0158・チャルタンのダンジョン
Side:イシス
ダンジョンに入りネズミを倒した部屋から出ると、更に入り口から右へと進んで行く。
俺達は地図も持っていないので、ここでは一つずつ確認しながら進むしかない。
が、とりあえず一度<時空の狭間>に帰る事にした。
『どうしたのですか、イシス。急に<時空の狭間>に帰ってきましたが』
「いや、ちょっとな。もしかしたら1階層が結構大きいのかもしれないって感じてさ。それで地図を描いておいた方が良いのかと考えて、描く為の物を<物品作製装置>で作ろうかと思ってな」
俺はそうハトホルに答えて<物品作製装置>の部屋に行き、描く為の首から下げるボードに紙、更に鉛筆を作ってアイテムバッグに入れた。
消しゴムは無いが、まあ何とかなるだろう。
「最初は早く描く事を優先し、後で清書をすればいいと思いますよ。何なら私が描きましょうか? さして難しい事ではありませんし」
「すまん、ヌン。頼む。俺は正直に言って、綺麗に描ける自信が無い。そもそも地図なんて描く事は無いし」
元の星の世に、いったい何人地図を描く人が居るんだって話だ。
それを考えれば地図を描く事は凄く珍しい事だと分かる。
地図を見る人は多いけど、地図を描く人は殆ど居ない。
それが当たり前だ。
作製するべき物を作り終えたので、俺達は惑星へと戻る。
当たり前だがダンジョン内に戻れたので、本当に何でもありなのがよく分かるな。
『ダンジョン内にさえ戻れるというのが驚きだが、それはもう見ない事にして、さっさと進もうか。当たり前に来ている連中は2階への階段の場所を知っているんだろうが、俺達は知らないからな』
『ええ。この1階をくまなく調べていくしかないでしょうね。とにかく頑張って調べていきましょう』
その後は色々と動き回りながら調べて行き、このダンジョンが非常に面倒臭い事が判明した。
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□■D■□□□□■■■□□□□□□■EF
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A
□:通路
■:部屋
A:入り口
B:青い石
C:緑の石
D:赤い鍵
E:赤い鍵付き扉
F:2階への階段
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この地図を見れば一目瞭然かと思うが、マジでゲームかと思ったわ。
青い石と緑の石を持って赤い鍵の場所へと行き、石を嵌められる窪みに嵌めれば赤い鍵が手に入った。
どこの3Dダンジョンゲーだよ。
ちなみに赤い鍵を持っていればEの扉は開けられるのだが、閉まった瞬間に鍵が掛かる仕様だった。
あまりにもあまりで、ふざけ過ぎている気がする。
神が作ったのか地上の誰かが作ったのかは知らないが、ここまでゲームに寄せる必要があったか?
とにかく赤い鍵は大事に持っておき、俺達は2階へと下りる。
すると、今度は木々が沢山ある階になっており、その匂いでバステトが目を覚ました。
『ん……? ここどこ? 森、にしては木々が薄いわね』
『バステト、起きたか。起きたなら自分の足で歩いてくれ。それとここはダンジョンの2階だ。1階で時間を喰ったから、今日は様子見だけで帰る事になりそうだがな』
『えっ? そうなの? 様子見って言われても起きたばっかりなんだけど』
『よく眠っていましたね。既に夕方ぐらいだと思いますよ。お昼過ぎに眠って、そこから夕方近くまで寝ているんですもの。夜に眠れますか?』
『あー……分かんない。アレなら<時空の狭間>でいっぱい運動してから寝るわ。そうすれば、おそらく眠れる筈だし』
『それが一番良いでしょう。最悪は無理矢理に眠れる音を流してあげますよ。猫なら聞こえるかもしれませんが』
『なんだか危険そうだから止めてもらえると助かるわね。本当に止めてよ? 別に前フリじゃないわよ!?』
言いたい事は分かる。
ヌンだとサラッとやってきそうで微妙に恐いんだよな。
とはいえ夕方近くまで寝ているバステトが悪いといえばそれまでだ。
今はダンジョンの2階だが、チラリと見た感じ色々と果実が生っているのは間違い無い。
明日ゆっくりと採ればいいので、今日のところはさっさと帰ろう。
俺達は一階に戻り、そのままダンジョンを脱出。地上へと戻った。
一階の魔物はネズミが主で、たまにムカデが出てくる程度だ。
薙刀の先で突き刺せばどうにでもなったので、別に苦戦らしい苦戦もしていない。
代わりに何も手に入れずに戻ってきている。
正直に言って高値で売れそうな魔物でもないし、ネズミはもうウンザリなので回収する気にもならなかった。
いい加減にしてほしいところでもある。
俺達が地上に戻った頃には既に夕日が出ており、慌てて俺達は町中へと戻り酒場へと移動。
場所は事前に聞いていたので、あっさりと見つかり中へと入る。
既に開拓者が酒盛りをしていたがスルーし、注文を聞きにきた店員に何があるかを聞く。
するとウサギ肉か狼肉があったので、ウサギ肉にした。
「パンとウサギ肉二つにサラダが二つ。合計で35ルルです」
「35ルル? ……マジで? 宿で物価が高いって聞いたけど、本当に高いんだな。すまないけど小銀貨1枚で」
「はい。少々待ち下さい。お釣りとってきますー」
そう言ってお釣りを取りに行く店員を見つつ、値段の内訳を考える。
今までは王都も変わらずパン一つで3ルル、サラダ一つで3ルル、そしてネズミ肉が4ルルでウサギ肉が7ルルだった。
今回と同じ注文なら、全部で23ルルじゃないとおかしい。
それが35ルルなんだから、相当のボッタクリだ。
普通はダンジョンで幾らでも獲れるなら値段は安い筈だろうに、むしろ観光地価格になってるぞ。
「おまたせしましたー。65ルルのお返しでーす」
「すまないんだけど、一つ一つの値段を教えてくれない?」
「パンは一つで5ルル、サラダも一つで5ルル、ネズミ肉が5ルルにウサギ肉が10ルル。そしてオオカミ肉が12ルルです」
「成る程、分かった。ありがとう」
そう言うと店員は去っていったが、思っているより高くてビックリする。
もちろん仕方がないのだろうが、それにしても積み重なるとデカいなと思う。
これだけ取らないとダンジョン町が維持できないのかねえ?
最終的には税として貴族の懐に行く筈だから、それを考えると相当に儲けている筈だ。
とはいえ前にも考えた通り、多数の兵士やらを雇わなくちゃいけないし、そうなると金は幾らあっても足りないだろう。
観光地価格にして、その分だけ税を上げるのは仕方がないな。
それでも治安が荒れていそうだし、そうなると足りてないのかスラムが酷いのか。
開拓者崩れが多いからかもしれないな、それだけの実力はありそうだし。
捕縛するのも難しいのかもしれないと考えれば、治安が一定以上にならないのも頷ける。
安易にスラムを潰しても、また何処かから入り込んでくるだろうし、それが他国の紐付きなら最悪だ。
そういう危ういバランスで成り立ってるんだろう、ダンジョン町というのは。
おっと、食事が運ばれてきたのでさっさと食うか。
とはいえ相変わらず塩ぐらいしか使われていない肉だ。
ネズミ肉の方はハーブとか使ってる癖に、ウサギ肉は塩だけなんだよなー。
臭くは無いんだけどさ。
バステトも微妙な顔をしているが、気持ちは俺と一緒らしい。
この町に来るまでには、魚醤や肉醤を掛けた料理なんかを食べていたから余計だろう。
塩だけというのが色々とキツい。




