0157・ダンジョン突入
Side:バステト
私達は南のダンジョンとやらがある町まで進んで、今日は10日目。
道草を食うというか、道草を刈りながら進んだから、本当はもっと早く着いた筈なんだけどね。
ようやく町の壁が見えてきた。
道中の村は全部無視し、夜の間は魔物を狩ったりしながら進んだのよ。
その御蔭で随分と肉が増えて嬉しかったわ。
代わりに魚が全然増えなくて困ってるんだけど。
途中で川は何度か見つけたのよ?
でも魔力を放出しても魚が動かないし、魔力で探しても見つからなかった。
イシスやヌンいわく、私達が居た場所には魚が居なかったんだろうという事みたい。
私が元居た星のように、長い間誰も川や海に手を出していないと、魚の警戒心は薄くなるらしいわ。
でもこの星は魚を獲っているヤツが居るから、魚も警戒しているんだろうってイシスは言っていた。
ヌンは違っていて、もしかしたら川に住んでいる魚は夜行性なのかもしれないって言ってたわ。
だから昼間は寝ているんじゃないかという事みたい。
どっちもあるらしいから何とも言えないけど、少なくとも魚が全く獲れなかったのは間違い無い。
まだまだ魚はあるらしいけど、新しく獲れてないから数は減ってきているのよねえ。
どこかで獲らないといけないわ。
出来ればダンジョンとやらで魚が出てきてほしいんだけど……。
『そうなったら、それはそれで困るな。川とか海とか完全に地形としては厳しいじゃないか。川だけとか海だけでは無いだろうけどさ、それでも相当に厄介な場所だという事は間違い無いだろう』
『でしょうね。そもそも私以外は呼吸を必要としますし、水だけの場所なら溺れ死にますよ? 流石に攻略できないダンジョンというのは存在しません。それは確か作製不可能な筈です』
『となると、ダンジョンは必ず攻略できるようになっている。となりますけど……』
『そうですよ。もちろん実力的に無理という事は多いでしょうけど、攻略そのものは絶対に可能となっています。というより、攻略不可能には作れない筈です。ダンジョン作製の際のルールがそうですから』
『ルールなんていうのがあるの?』
『ええ。そもそも前にも言いましたが、資源の乏しい惑星に対する補填なのです。ですが攻略不能にしたら誰も取りに行かなくなるでしょう? だから攻略不能なダンジョンは作れなくなっているのです。更に細かいルールもあるそうですが、私はそこまで詳しくありません』
『いや、そこまで知ってたら十分じゃないかしら?』
おっと、イシスが門番に話して登録証を見せたわ。
なんかあっさり入れたけど、逆に怪しい感じがするわね。
ここを持っているのは1位貴族家であるシャフニアっていう家らしいけど、治安が悪いそうなのよ。
気をつけないと。
まずは町中で少し話を聞いて、ヌンが相手の心を調べて本当の事を言っているか確認する。
それが終わったら安全な宿の部屋を確保ね。
一人部屋で一泊100ルルですって。随分と高いじゃない。
「ダンジョン町では一泊100ルルか。まさか王都よりも高いとは思わなかったな。とりあえず10日頼む。小金貨な」
「まいどだ。とはいえダンジョンがある、ここ<チャルタン>は何でも高いぞ? ワシら平民もそれなりに儲かってるが、それでも暮らしていくだけで結構な金が飛ぶ。王都よりも暮らしにくいと言われるくらいだしな」
「稼いでる開拓者が居るから、全体的に高くなっちまうんだな。仕方ないとはいえ、厄介なこった」
「そうだが、それがダンジョンのある町の宿命だ。他の国でもダンジョンがある町は大抵そんなもんらしいからなぁ。儲かるのは治めてる貴族様だけってな」
「そんなもんか」
そんな会話をしながら記帳したイシスは、外に出て開拓者ギルドへと行くらしいわ。
今はお昼過ぎだし、私達は食事を終えてるから酒場に行く意味も無いのよね。
むしろちょっと眠いくらい。
そんな中を歩いて行き開拓者ギルドへと移動。しているんだけど、既に限界に近い。
そう思っていたらイシスに抱き上げられたので、私はそのまま眠る事にした。
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Side:イシス
お腹が満たされたから良い気分になったんだろうが、最初の頃と違ってどんどん子猫っぽくなってきてないか?
初めて会った頃はもっとしっかりしてた気がするがなぁ……。
まあ、いいけどさ。
俺はバステトを抱いたまま開拓者ギルドの入り口を開けて入り、中の様子を見る。
特に変わった感じはしないものの、そもそも碌に人が居ないので当然とも言える。
ここに居る暇があるならダンジョンへ行っているだろう。
ただでさえ物価が高いんだし。
通常の依頼が書いてある紙を確認に行くが、そこにはあまり依頼が多くなかった。
ここの開拓者の大半はダンジョンに行くんだし、本来開拓者に依頼する事は他の兵士か何かがやっているんだろう。
幾らダンジョンのある町だからといって、依頼が減るかといえばそんな事は無いだろうしな。
それに治安を守る兵士も多い。
収入はあるかもしれないが、人が多く集まる為に支出も多いのは見たら分かる。
ここは本当に治安が悪そうなので、ある程度は緊張感を持っている必要がありそうだ。
誰かさんは気分良く寝ているが、そこは気にしたら負けか。
だって、おぬこ様だしな。
それよりもダンジョン内がどんな場所か分かる情報がないかと思って来たんだが、あったよ目の前に。
「3階でハチミツの採取依頼。こっちは2階でリンゴの採取依頼? それに2階でブドウの採取依頼ね……。魔物を倒せって依頼じゃないんだなぁ。こっちの方が儲かるのかね?」
なんだかよく分からないが、2階にリンゴとブドウ。3階にハチミツがある事は分かった。
他には無いので、他のヤツが依頼を熟したのかもしれないな。
そうなると依頼の紙が無いのも分かる。
俺は拾えるだけの情報を拾ったら、ダンジョンへと一度行ってみる事にした。
とにもかくにも、どんな所かは見てみないと分からない。
こういう場合は体験してみるのが一番だ。
そう思い開拓者ギルドを出てダンジョンへと移動していく。
ちなみにダンジョンがあるのは町の中心だ。
何故そうなっているのかは知らない。
もしかしたら勝手に入るのを阻止する為なのかも。
そんな下らない事を考えつつ、俺達は入り口で登録証を見せて中へと入る。
壁で囲ってある中心には、洞窟っぽい穴が大きな岩の塊に開いており、そこには地下への階段が見える。
どうやらアレがダンンジョンらしい。
俺達はそのまま歩いていき、ダンジョンへの階段を下りていく。
下まで下りて着いた場所は岩の中ような場所で、通路が東西北へと伸びている。
しかも右を見ると通路の途中に木製の扉があった。
思わず「ゲームか!」と大声で突っ込みたくなったが、ギリギリで踏み止まり自重する事が出来た。
っていうか、木製の扉が付いている時点でおかしいだろ。
どうなってんだよ?
『イシスは不思議がっているようですが、ダンジョンはこんなものですよ。それより、そろそろ行きましょう。通路からどんな者が攻撃してくるか分かりませんので気を付けて下さい』
確かにダンジョンゲーとかだと定番の攻撃方法だな。曲がり角での待ち戦法は。
奇襲先制攻撃でそのまま殺すっていう戦い方だけど、先制した方が有利に決まってるんだから当然の戦い方でもある。
俺達は試しに右の通路へと移動しながら、魔力を薄く放射しての感知をしっかりとしておく。
いつ、どこで、どんな風に襲われるか分からない。
で、ある以上は警戒を厚くするしかないからな。
木製扉の向こうに何らかの反応があるので、ゆっくりと開きながら中を確認。
すると部屋の中に一匹のネズミが居た。
そいつはこちらを見つけるなり襲ってきたが、俺は普通に薙刀で切り裂く。
ネズミは小さいものの、コンパクトに振れば問題は無い。
そのうえ振ったのは左右にだし。流石にネズミも咄嗟には避けられなかったようだ。
ジッとネズミを見るものの、消えてドロップアイテムを出す事は無い。
そこはゲームと違うようだ。




