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0149・死霊術士の護送




 Side:イシス



 俺は開拓者ギルドの一階に<死霊術士>が作りだしたアンデッドを出した。

 それを見た開拓者ギルドのギルド長は検分を始めたが、こいつが異常な個体であるという事はすぐに理解したらしい。



 「こんなブラッディウルフは見た事が無いな。アンデッドだとはいえ元々と変わりは無い筈だろう? 幾らなんでもおかし過ぎるぞ。だいたい足が八本あったり、頭が二つあるって異常でしかない」


 「こいつは素体から改造されてる。そこの<死霊術士>がぎだらけの肉体にしたんだよ。その状態でも肉体が僅かとはいえ維持できていたのは……」


 「維持出来ていたのは?」


 『おそらく呪いの影響でしょうね。そこの<死霊術士>は<蠱毒の法>を用いて作ったとか言っていました。おそらく元々体の中に埋め込んでいた呪いと、殺したもの達を肉体にくっ付けた事による瘴気と呪いで変質したのだと思われます』


 「呪い……か。ダンジョンの中からは極稀に呪われた物が見つかるというが、まさかそれをアンデッドに埋め込んだ?」


 『正確には死体の際に埋め込み、そこからアンデッドとして使用したのでしょう。そして魔物を殺させた後で切り開き、足や頭を付け加えていった。という事でしょうね』


 「碌でもない連中の極みとも言えるヤツだな。どれだけ死者を冒涜ぼうとくすれば気が済むのだ? こいつらは同じ<アンズル>とは思いたくない程のクズだぞ」


 「ムー!! ムー!!!」



 必死に反論しようとしているが、口を塞がれているので喋る事は出来ない。

 俺達は<死霊術士>を無視して検分を終わらせ、アンデッドを【ストレージ】に仕舞った。

 後は明日だ。


 今日のところは一旦これで終わり、俺達は解散となった。

 開拓者ギルドには牢など無いが、この<死霊術士>は早めに王宮に引き渡すとの事。

 向こうで尋問なり拷問なりしてもらうんだと。


 それを聞いた<死霊術士>は暴れだしたが、だからといって逃げられる筈も無く、一応俺達が王宮まで護衛をさせられる事になった。

 面倒だが仕方ない。


 諦めて<死霊術士>を王宮まで連れて行こうとした矢先、誰かが開拓者ギルドに入ってきた。

 今日は北の森が使えないから、開拓者は殆ど来ない筈だが……。



 「ここが王都の開拓者ギルドねえ……知ってはいるけど入った事が無いわ。初めてだとちょっと緊張するわね」


 「伯母、お姉さん。キョロキョロしてないで、早く中に入ってくれないか?」


 「そう急かさな、うん? 木製の傀儡くぐつ………? って、イシス達じゃないの!? まさか王都に居るなんてね!」


 「えっ? ………そいつらがウチの領地から出てった奴らか」



 何でウェロヌが王都に来たのか知らないが、俺に用があって来た訳じゃないだろう。

 いちいち絡むのも面倒臭いから、さっさと目的を果たさせよう。



 「ウェロヌ、俺達の事はどうでもいいだろう。それより目的があって来たんだろうから、それをしろ。俺達にもやる事があるんでな」


 「私達の目的は別に時間の掛かる事でも無いわよ。ここのギルド長から王宮の方に言ってほしい事があって来ただけだもの」


 「王宮にだと? 重大な事ならまだしも、一開拓者の言う事を王宮に上げる事など無いぞ。自分で行け、門前払いを喰らうだろうがな」


 「そうはならないけど、口添えが必要なのよ。私は10位貴族家のウィーグン家の者、ウェロヌ・ウィーグン。この度、我が領地の領都ではギルド長を王都から呼ぶ事になったの。だから〝王宮〟に話を通してほしいのよ」


 「ウィーグン家といえば、開拓者ギルドを乗っ取って都合よく使ってた家じゃないか。それがまた……どういう風の吹き回しだ? お前の家はそういう家だろうが」


 「これは手厳しいわね。とはいえ今までの事を考えれば仕方ないのでしょう、ラシュパラー殿下?」


 「その名前でオレを呼ぶな。お前達如きにそれを認めなどおらぬ。次は無いぞ?」


 「申し訳ございません。とはいえ、我が家の開拓者ギルドに対するものは片付いたので、受け入れる所存です。これは当主である兄、ラムリトンも認める事でございますので。是非にお願い致します」


 「……本音は?」


 「ギルドにこだわった母が排除できたので、今の内ならば陛下の息の掛かった者であれば受け入れます。それ以外を受け入れる気はありません。なお、それ以外の村に受け入れる気もありませんので、悪しからず」


 「………良かろう。その線で陛下に上奏しておいてやる。ただし陛下がどうお考えになるかは知らんぞ」


 「それは大丈夫です。我が家の動向を探るにこれほど都合の良い立ち位置もありませんからね、必ず陛下の息の掛かった者を送ってこられるでしょう。開拓地の事も気に掛かっておいででしょうしね」


 「流石は<ウィーグンの魔女>と呼ばれる女だ。これで女好きでなければ各貴族家で取り合いになったであろうにな。姉上が行っておる事もあって、誰も手が出せん」


 「出されてもなびく気などございませんけどね? 後、第一王女殿下とは大変〝仲良く〟させていただいております」



 そうウェロヌが言った瞬間、明らかに嫌そうな顔をしたギルド長。

 っていうか、やっぱり予想した通りの女好きか。

 なんとなくそうじゃないかと思ってたんだが、その通りだったとはな。



 「仕方あるまい。陛下に話を通してやるから、この者達と共についてこい。この<死霊術士>を王宮まで連れて行かねばならん。ゼンス王国の者だが、どこかで誰かが狙ってくるかもしれん」


 「分かりました。それぐらいであれば喜んで。我が家の領地にもアンデッドが出まして、そこで捕縛した兵士や<死霊術士>を連れて来ておりますので、そのついででもあります」


 「ウィーグン家の領地でだと? あんな田舎でアンデッドを放ってどうするというのだ。いったいゼンス王国の連中は何を考えている?」


 「それは分かりません。彼の者らはそれをやれと命じられた下っ端でしかありませんでしたので、それ以外の事を知らされておりませんでした。まあ、よくある事ではありますが……」


 「確かにな。下っ端には策の全容など伝えなくて当たり前だ。何処から洩れるか分からんからな。まあいい、とにかく王宮まで行くぞ。<死霊術士>を死なせる訳にはいかんからな。大事な情報源だ」



 そう言ってギルド長が入り口へと向かおうとすると、先にウェロヌと一緒に来たグレイが外に出た。

 装備を見ると騎士か何かだと思うが、外の安全を確保しに行ったかな?


 その後は<力の鉄槌>に<猛襲団>が続き<乙女騎士>という順番で外に出た。

 その後に<死霊術士>を連れたギルド長とウェロヌ。

 最後尾に俺達という形だ。


 開拓者ギルドの外へと出ると、周りを三チームのリーダーと部下が警戒していたが、今のところは問題は起きていないらしい。

 俺達は後ろを警戒しながら進んで行く。


 ゼンス王国の奴らが居る場合、どこから攻めて来るか分からないからな。

 場合によってはアンデッドをここでけしかけてくる可能性すらある。

 それをされると面倒で仕方ないんだが、だからこそ一番可能性が高いんだよなー。


 ギルド長が<死霊術士>を無理矢理に抱えて移動し、その横でウェロヌが周囲を警戒している。

 鉱山の時とは全く違うなと思いながら移動していると、案の定こっちに襲い掛かってくる連中が出た。


 <死霊術士>どもが失敗する事も織り込み済みだったようだな。

 計画とはそうやってしておくものだが、やられる側にとっては面倒このうえない。


 早めに何とか処理を終えたいが、乱戦になるとどうなるか分からないのが痛いな。

 <死霊術士>を殺されるのが一番マズい。

 それだけは何としても防がないと、依頼の報酬が大幅に減りそうだ。


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