0153・王都をウロウロ
Side:イシス
王城の手前にある貴族街へと入り、そこを更に歩いて進み王城の前まで行く。
そこに居る兵士にギルド長が事情を説明し、更に先へと進む。
どこまで行くのかと思っていたら、城の中を移動した後で地下へ。
そこに特別な牢があり、かつて捕まえた奴らが既にそこに入れられていた。
尚、あの女<死霊術士>は見当たらない。
どうやら別の場所に居るようだ。
「ウチのディネーが居ないって事は、どうやら別の場所に連れて行かれたようね? いったいどこかは知らないけれど、あまり酷い目に遭わされてほしくないわ。あの子なら協力的な筈だし大丈夫だと思うけど……」
「どうなっているかは分からんな。反抗的なら厳しい尋問か拷問を受けるだろうが、貴様が言うならそこまででもあるまい。ある意味で貴様が篭絡しておいたようなものだからな。それが良い事なのかどうかは知らんが」
「良い事に決まってるじゃないの。尋問や拷問をしたところで、口から出た情報が本当とは限ってないわ。それなら篭絡した方が口も軽くなるというものよ。新しい生活の場を与えてあげれば、安心するしね」
「まあ、言いたい事は分かる。かつての国に背くのだから、それぐらいはしてやらんと本当の事など喋るまい。それだけしてやっても本当の事を喋るかは分からんがな」
地下牢を後にした俺達は、そのまま城を出て帰路につく。
単にあの<死霊術士>を運んでくるだけだったので、俺達はこのままお役御免だ。
ギルド長とウェロヌは王城でやる事があるらしいが、俺達のような平民にある筈も無いし、さっさとこんな所からは離れるのが一番いい。
長居しても損しかしなさそうだしな。
俺達は貴族街を抜け平民街へと戻ってきたが、既に昼を過ぎていた為に酒場へと行って昼食にする。
ハトホルの昼食は酒場には無いので、その前に適切な場所で<時空の狭間>へと戻った。
いつものハトホルの食事を出し、そのついでにハトホルの乳を少々搾る。
任意で乳を出す事が可能なので、少しずつ搾る事にしたんだ。
そもそも乳を大量に搾るのも、ハトホルにとって良い事じゃない。
なので負担をかけないように少量ずつにする事にしたわけだ。
どこかの誰かさんは吸いついているが、あれは見なかった事にする。
最初の時と違って満腹になるほど飲んでもいないし、大丈夫な筈だ。
ハトホルの食事が終わったら惑星に戻り、酒場に入ると食事を注文。
17ルル、今回は大銅貨1枚で支払って小銅貨8枚をお釣りで貰った。
バステトと共に食事を終わらせた俺達は、様々な店のある区画へ行って買い物を始める。
特に必要なのは小麦類だ。
そもそもパンがあるのだから小麦は買える筈だしな。
そうやって探していたのだが、穀物を売っている店に行って愕然とした。
小麦は税の一番の対象だから売っていないらしい。
なんでも全量を国か貴族が買い上げて備蓄し、パンにして販売してるんだとか。
その所為で小麦の個別販売はしていないそうだ。
流石に国に睨まれるのは色々とマズいので諦め、俺は売っていた大麦を購入する。
殻も何も取られていない大麦だが、六列全てが実っているので六条大麦のようだ。
六列のうち二列しか実らない物を二条大麦、六列全てが実る物を六条大麦というのは知っている。
というか俺の知識の中にあった。
どこで仕入れた知識かは知らないが、これが主に麦飯として食べられていた大麦らしい。
二条大麦はビールなどに使われていたそうだから、おそらくそういう用途の大麦なんだろう。
ビールを作るには大麦、水、ホップ、酵母が必要だ。
そのうちホップと酵母が無いので無理。
そもそも六条大麦であって二条大麦じゃないし、酵母はエールを何とかすれば大丈夫かな?
この星の技術じゃ、エールの酵母が不活化なんてされていないだろうし、そこから培養は可能な筈。
困ったときの<物品作製装置>じゃないけれど、あのトンデモ装置なら何とかしてしまうだろう。
麦味噌の原料はハダカムギだった筈だけど、そっちも何とかならないかな? 味噌が欲しい。
オオムギを銀貨2枚、500ルル分買うと驚かれたが、俺は一向に気にする事なくアイテムバッグに入れた。
その後は穀物店を離れ、すぐに拠点へと移動。
<物品作製装置>に入れたら戻る。
他にも買う物はないかと思いながらフラフラと歩き、様々な物を見るも購入意欲は湧かない。
それなりに色々と売っているのだが、俺に必要なのは加工品じゃなくて原料なんだよね。
加工は全て<物品作製装置>がやってくれるので、この程度の技術の物を買う必要が無い。
工業製品じゃないから歪んでたりするし、味はあるけど子供の作品か? と言いたくなるほどに酷い。
そもそも歪んでいるのが当たり前というのは色々と駄目だろうに。
そう思うのは工業製で大量生産された物が当たり前の星に居たからか?
でもなー、それにしたって歪んでいるのはちょっと……。
そう思いながらもウロウロし、多少の物は購入していく。
ジロジロと見られたりしたが、金さえ払えば売ってもらえたので良しとする。
ちなみに買ったのは珪石や石英でありガラスの材料だ。
銀貨が3枚も飛んだが仕方ない、それなりの量を買えたので良しとする。
ガラス作製は高温を必要とする為、材料は安くてもガラス製品の値段は相当高価になる。
俺が元居た星でも古代はそうだったらしいしな。
更にウロウロし、粘土が売っている店を発見。
銀貨1枚分の粘土を買って外に出る。
それなりに探せば面白い物もあるもんだ。
原料だからそこまで高くないのが助かる。
他に買う物は無いかとウロウロするとエールを売っている酒屋を発見。
銀貨1枚分のエールを購入し、これで終了。
流石に金が無くなってきたので宿へと戻る。
部屋に入ってから<時空の狭間>へと飛び、買った物を全て<物品作製装置>の箱の中へと投入。
パネルからウィンドウを起動して確認すると、作製可能な物が結構増えていた。
特にガラスと粘土の影響が大きい。
俺は残っている銀と木材とガラスを利用して、大きめの一枚鏡を作成。
足が付いていて置いておける形にしてあるので置く。
『これなに? 何か猫が映ってるけど……って、これ私じゃないの!?』
『あら、本当ですね。これ私が映っています。なかなかに綺麗に映っていますが、こんな物ありましたっけ?』
「その鏡はそうやって綺麗に映るように作られているからですよ。あの星の普通の鏡は曇っていますが、綺麗に映るように作ればそうなるという事です。まあ、あの星では出せない物ですね」
「そもそも出す気は無いし、それ寝室に置く為の物だからな。あんな古い時代の技術力の星じゃ、その綺麗に映る鏡は作れないだろうよ。そもそも水銀に浮かべたりして作る筈だぞ、元々は」
「それは危険な作製方法ですね。水銀中毒で生き物が死んでいってしまいますよ? よくもまあ、そんな事をするものです」
「そういう時代だったんだろうな。うん、酵母が出てるって事は、エールから酵母を取り出す事に成功したって事だ。<物品作製装置>なら出来ると思ってたけど、当たり前にやったなあ」
「その程度は容易いでしょう。ですが酒ならばシードルやミードの方が手っ取り早いのではないですか? あれらは潰すか水で薄めるだけです」
「リンゴはともかくハチミツはなぁ……量が採れない。そもそも蜂があの星に居るかも分からないし、居たとしても凶暴な魔物の可能性がある。襲われる事を考えても、迂闊には採れないだろう」
「ならばリンゴをどこかで手に入れれば作れますね。あれはリンゴの表面に付いている菌を利用しますので、そもそも酵母菌を用意する必要もありません。ついでにその酵母はパン作りにも使えます」
「なら尚の事、探す必要があるな。リンゴかブドウが見つかれば酵母菌が発見できる可能性が高い。今のところワインは見つかってないんだが、どこかに在るかもしれないしな」
とりあえずは気長に探すか。




