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0198・砦防衛戦 その2




 Side:ウェロヌ



 戦闘が始まったけど、多くの敵兵が壁を破壊しようと攻めて来たわ。

 多くの弓兵と王宮魔法使いが何とかしているけれど、ゼンス王国の兵士は決死の覚悟で攻めてきている。

 いったい何が彼らをそこまで動かすのかしら?


 オムテス王国で生まれ育った私には永遠に分からないのかもしれないけど、それでも簡単に死にすぎだとしか思えないわ。

 まるでゾンビの群れみたいに感じるのは、きっと気のせいじゃない。


 そんな戦いが始まってある程度経った頃、ついに敵が満を持して<死霊術士>を投入してきた。

 私達は後ろで報告を聞いているだけなんだけど、壁の御蔭で敵が防げているみたい。

 そこだけは王宮魔法使いに感謝しないでもないわね。


 ここまで早く砦に土壁を築けたのは王宮魔法使いの助力があったから。

 少なくともこの広さの砦の全周囲を土壁で囲もうと思ったら、一ヶ月単位で時間が掛かるわ。

 それを向こうも狙ってたのかしら?


 だからこの砦には壁が無かった?

 ワザと奪わせて後で取り戻す為に壁を作らなかったとしたら……やはりゼンス王国は油断できるような相手じゃないわ。

 土壁が無かったら、完膚無きまでに負けていたかもしれない。


 そう考えていると、突然「ドォン!」という音が聞こえた。

 どうやら何かが壁に当たったようだ。

 おそらくアンデッドか何かを突撃させて、壁を破壊しようとしているんでしょう。

 厄介な事をしてくれるわ。


 壁の近く、もしくは壁に張り付いた状態というのは倒しにくいのよ。

 困った事にアンデッドに張り付かれると厄介極まりない状態になる。

 王宮魔法使いが何とかしてくれればいいけど、駄目なら私達が出るしかないかしらね。



 「報告! 相手のアンデッドは王宮魔法使いの攻撃に寄って動けないようにされていますが、とにかく数が多く苦戦中でございます!」


 「分かった。皆には無理せずに励めと伝えてくれ。ここで無理をしても大事な時に戦えぬでは困るからな」


 「ハッ!」



 伝令の兵士が壁に戻っていくけど、後ろに控えている私達は報告される情報から話し合いをしなきゃならない。



 「王宮魔法使いもいつまで耐えられるか分からないし、イシス達を早めに連れ戻した方が良いと思うわ。そもそもあいつらを遊ばせておく事そのものが間違いよ」


 「何を下らぬ事を言っておるか! 貴様のような木っ端が偉そうに口を出してくるな! 10位らしく路傍の石となっていろ!!」


 「戦場でまで下らぬ見下しは止めてもらいたいですな。バサウル家は味方を敵に回すおつもりか?」


 「ふん! しょせんは7位の小倅こせがれが。調子に乗るな! 貴様らのような者は黙って頭を垂れて付き従っておればよいのだ! しょせんは建国当時に影も形も無かった新興の分際で。何様のつもりだ!」


 「貴様とて建国当時には生まれていまい。貴様の祖先が立派だったのであって、貴様が立派なわけではないのだ。いい加減にしろ」


 「はっ! しょせんは5位の娘の産んだ下賎な王子が。我が娘の産んだ王太子とは立場が違うのだと理解しておけ。文官どもを引き上げさせるぞ」


 「それは良いな、是非頼む。それをしてくれれば民間から文官を登用できるし、邪魔なバサウル家を衰退させる事ができるからな。多少の混乱は目を瞑ると陛下もおっしゃられている。帰ったらすぐに陛下に奏上してくれ」


 「………」



 バカねえ、この老害。

 そもそも何処の家の娘であろうと陛下の御子を産んだ以上、その子は王族なのよ。

 お前よりも立場は上なんだけど、腐った老害には理解できないようね。


 ここに第二王子が派遣されている意味も理解できないのかしら?

 ……いえ、この老害の事だもの、理解していて必死に第二王子に圧力を掛けようとしているのね。

 お前の治世になったら文官を引き上げるぞ、って。


 そして第二王子は「どうぞどうぞ」と言ったと。

 この場合は第二王子の方が強いわねえ。

 そもそも王族なんだから当たり前だけど、王太子が切り捨てられかけているからか、尚の事、強さを発揮しているわ。


 元々からして腹黒だったのに、更にそこに力が加わって磨きが掛かった感じかしら。

 老害が苦虫を噛み潰した顔をしているわ。


 無様ねえ……むしろ第二王子の治世になったらバサウル家は端に追いやられるわよ?



 「それよりも敵のアンデッドをどうにかせねばなりませぬ。王宮魔法使いも〝それなりには〟やっておるようですが、やはり上手くいかぬようですからな」


 「時間が掛かっておるだけであろう! すぐに片付けるわ!!」


 「戦場で時間が掛かるとは致命的なのだが、そんな事もご老体は理解しておられぬのか? 王城に戻ったら後進に道を譲られると宜しかろう」


 「なんだと!?」


 「どうやらご老体は自分から王族に喧嘩を売ったという事も忘れたらしい。耄碌もうろくはしたくないものだな。こうなってしまうとは」


 「ぬぐぐぐぐぐ………」



 あーあー、完全に第二王子の掌の上じゃない。

 どうせ下らないプライドで言って来たのだと見切られ、大した反撃も出来ずにやりこめられた。

 周りで見ていた者達は第二王子が頼もしいと思ったでしょうね。


 そこまで考えて行動したのならバサウル家は立派なんだけど、こいつらにそれは無い。

 かつては忠誠があったんでしょうけど、今は建国時から残る唯一の貴族家である事を偉そうに言うだけに成り下がった。


 残念ながら、それがバサウル家のここ数代の当主なのよ。

 でなければ王族からまで嫌われるなんて事は無いし、あり得ないわ。


 ズドォン!!!



 「「「「「うわぁーーーー!!!」」」」」


 「あれは……アレがアンデッドだと!? なんだあの奇怪なものは? あまりにも気持ち悪いし、何がどうなっておるのだ」



 第二王子が気持ち悪いというのも分かる。

 目の前にはクェルベアーが居るんだけど、普通のに比べて二回り以上大きい。

 そのうえ体からおかしなものが出ている。


 右肩からは狼の顔が生えていて、左肩からは猪の顔。

 さらに左右の腰からカマキリの腕と鎌が生えていて、背中からはワームのようなのが生えてウネウネしてる。


 色々な生き物を混ぜ合わせたように見えるって事は、これがイシスの言っていた呪いのアンデッドの動く姿ね。

 確か王宮魔法使いに渡した筈だけど、こいつら役に立つのかしら?



 「あ、あれは呪いのアンデッド! 何故ワシが居る所にアレが出てくるのだ!! 早く、早くお前達で倒せ!!」


 「「「「「わ、我らがですか!?」」」」」


 「貴様らしか居らんであろうが! さっさとしろ!!!」


 「「「「「ハッ!」」」」」



 可哀想ではあるけれど、それでも王宮魔法使いだからね。

 高給貰ってる以上はしっかり働いてもらわなきゃ困るのよ。

 私達は雪崩れ込んできたアンデッドの方に行きましょ。



 「私達は雪崩れ込んできたアンデッドの方に行くわよ。アレも放っておいたら兵士が食われてしまうわ。ディアンズ、マルロン。前をお願いね」


 「任せたまえ」 「ああ、任せろ!」


 「私も援護をするが、マルロン。突出しないようにな」


 「分かってるさ、範囲が大事だって事はな」



 イシスがディアンズに持たせてくれた<聖銀のスカラベ>は一定の範囲にしか効果が無いらしいのよね。

 それでも結構広いみたいだけどさ。


 マルロン達が渡された後ミューデラが持っていたらしいんだけど、マルロンが突出した際に効果範囲から出てしまったらしいわ。

 おかげでアンデッドに攻められて傷を負うところだったと言っていた。


 私も効果範囲から出ないようにしなきゃね。

 でないと噛まれて病気になって死亡しかねないし、恋人が出来たんだから死んでも死にきれないわ。


 せめて数人の子供を産むまでは生きないといけないし、子供を産んだら育つのを見るまで死ねない。

 という事で、今までの私と違って今の私の命は安くないのよ。


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