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0163・蜂蜜の売り先




 Side:イシス



 蜂の巣を片付けたのも、これで12個目だ。

 流石にそろそろ帰る時間の可能性が高い。

 俺達の事を見ていた奴らも居たが、見ていただけで俺達に関わってくる事はなかった。

 正直に言って普通はそうだろうと思う。


 俺達は何度も<時空の狭間>と往復して、11個の蜂の巣を<物品作製装置>に突っ込んでいる。

 ちなみに<魔力増強薬Ⅱ>は三回までしか効かなかった。

 四回目は効果が無く、そこで終了となったんだ。


 それでも<魔力増強薬>で魔力を限界まで上げた頃の、大凡おおよそで六倍近くまで魔力は上昇している。

 流石は<魔力増強薬Ⅱ>だと思うが、Ⅲは未だにウィンドウの一覧には無い。


 おそらくここまで来ると、そう簡単には作製できない物となるんだろう。

 俺達も急いでいる訳でもないので、今のところはⅢを作製したいという思いも無い。

 大きく増えた魔力を上手く扱う練習が先であり、今は増やす事を考えていないからだ。


 そんな事を考えていたら切り分け終わったので、そのまま蜂の巣を持って帰る。

 それなりに目撃されている筈なので、一つぐらい持って帰って依頼を熟しておかないと怪しまれてしまうからな。


 バステトもハトホルも言いたい事があるみたいだが、俺としては言い訳の為の巣一つくらい、仕方ないと諦めてほしいと思っている。

 酒の原料だと分かった時の食い付きが、ちょっと強すぎないか? お二人さんよ。


 それはともかく、俺達がさっさとダンジョンを脱出すると思っていた通りに夕方だった。

 夕日を浴びながら開拓者ギルドへと急ぎ、俺達は依頼を確認して受付に話す。



 「ダンジョンから蜂の巣を採ってきたんだが、依頼のアレは何処に売ればいいんだ? 売り先というか持って行く先が書かれていないんだが……」


 「蜂蜜であれば全てチャルタンの大手である<コーヴァー>さんのお店で買い取って貰えますよ。ただし、ある程度の量が無ければ名を落とすだけなので気をつけて下さい」


 「うん……? まあ、分かった。とりあえず、その<コーヴァー>氏の店の場所を教えてほしい」


 「えっ? 知らないんですか?」


 「知らないから聞いているんだが?」


 「はあ……分かりました」



 周りから興味深そうな視線が飛んできたので、もしかして蜂蜜を持って帰ってくる奴らって少ないのか?

 確かにあの蜂に追い掛け回されるともなれば、そう簡単に持って帰ってくるのも難しいだろうとは思う。


 俺は受付嬢から聞いた店へと移動し、そこで店員に事情を話す。

 すると、夕方なので買い取りはしていないとの事。

 ならいいかと思い、俺は店員に挨拶して宿へと戻った。


 宿の部屋へと戻って鍵を掛けた俺は、早速<時空の狭間>へと戻って食事にする。

 蜂蜜と肉醤を混ぜて塗った照り焼き肉に、大麦を使った麦飯を用意。

 この為にわざわざ茶碗と箸を作ったくらいだ。


 そして麦飯は十二分に食べられる物だった。

 何だか久しぶりにまともな食事をしている気がするのは、やはりちゃんとした主食を食べているからだろう。

 それがたとえ麦飯であっても、俺は猛烈に納得している。


 何と言うか、やはりパンばっかりじゃ納得できないんだと分かるんだ。

 粒状の何かを食わないと納得できない民族の血なんだろうと、改めてこの食事で理解できた。

 今の納得具合はそういうものとしか思えない。


 そんな久しぶりに納得できる食事を終え、俺達は訓練場で増えた魔力を緻密に制御する訓練を開始。

 集中して薄くし細かく制御する。


 言葉にすれば簡単だが、魔力の総量が劇的に増えているので、いつもの感覚と違い過ぎて苦戦中だ。

 特に魔力を薄くするのは索敵の面で絶対に出来なければいけない事であり、だからこそ一切手は抜けない。


 必死に特訓をし、ヌンが納得するまでの訓練を終えたら<物品作製装置>の部屋へ。

 今日はリンゴを使ったシードルにする。

 相変わらず指定してすぐに出来るので、それをアイテムバッグに入れて宿へと戻った。


 その後、宿の部屋で適当に飲んでから眠る。

 どうやらバステトとハトホルはシードルも気に入ったらしい。

 それにしても、昨日と同じくあっさりと寝たようだな。

 酒は好きだが弱いのだろうか?


 動物には良くないと聞くが、二人は魔物だしな。

 ヌンが何も言わないって事は大丈夫なんだと思うんだが……。


 ま、考えていても仕方ないので、さっさと寝るか。

 おやすみー。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 次の日の朝。

 <時空の狭間>で食事をした後、宿を出て昨日行った<コーヴァー>の店へと行く。

 朝も早くから開いており、昨日と同じ店員が居たので売りにきた事を伝える。


 すると、明らかに嫌そうな顔をした後、渋々奥から誰かを呼んで来た。

 何故か見た目は盗賊と同じような装備をしている奴らだが、どういう事だ?



 「おめえが店に迷惑を掛けてるってヤツか? ここが<コーヴァー>さんの店だって分かったうえでやってんだろうなぁ!」


 「何を言ってるんだ? 俺は蜂蜜を売りに来ただけだぞ? 迷惑など掛けていない。いったい何を勘違いしている?」


 「はぁ……てめぇみてーなのが来る事そのものが、迷惑だって言ってるのが分かんねえのか!!」



 そいつは右拳で俺を殴りつけにきたが、俺はそれをあっさりと手の平で受け止めて握る。

 徐々に強くしていくと、目の前の盗賊<アンズル>は悲鳴を上げ始めた。



 「アダダダダダダ、てめえ! さっさと離しやがれ!! クソッ!! 離せっつってんだろうが!!!」


 「喧嘩を売ってきたのはお前だろうが、アホか。自分で喧嘩を売ってきていおいて、何を情けない事を言ってやがる」


 「クソッ! てめぇら、やっちまえ!!」


 「「「「「おう!!」」」」」



 後ろにいた盗賊連中が剣を抜いたので、俺は薙刀で相手をしてやる。

 ちなみにヌンさんは武器を持つ必要も無いようで、投げ飛ばし始めた。

 地面が凶器って事だろうけど、相変わらず容赦が無い。


 俺は柄で剣を弾き、相手の頭を殴り飛ばす。

 そうして叩きのめすと、奥から黒髪の人間っぽい姿の者が現れた。

 ただし違うのは角が頭に生えている事だ。

 もしかしてアレが<ソーリャ>か?



 「私の店の前で暴れるなど、貴方は兵士に突き出される覚悟が出来ているのですか?」


 「それ以前に俺は蜂蜜を売りに来ただけだ。昨日ギルドの受付嬢に聞いたら、蜂蜜を売るのはこの店だと聞いてな。で、店員に聞いたら夕方は買取をしていないと言った。で、改めて今日来たらコレだ」


 「なんですって? ………お前はいったい何をしているのですか?」


 「い、いえ。それは……またいつもの連中だと思い、その……」


 「話も聞かない者など私の店に置いておけないのですが、貴方は理解できていないようですね?」


 「ま、待って下さい! お願いします! もう一度だけ! もう一度だけチャンスを下さい!!」


 「………お客さん。迷惑を掛けられたのは貴方だ。貴方はどう思います?」


 「辞めさせたらいいんじゃないか? あからさまに態度が悪かったし、何度も言って渋々奥へ行ったかと思ったら、こいつらをけしかけてきたからな。店の看板を汚すヤツでしかないぞ? それでもいいなら雇えばいいんじゃないか?」


 「な!?」


 「ふむ、貴方の言う事は最もですね。ではクビで。何処へなりとも行きなさい。おい、そいつを店から除名して放り出せ」


 「「「「「ハッ!」」」」」



 奥から新たに出てきたのは屈強な感じの連中だった。

 店員は必死になってすがろうとしたが、あの<ソーリャ>は完全に無視している。

 商売人としたら当たり前だ。

 自分の看板を汚されたようなものだからな、普通に考えてブチギレ案件だぞ。


 あの店員はそんな事も分かってなかったみたいだが。


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