0154・再び王城へ
Side:イシス
夕方まで宿の部屋の中で【魔術】や足運びの練習をし、夕方になったらハトホルの食事を終わらせた後で酒場へ。
17ルルを大銅貨1枚で支払い、お釣りに小銅貨を8枚もらう。
適当に食事をしたら宿の部屋まで戻り、寝るまで<時空の狭間>で訓練をしてから宿の部屋で眠る。
疲れていたのですぐに意識は無くなり、後の事をヌンに任せて眠った。
…
……
………
翌日。
朝日が昇る時間に起きた俺達は、酒場へと移動して朝食をとりに行く。
小銅貨17枚を支払って注文したし、朝食が運ばれてくるまでゆっくりとしよう。
既にハトホルは食事を終えているので、今は小さくなってテーブルの上に寝転がっている。
食事が運ばれてきたら食べ、すぐに他の客の為に席を空ける。
俺達はそのまま開拓者ギルドへと向かい、中に入り椅子に座って待つ。
今日はギルド長と共にアンデッドを運ばなきゃいけない。
その所為で昨日から【ストレージ】を使いっぱなしなんだよな。
ギリギリで大丈夫だけど、魔力の回復量と消費量が均等状態に近いので厳しい。
できれば早くなんとかしたいところだ。
適当に椅子に座って待っていると、ギルド長が出勤してきたので話す。
ずっと収納しているのは厳しいから早くなんとかしてくれと言うと、朝から王城だからもう少し待てと言われた。
多分大丈夫だと思うが、このままズルズルは勘弁してほしいぞ。
このパターン、オオスのギルドやハルマーの町でも同じだった。
古い時代ってこんなのばっかりか?
仕方なく待っていると、朝っぱらからウェロヌがやってきて対面に座る。
横には甥とかいう<乙女騎士>のリーダーと良い雰囲気になっていた者も座った。
どっちもグレイだし<乙女騎士>のリーダーもグレイだ。
なので良い雰囲気だったんだろうが、傍から見たら微妙でしかない。
グレイ同士の恋愛を見てもなぁ……っていう感じなんだよ。俺にとっては。
登場人物がグレイじゃ何とも思わないし、恋愛物としては見れないわ。
だってグレイだぜ?
「私も様子を見に行きたいのよ、ディネーは無事だったんだけどね。マルロンは私に付き合わずヨットマイファのお嬢さんに案内してもらえばいいし、今日は自由行動ね」
「伯母、お姉さんの護衛も一応言われてるんだけど? 何でそう勝手な事を言い出すかな」
「あのねえ。甥に護衛してもらなきゃいけないほど、私は落ちぶれてないっての。あんたはちゃんと礼儀を返しなさい。向こうが誘ってくれてるのに、なにスルーしようとしてんの。ちゃんとウィーグン家の者としての社交をしなさい」
「まあ、それは確かにしなきゃいけないんだけど……」
こいつ絶対に分かってないだろ。
恋愛下手を通り越して、難聴系主人公じゃないだろうな? 幾らなんでも俺でさえ分かったぐらいだぞ。
グレイの顔なんて見分けがつかない俺でさえだ。
お前は男として大丈夫かと言いたくなるレベルだな。
難聴系主人公なんて作品の中にしか居ないって思ってたけど、もしかしたら現実にも極稀に居るのかもしれない。
周りはイラつくだろうが。
それはそうと二人と話していると<乙女騎士>がやってきたので、リーダーであるミューデラにマルロンを任せた。
あまり王都に来た事が無いらしいので、ミューデラが案内するという構図だ。
結構渋っていたが、それは嫌だというより騎士の仕事が出来なくなるという話であり、単なる騎士の矜持を話していた。
まあ、最後にはウェロヌにケツを蹴られていたが。
そこまでされなければ分からんのか?
「アレさえ無ければ優秀なんだけど、周囲の女性陣が牽制しあった結果、マルロンは真面目に育ちましたとさ」
「全然ハッピーエンドじゃないし、単なる融通の利かない堅物が出来ただけだぞ。アレなら強引にでも娼婦か何かと遊ばせた方が良いんじゃないか? じゃないと色々と危険だろ」
「言いたい事は本当によく分かるんだけどねえ、迂闊に遊ばせて引き摺り込まれても困るのよ。良い娼婦なら上手く誘導してくれるんだけど、都合の良い客に仕立て上げられる可能性もあるじゃない?」
「アレは貴族家の次男だし騎士だ。いい金蔓だと思われれば厄介な事になるな。それで遊びの方に行ってしまっても困るし、難しいところか。……貴族家として裏から命じるのは?」
「そうなると妙な噂が立ちかねないのが何とも言えないところなのよ。裏の事には首を突っ込まない方が良いのよね、対立すると面倒な事にしかならないし。やり過ぎれば騎士や兵士で鎮圧するけど、そこまでじゃないなら放っておくのが一番よ」
「裏稼業や裏の界隈も、面倒な仁義なり筋なりを通さなきゃいけないって聞くしなぁ。確かに関わっても大した旨味は無いか。貴族家なら上がりをせしめるだけで十分だし」
「そうなんだけど、あんまりハッキリと言わないでほしいわね。どこの貴族家もやってる事だけどさ」
「お前達はこんなところで何を話してるんだ、まったく。開拓者達が聞いているという事を少しは考えてもらいたいんだがな?」
「娼館なんて町にはあるだろうし、客が居る以上は商売だ。そのうえで税を納めているなら認められた商売だというだけでしかない。実際に無くす事は出来ないだろう? なら統治者が制御すべきだ」
「まあねえ。無くならない商売である事は事実よ。それに禁止したところで隠れてやるだけ。それなら堂々とさせて、税を払わないと許さないという形にするべきよ。その方が余程にマシ」
「そうだろうし、言いたい事はよく分かるが、ここでするような話ではないと言っている。それと、さっさと行くぞ!」
「「了解」」
俺達は椅子から立ち上がってギルド長についていく。
今日は昨日と違って王城の右隣の建物に行くそうだ。
そこが王軍と呼ばれる王都の兵士達が練習したり暮らしている場所らしい。
ちなみに左隣には騎士団の建物がある。
ここに近衛騎士団も含まれているので、そこまで通常の騎士との間に溝は無いみたいだ。
近衛だけ別枠という事でもなく、騎士の最高峰が近衛となっているだけなんだと。
代わりに騎士と兵士の間に溝があるそうだが、これは仕方がないとの事。
なぜなら兵士から騎士に上がり、その最高峰が近衛だからだ。
つまり実力で下だから兵士なのであり、騎士はエリートだと言える。
それも元は兵士なのだから、実力の無い者を下に見るのは仕方がない部分があるだろう。
尚、貴族の子は地元の騎士団に入るので、王都の兵士や騎士に地方出身者は殆ど居ない。
特に騎士は、全ての人員が王都出身となる。
だからこそ地方と中央の争いみたいなものは無いそうだ。
各貴族家が武装しているように、王城も武装しているという形になる。
至って分かりやすい形ではあるし、王も自前の戦力を持って当たり前だ。
俺達はそんな王城の戦力の一つである、王軍の敷地に足を運んでいる。
そこの訓練場にアンデッドと<死霊術士>と共に居た連中の死体を出せば終わりだ。
ギルド長に案内された場所には大勢の者が既におり、グレイだけでなくリザードマンや獣人も見えた。
どうやら少数の種族も王城に勤めているらしい。
そこでも派閥なんかはありそうだが、それは仕方ないだろう。
「ここに出してくれ!」
「分かった」
俺は訓練場のど真ん中にアンデッドを、そこから少し離れた所に死体を置いていく。
中央のアンデッドに一気に群がった連中は、早速ブツブツと近くの連中と話しているようだ。
学者っぽい連中みたいだし、あれが王宮魔法使いとか呼ばれてる連中だろう。
ほんと<時空の狭間>で一度出し、清浄銀の杭を抜いておいて正解だった。
見つかったら絶対に面倒臭い事になってたぞ。
ここには俺達しか居ないから、黙っておけば済むだろう。
ウェロヌは王城の中に入って行ったしな。
ディネーという女<死霊術士>が心配なんだろうが、あからさま過ぎる気もするぞ。
あいつもマルロンと同じくちょっとズレてるし、ウィーグン家のヤツってズレてるのが基本なのか?




