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0148・戦い終わって王都へ




 Side:イシス



 クェルベアーという熊を倒し終わった三つのチームのリーダーと仲間達は、獲物の前の地面に座り込んでいる。

 相当に疲れたんだろう、それでもポツポツと話し始めた。



 「あー……疲れたなー。とりあえず終わったのはいいが、コイツどうする? 簡単には持って帰れないぞ。更にはそこの<死霊術士>も連れて帰る必要があるしよ」


 「そうだなぁ。この<死霊術士>は魔車に放り込めばいいが、この死体どもとクェルベアーをどうするか……」


 「このクェルベアーは果たして【収納魔法】に入るのか? ここまでの大きさだとそれなりの魔力が無ければ入れるのは難しいぞ。我が<乙女騎士>にも何人か居るが、かといって今は連れていない」


 「そもそも魔力の多いヤツを前線に持っていっても仕方ねえからなぁ。いつもは安全を確保してから呼んでるが、今日はそういう依頼じゃねえから、そもそも連れて来てもいねえし……」


 「なら俺達が収納して戻ろうか? 少なくとも熊は解体所で出せば良いんだろうし、残りの死体はギルドだろ?」


 「すまねえが、頼めるか? コイツを入れられる魔力持ちは、今日の仕事には連れて来てねえんでな」


 「ヌンは熊の方を頼む。死体は俺が入れていこう。まだ何とか入る筈だ。代わりにバステトとハトホルは帰り道を宜しく頼む。熊とアンデッドが居なくなったから、何かの魔物が入り込むかもしれん」


 『分かったわ』 『分かりました』



 俺は警戒をバステトとハトホルに任せ、ヌンと共に死体を回収する。

 敵は全員<アンズル>だったんだが、熊は綺麗に頭だけを潰しているようだ。

 一撃で殺す気しか感じられないのは、ある意味で流石は野生と思える。


 そもそも一撃で頭を潰すなんていうのは結構難しいものだ。

 ハンマーとかがあれば楽だが、素手の一撃で潰すなど人間には無理だろう。

 そういう意味で流石は熊だと言える。


 回収し終わった死体を確認したが、頭の方は潰れていて脳髄が撒き散らされていたりと、完全に破壊されていた。

 時間も経っているし、こいつらを治すのは<生物修復装置>でも無理だろう。

 治す気も無いけどな。


 俺達は一塊になって森を移動し、疲れた体を引き摺るように外へと出た。

 もちろん俺達は疲れてなどいないが、他の連中は激戦も含めてだから大変だっただろう。



 「あっ、てめえ! ノコノコ出てきやがって! 覚悟は出来てんだろうな!!」


 「今すぐオレ達の手でブッ殺してやるぞ!!」


 「あん? お前らがイシス達に喧嘩を売ったバカ兄弟か? お前らはウチに要らねえ、クビだ。さっさと何所へでも失せろ」


 「「へ?」」


 「へ、じゃねーんだよ。てめえらみてーな役立たずは要らねーつってんだろうが。おい、こいつらここへ置いていけ。<力の鉄槌>にゴミは要らねえからな」


 「「「「「うぃーっす!!」」」」」


 「ち、ちょっと待って下さいよ! 何でオレ達がクビなんですか! おかしいでしょう!?」


 「ああ? 勝手にウチの看板で喧嘩しておいて、一撃で負けたゴミが調子に乗ってんじゃねえぞ! 今すぐオレ様のハンマーでドタマ潰されてえのか!!!」


 「「ヒッ!」」


 「たかがこの程度で怯えるクズなんぞ、ウチには要らねえんだよ! しかもお前ら殆どの娼館で拒否されてるらしいじゃねぇか。お前らの悪評がウチの看板を汚しかねねえって、てめえら分かっててやってんじゃねえだろうな?」


 「「………」」


 「ここで黙るって事は、てめえら分かっててウチに入ってきやがったな! お前ら、このボケどもにキッチリ教育すんぞ!!」


 「「「「「おうっ!!」」」」」



 あーあー、あのバカ兄弟ボコボコにされてやがる。

 とはいえ袋叩きに遭おうと自業自得でしかないわな。

 もしかしたら<力の鉄槌>の名前で娼館の事を何とかしようとしてた可能性もある。


 それを考えたらボコボコにされて当然だし、組織の看板を勝手に都合よく使おうなんてされたら、その組織の全員を怒らせるのは当たり前だ。

 どうやらその程度も分かってなかったらしいな。


 私刑はすぐに終わり、ボコボコにされた連中は捨てられて終了となった。

 俺達はそれを見届けた後で走り出し、先に出発した二チームの魔車を追いかけていく。


 【身体強化】で追いかけていると、前に二チームの魔車が見えたので速度を落とし、後はゆっくりと走って帰る。

 バステトもハトホルも足が速いので問題なし。


 バステトの場合は猫なのでスタミナが無いが、そもそも猫の〝魔物〟なので必ずしも猫と同じじゃない。

 ついでに【身体強化】も使っているので、尚の事、同じというのはあり得ない事だ。


 そのまま二チームの魔車についていき、王都に到着。

 登録証を見せて中に入ると、そのまま解体所に行く。

 二チームの部下達がこちらに来たが、確認の為に寄越したらしい。


 俺達は解体所の職人に大きい獲物だと説明し、一番大きな獲物を出せる場所を教えてもらってそこに出す。

 周りに他の開拓者も居て、何故かニヤニヤとこちらを見てくるな?



 「この一番大きな場所は、忙しい時間帯でない限りは使われないんですよ」


 「へー、それでここを使うに相応しいか見てるわけか。性格の悪い連中だ」



 <乙女騎士>のメンバーに教えてもらった後でそう言うと、周りでニヤニヤしていた奴らが怒ったのだろう、そいつらは口々に罵倒してきた。

 が、ヌンは意に介さず獲物を出す。


 ドスーン!!


 大きなクェルベアーを見た連中は黙り、罵倒の言葉はまったく聞こえない。

 どうせこうなるのは分かっていたので、そもそも煽る気も最初から無かったんだがなぁ。



 「お前ら勘違いしてるんだろうが、そもそもこの獲物は<力の鉄槌>と<猛襲団>と<乙女騎士>で狩ったものだぞ? 俺達は運んできただけだ」


 「ですね。所詮は煽るしか能の無い連中です。ウチのリーダーにもちゃんと報告しておきますよ」


 「オレ達だって報告するさ。ウチのリーダーはそういうトコ五月蝿いんでな」



 それぞれの部下が言うと、周りで罵倒していた奴らはスゴスゴと何処かへ行ってしまった。

 どうも俺達の方には何かしてきそうな感じだったが、まあそれは構わない。

 おそらくヌンさんに捕らえられるだけだろうしな。


 それはともかく、俺達は<猛襲団>と<乙女騎士>の連中に後を任せ、開拓者ギルドへと移動する。

 俺達の本来の仕事はギルドの依頼だからな。


 ちょうど開拓者ギルドの前まで移動したタイミングで<力の鉄槌>の魔車が到着。

 中からリーダーのカンシュムが出てきた。


 俺達は合流してギルドの入り口のドアを開けると、中では既にトゥモンとミューデラが椅子に座っており、その対面には王都のギルド長が座っていた。

 なお<死霊術士>のグレイは床に転がされている。



 「おう、やっと戻ってきたか。まさか見に行かせた<ブラッディウルフ>がアンデッドで、そのうえ巨大な<ブラッディウルフ>を作る為の時間稼ぎだったとはな。それにしても、お前達がやった事はお手柄だ。証拠まであるそうじゃないか」


 「ええ。あのイシスが証拠となる大きな狼のアンデッドを持っているから確認できる。それにあの者達が居なかったら、我々はかなりマズかった。死んでいた可能性が高い」


 「ああ、オレ達も正直に言って命拾いしたっていうのが正しいぐらいだ。流石にアンデッド相手にどうこうは難しいからな。ついでにデカいし」


 「おう、本当にな。あのアンデッドとクェルベアーを同時に相手するって、普通は絶対に死んでるぞ。オレ達が力を合わせてクェルベアー一頭でギリギリだったぐらいだ」


 「お前達がそこまで言うというのは相当だな。イシスとやら、ご苦労だった。まずはそのアンデッドとやらを見せてもらおうか」


 「構わないが、ここに出すのか? アンデッドであるという事は腐ってるんだぞ?」


 「ウー!! ムー!!」



 <死霊術士>の爺が何かを言おうとしているが、ここに居る全員が無視している。

 当たり前だが誰も相手になどする気が無い。



 「悪いが他に場所も無い。検分だけしたら、すぐに仕舞ってくれ。明日、おそらく王宮の研究所か訓練場に持って行く事になるだろう。それまで預かっておいてくれ、追加で金は払う」


 「了解だ。金が貰えるなら構わない」



 これで250ルルだったら笑うけどな。


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