0199・砦防衛戦 その3
Side:ウェロヌ
「よっしゃ! もらった!!」
「よしっ! こっちは片付いたぞ!」
「なかなか数が多くて大変だが……ハァッ!!」
「【アースボール】! かーらーの、せいっ!」
イシスがくれた<練魔鋼の剣>の御蔭で簡単に切れるから戦えてるけど、無かったら数に押されて殺られてたわね。
正直に言って数が多すぎるのと、それがどんどん雪崩れ込んでくるので捌くのが精一杯。
あの明らかにおかしい呪われたアンデッドも居るんだけど、アイツをどうにかするだけの余力が無い。
既に将軍が第二王子を後方に下げたけど、それでも兵士が相当に殺されながら押し止めているだけ。
呪われたアンデッドを止める事なんて出来ていない。
王宮魔法使い? とっくに全員死んだわ。
あっさりとバサウルのジジイまで含めて食い殺された。
その点では都合が良いんだけど、あれをどうにかしないと意味が無い。
せっかく王宮魔法使いを腐らせていた愚か者が死んだのに、そのついでに第二王子が亡くなったとなれば、バサウルの連中が盛り返してくる可能性がある。
しかも考えうる最悪の場合、王太子が王太子のままになりかねないわ。
王太子が失脚し、バサウルのジジイも死んだ今、これ以上の被害はもう要らないのよ。
バサウル家そのものは追い詰めると面倒になるからね。
叩いた後は忠誠を誓わせるのが一番いい。
しかし第二王子が死ぬと増長したまま下らない事をする恐れがある。
何故なら数代に渡って腐ってるから、それが当たり前になっているヤツが多いのよ。
そいつらは下らないプライドだけで碌でもない事をやらかすでしょう。
実際にジジイの威を借りて好き勝手な事をのたまっていた分家もあるんだしね。
2位貴族家の分家なら10位貴族家の本家よりも上だと思っているのかしら?
ありえないのよ、そんな事は。
王国法にも分家は分家、本家は本家となっている。
つまり本家と分家は別のカテゴリーに分けられているのよ。
1位貴族家であるシャフニア家の分家だって、10位貴族家であるウィーグン家の本家より下なの。
これは明確に決まっている事なのよ。
内心でどう思っていても、シャフニア家の分家はそれを表では出さない。
その分別があるのが分家というもの。
にも関わらずバサウル家の分家ときたら……!
思い出すだけで腹が立つから思い出さないけど、死んで清々したというのが本音よ。
これからは随分と良くなるでしょうね、死んでくれて感謝するわ。
そんな事を考えていたら、あの熊が第二王子に迫っていた。
流石にこれは本当にマズい。
だけど私達はまだアンデッドの処理で手が回らないし、ここからじゃ間に合うかどうか……。
「おおっと! 第二王子の所に呪いのアンデッドが行ってるぞ。これは<死霊術士>がワザとやってんのか、よ!!」
ズドンッ!!!
凄い音がしたけど、いったい何をしたのかしら?
イシスが来たのは声で分かったけど、そっちを向いている余裕が無いのよね。
アンデッドを何とかしないといけないのは事実なんだけど、何をしているのかは見たい。
「皆、一気に浄化してこいつも終わらせる。……それにしてもキモいな。触手が生えているが、コレを生やしたヤツの正気を疑うぞ。まったく」
イシスに激しく同意するけど、私もそっちがどうなってるのか見たいのよ。
あれほどのアンデッドを倒せるって事は、何らかの手段があるからなんでしょ。
教えろとは言わないけれど、代わりに見たいの。
魔法使いとして!
「お前達、よく来てくれた! でなければ助からなかったかもしれぬ!」
「もう少し早ければ良かったのだが、それでも助かったのは助かった。感謝する」
「いちいち文句を言わなきゃならんのか? 俺達が居なければ東から食い破られてたぞ。何故なら東側にも呪いを埋め込まれたアンデッドが来たからな」
「「なにっ!?」」
「既に浄化してきたし、輜重の兵士達が<死霊術士>を始末したから大丈夫だ。どっちにしたところで俺達が居なきゃ大半は食われてた可能性が高い。王宮魔法使いとやらは何をしてるんだ?」
「殆どが食い殺されてしまった。そなたに嫌味を言っておったバサウルのご老人も、喚くだけで何の役にも立たずに食い殺されたわ。あのご老人は魔法を使う事すら無かったのだ」
「王宮魔法使いのトップが魔法も使わずに殺されるとか、また随分と命を張った高度なジョークだな。一世一代の見せ場だったのか?」
「「「「「「「「「「ぷっ……」」」」」」」」」」
戦闘中に笑わせるんじゃないわよ。
一世一代の命を捨てたジョークだと言うのならば笑ってやらない事もないけど、そんな事はあり得ないでしょうに。
周りもそれが分かってるから笑ってるわ。
そう思えば滑稽な死に方ね。
イシスとしては思った事を言ったんでしょうけども。
でも余計にバサウルのジジイの役立たずさが際立っていて良いと思うわ。
兵士達も生き残ったら広めてくれるでしょうしね。
ドスーン!!!
「よーし、これで終わりだ。後はコイツを操っていた<死霊術士>をブチ殺せば終わるんだが、その術士は何処に居る?」
「それは……分からん。向こうの壁が崩されて、そこから侵入してきたのだ。そこからはアンデッドの事でいっぱいで、<死霊術士>の事は考えていなかった」
「そんな混乱を起こして大丈夫かと言いたくなるが、戦いの経験が無いヤツに乱戦は厳しいか」
『そうですね。対応できないのはマイナスでしかありませんが、王族というのはその程度のものでしょう。だからこそ前線に出てきて討ち取られるという事が、歴史上あったわけですしね』
『戦えないのに前に出てくるって……いったい何を考えているのかしら? 戦場は戦えない者が居ていい場所じゃないでしょう。大人しく将軍とかに任せておけばいいんじゃないの?』
そうなのよ、本当は。
とはいえ今回は陛下の考えが反映されているから無理ね。
だから第二王子も前線に、って、コレでラスト!!
「やっと終わったー!! 小物のアンデッドが多すぎでしょうよ。こっちが本隊なんでしょうけど、数が多すぎてウザい!」
「お疲れ様。随分と数が多くて苦労したが、それでも今までに比べれば遥かにマシさ」
「おつかれー。伯母さん、ディアンズの言う通りだぜ? 今までに比べれば格段に楽なんだから、文句を言うのは駄目だろ。それに今回のは相当に力を入れて来てたのは間違い無い」
「お疲れ様。マルロンの言う通り、今回のアンデッドは非常に多かった。奴らはとにかく壁に開けた穴から突入させようとしていたので、こちらに集まってくれたのも良かったと思う」
「確かにな。バラけておかしな動きをされていたら、相当に面倒臭い事になっていた筈だ。それに比べれば数が多いだけで済んだんだから助かったぜ」
「そっちも大変だったようだが、細かいアンデッドの相手をしてくれて助かった。俺達もそこまで手が回らないからな。数という限界もあるわけだし」
「そうね。イシス達の対応限界を超える数の呪われたアンデッドが現れたらマズいわ。それを考えると第二王子殿下の場所も下げる必要があるわね」
「しかし私は総責任者としている。良い悪いに関わり無く、私は前線に居る義務があるのだ。それで死んだら死んだ時だと思うしかない」
「そうは言いますけどねえ……。私達からすれば、バカ王太子が王位に就きかねないのは許容できないんですよ。正直に言って、あのバカが王位に就くと亡国への道まっしぐらですし」
「あまり言いたくはありませんが、そうでありましょう。第二王子殿下は真っ先に粛清されかねませぬ。それは我らとしては許容できかねる事でございます」
「………」
だからこそ陛下もアレを切り捨てる事を決められたんでしょうしね。
ああいうのが王位を継ぐ事はあってはならないのよ。




