は五日ほど暇をしていたのだが、オムテス王国の中央から手紙が届いたようで、俺達はまたもや会議室に集合していた。



 「さて、全員が集まったようなので会議を始めるが……。殿下」


 「うむ……。皆、中央から文が来たのだが、そこにはこう書かれていた。西へと進みゼンス王国の中枢を目指せと。ただし村や町を制圧する必要は無いとの事だ」


 「どういう事でしょう? ゼンス王国の王都を目指せという事でしょうけど、途中の村や町を制圧する必要が無いとは意味が分かりません。後方から襲われたらどうするつもりですか?」


 「我が国もそれぞれの国に派遣している者が居る。それらの者からの報告によれば、モルドン王国もヤンマ王国も中央を目指して進軍しているようなのだ。つまりここでとどめを刺そうという事だな」


 「北と南が、ですか……? 何故でしょう?」


 「そこまでは分からんよ。少なくともモルドン王国とヤンマ王国は止まる気が無いという事だけだ。もしかしたら二国は制圧して奪っていく事に味を占めたのかもしれん」


 「モルドン王国がやっておりますからな。それをヤンマ王国も知っておりますでしょうし、同じ事をしている可能性は無きにしもあらず。というところでしょう」


 「特に現場の者がどういう者かによって、やらかす可能性はあるでしょうね。そしてゼンス王国の中枢を打ち倒した時に我が国が関わっていなければ……」


 「戦後、何も言う事など出来なくなる。発言権の確保の為にも急げという事であろう。中央が何故そんな事を言って来たかは分かる。発言権が無いなど話にならんからな」


 「そうでございますな。おそらくはモルドンが最初に突っ走ったのでしょうが……今は止まれなくなっておるのかもしれません。もしくは知識を手に入れるべく動いておるのかも」


 「ゼンス王国は知識の国。何かしらの知識を求めて動いている可能性はあるわね。それが【死霊術】じゃなければいいんだけど……」


 「もし他国も【死霊術】を得たら、今度はその国が侵略を始めかねんぞ。力があれば侵略を考えるのは世の常だ。周辺にバラ撒かれたら碌な事にならん。更に犯罪組織などに流れてみろ、最悪の結果になる」


 「少し言わせてもらうが、いずれそうなるぞ? 良い悪いは別にして、ゼンス王国が崩壊すれば必ず流出する。そういうのは闇に流れるというか、闇の連中が高値で買うだろう。そして売る<死霊術士>は必ず出る。これは避けられん」



 俺が横から口を挟むと一斉に見てくるが、多くは「いちいち、でしゃばるな」といった感じか。

 ただしウェロヌ達は俺の事を知っているので渋い表情をしている。

 流出するのは、ほぼ確実だと悟ったんだろう。



 「それは確実か?」


 「ほぼ確実だ。そもそも全ての<死霊術士>を殺す事など出来やしない。【死霊術】も使わず農民のフリをされた時、果たして見分ける事は可能なのか? 当然そんな事は不可能だ。そしてそういうヤツが金銭に困ったら、絶対に自分の持つ技術を売る。高く買ってくれる連中にな」


 「それは………あるでしょうね。しかも結構高い確率で」


 「全ての<死霊術士>が戦いたい訳ではないからか。当然ながら国が負けそうになれば逃げる者も出ようし、<死霊術士>だと何をされるか分からんから農民のフリぐらいするだろう。そしてこちらは見破る事ができん」


 「そうだな。見た目だけで<死霊術士>だと見破るのは不可能だ。となるとモルドン王国もヤンマ王国も【死霊術】を持つと考えた方が良い。……やはり早急にアンデッドを何とかする方法を考えねばならんな」


 「ですな。ゼンス王国でなくとも我が国の土地を狙ってくる国はありましょう。我が国は農業的に豊かですから」


 「話を戻すが、皆にも言い渡した通りに西へと行く。道中の村や町は抵抗せぬなら攻めたりはせん。我らはゼンス王国の王都まで一気に行って叩く事になろう。そこまでに何があるかは分からん。十分に注意して進軍するぞ」


 「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」



 会議はそれで終わったが、なんだかんだと言って良い方向に向かってるな。

 俺の目的と合致してるし、このまま流れに任せて野望を潰すところまで行きたいもんだ。


 しっかし、北のモルドン王国と南のヤンマ王国は大丈夫か?

 呪いのアンデッドを使われたら相当の犠牲者が出るぞ。

 ……いや、相当の犠牲者が出たから止まらなくなったのか? 仇討ちとして。


 何だかその可能性がありそうなところが恐いなぁ。

 それだと復讐の連鎖になりかねないし、かなり恐い結果になると思う。

 実際にそこまで行ったら、絶対に土地を手に入れちゃいけない。


 もしそこを手に入れたら、確実に厄介な事になる。

 永遠に怨んでくる連中を下に置くような者だ。

 中枢に入ってきて破壊工作なんぞされたら国が大混乱に陥るぞ。

 それとなく教えておくか、内に入られる厄介さを。


 俺達は宛がわれている部屋に戻り、皆とその話を共有しておいた。

 ヌンも俺の予想に異を唱えなかったので、やはり危険なんだろう。



 『怨みや憎しみを持つ者を内に入れるのは危険すぎます。必ず国や組織を腐らせ崩壊させる一因になるでしょう。それなら賠償だけ貰って撤退が一番いいに決まっています。それでも怨んでくるでしょうが、内に入れるよりは遥かにマシでしょう』


 『確かに考えてみると危険ねえ。それにそういう怨みはずっと覚えているものだし、子供にも継がせたりするものよ。永遠に無くならない可能性まであるわ』


 『ですね。恐い事ですし、最初から入れないのが一番良いでしょう。入れなければ、お前達が先に攻めて来たんだろうと言い返せますからね。内に入れたら味方になりますから、余計に足を引っ張られるのは分かります』


 『少なくとも、モルドン王国は仕方がないと思いますよ。北の国は略奪しながら進んでいるようですし、それだけ怨まれる事を既にしていますから』


 「それはそうだな。怨まれる事をしている以上は、怨みは全部そっちに持っていってもらうべきだろ。他の国よりも少ない賠償にすると、オムテス王国に対する怨みや憎しみは減るかもな。場合によっては何百年も怨まれる」


 『それは恐いわねえ。とはいえ怨みなんてずーっと残ったりするものだし、仕方ないんでしょう。諦めるしかないわ』



 自分は体験もしていない古い時代の事を持ち出して、延々と怨みを喚き散らす連中とか居たからなぁ。

 そういう連中が居たという記憶があるし、延々と残り続けるんだろう。

 嫌なもんだ。


 そんな話をしつつ俺達は適当に過ごし、この日は準備だけで終わった。

 軍というのは簡単には動けないし、補充があったとはいえ攻める際の兵は3000と決定。

 これは砦に防衛戦力を残しておく為だ。


 そもそも<死霊術士>に結構な数の兵を殺されている為、簡単に補充が効かない事も無いではない。

 オムテス王国の兵は純粋な職業兵士でもあるが屯田兵でもある。

 農業神を信仰している国らしいとは思うがね。


 兵士達が農業で作った物は市場に流れたり他国に売られたりして、軍の給料の一部を支えていたりしている。

 なので職業兵でもやっていけるわけだ。


 ディアンズが言うには、ヤンマ王国なんかは半分以上の兵が戦時採用の平民らしい。

 つまり訓練を殆ど受けていない素人となる。


 それを聞いた時には、思わず「大丈夫か?」と言ってしまった。

 半分以上が平民だと規律を守るのはまず無理だ。

 そういう意味では全然大丈夫じゃない軍だぞ。


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