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0147・アンデッドと熊




 Side:イシス



 俺は薙刀ではなく、代わりに清浄銀の杭を持って惑星へと戻った。

 当然戦闘中に戻ってくるのだが、それでも隙がある間に帰還したので攻撃を受けたりはしない。


 目の前のオルトロスモドキはすぐに噛みつきに来たが、しかしそんな攻撃に当たる俺じゃないしな。

 サラッとかわすのは問題ないのだが、代わりに反撃をするのも難しかった。

 元の頭と思わしき方が上手くカバーしてくるからだ。


 清浄銀の杭を近づけると明らかに嫌がるので、やはりコレが効く事は間違い無いみたいだな。

 なんとしても突き刺したいのだが、そう簡単に刺す隙がある訳でもない。

 そこは頭が二つになった事での有利な部分だろう。


 それでも嫌がらせのように突き付けるだけでも、こちらにとっては役に立っていると言える。

 噛みつきに来にくくなっているし、牽制としては十分だろう。

 このまま浄化で押し切ったって構わないわけだし。


 刺せれば有利になるが、刺せなくとも構わない。

 そういう気持ちで居た方がいいな。

 無理に刺そうとして噛みつかれるなんて、あまりに情けなくて仕方ないし、そんな無様は幾らなんでも晒せない。


 俺は囮になりつつ他の場所も見回すが、どうやら向こうの熊に随分と苦戦しているようだ。

 <死霊術士>は捕まえたらしいが、代わりに熊の魔物には随分と慎重に対応している。



 「くそ! 相変わらずクェルベアーは強えなあ! 昔お前達と合同で狩った事を思い出すぜ!」


 「そんな暢気のんきな話をしている場合か! こいつは我らの槍では牽制にもならん。走りこんで体重を掛けて全力で突いて、それでやっと刺さるくらいなんだぞ!」


 「こっちも駄目だ。剣がこいつの剛毛で滑らされて全く切れない。そもそもこのクェルベアーは何処からやってきたのだ! この近くにクェルベアーの出る場所など無い筈だぞ!!」


 「知らねえよ! もしかしたら最初から居たのかもしれないぜ? 今ままで誰も知らなかっただけでなぁ! だが何処かのバカどもが魔物を減らしたんで、それで怒って出てきたんじゃねえか?」


 「そりゃまた、あり得そうな話だなぁ! オレはその話に乗らせてもうぜ!」


 「お前達クェルベアーとの戦いで随分と余裕だな! それならば近付いて一気に攻めろ!」


 「んな事、危なくて出来るわけねーだろーが! まずは体力を減らして動きを鈍らせなきゃ、話にならねえっての! 仲間達と交代しながら、やるしかねえだろうが!」


 「まったくだ! これだけ素早い熊と、正面から殴り合いなんぞ出来るか! そこまで言うなら、お前がやれ!」


 「ハッ! 断らせてもらおう! まだ私は死にたくないのでな!」


 「「だったらオレ達にやらせようとすんじゃねえ!!」」


 「ハハハハハハ! やっぱり仲が良いな、お前達! やる気も出てきたんじゃないか? 疲れているようだったからな、気合いが入ったろう!」


 「下らない事に体力を使わせんじゃねえよ! まだまだ大丈夫だっての! それよりウチのヤツぁ、いつまで腰が引けてんだ。さっさと後ろ足を潰しちまえ!」


 「そう言うな。クェルベアーの隙が狙えるなら、誰だって苦労はしねえ。こいつを押さえ込むだけでも一苦労だっつーのに、隙を狙うのも難しいんだ。急がせたって上手くはいかねえよ」


 「クェルベアーは目が後ろにも付いているのではないかと思うほど、上手く避けるし反撃をしてくるからな。何かを感じているのかもしれん」


 「殺気とかでも感じてんのか? 熊如きにそんな力は無えと思うがね!」


 「グォァァァァァァァァァ!!!!」


 「お前が熊如きとか言うから怒っちまったじゃねえか!」


 「オレの所為じゃねえだろうし、そもそも熊はオレ達の言葉を理解してるわけがねえだろうが!」


 「暴れ回る兆しかもしれない。お前達、気をつけろ!」


 「「「はい!」」」



 向こうは相当に苦戦しているらしいな。

 こっちは俺が避けながら囮になりつつ、バステト、ヌン、ハトホルが浄化をしてくれている。


 <魔力増強薬Ⅱ>で魔力量がかなり増えたからか、ハトホルが相当の魔力を篭めて浄化中だ。

 その御蔭で明らかに弱体化してきたが、それでも効きは良くないままでしかない。

 コイツを刺せれば状況は変わると思うんだが……。



 「よっと! 回避はそこまで難しくないんだが、如何いかんせん上手く近づけないんだよなぁ。隙があれば行くんだか、片方の首が上手くフォローしてやがる。どうやら勝手に任せて、元の首は完全にフォローに回ってるな」



 その御蔭で潜りこんだり出来なくなってるんだよなー。

 上手く潜りこんで突き刺したいところだが、余程に嫌なのか近付かせないように立ち回る方にシフトしやがった。

 本当に面倒な事をしてくれる。


 清浄銀の杭だから、突き刺せばさえ後は放っておくだけでいい筈。

 だか……杭? 俺が持っているコレって杭なんだから、投げればいいじゃん!

 何で気付かなかったんだよ!



 「おっと。そんな噛みつき方で、オレに当たるわけが無いだろうが!」



 俺は噛みつきをバックステップで回避した後、振りかぶって【身体強化】を使い全力で投擲。

 それは元の首の下に綺麗に突き刺さった。

 あそこが一番外れにくいだろうと投げたんだが、予想以上に突き刺さったな?



 「「………」」



 口を大きく開けて何か訴えようとしているが、アンデッドだからか声が出せないみたいだ。

 しかし普通のアンデッドは「うー」とか「あー」とか言う以上、こいつが声を出せないのはおかしい。

 無理に改造されたから声が出ないのか?


 身をよじって、明らかに苦しんでいるのが分かる。

 俺達が魔力で浄化するよりも遥かに効いているのは、おそらく浄化能力を持つ物が体の中にまで食い込んでいるからだろう。



 「皆、一気に浄化するぞ。もうこれで終わらせる!」



 俺達は相当に魔力を篭めて、一気にオルトロスモドキを浄化しに掛かる。

 清浄銀の杭がアンデッドの体内の呪いを抑えているからか、一気に浄化は進み、オルトロスモドキは地面に倒れた。



 「なんじゃと!? そんなバカな!!」



 <死霊術士>が驚いているようだが、俺達の方がそんなバカなと言いたいわ。

 まさかアンデッドにここまで苦戦するとは思わなかったぞ。

 今までと比べて違いすぎるだろ。


 俺は倒れたアンデッドに近付き、すぐに【ストレージ】に回収。

 二度と悪用できないようにした。



 「か、返せ! 貴様!! ワシの研究3号を返せ!!!」


 「断る。こんなもんを、また悪用されたら面倒だからな。後は開拓者ギルドか王国の研究所か何かにでも渡して終わりだ。研究が為されれば弱点も分かるようになるだろう」


 「ワシの研究に弱点など無いわ!!」


 「弱点は無くても、俺達には勝てなかったみたいだがな。しょせんはその程度なんだろ?」


 「ぬぐぐぐぐぐ……!」


 ドスーン!!!



 おっと、向こうもクェルベアーとかいう熊に勝ったみたいだな。

 やれやれ……あの熊が乱入してこなきゃ、もっと楽に勝てていた筈なんだが、代わりにあの熊が乱入してきたからこそ拠点に帰れたとも言える。


 周りの奴らの大部分は熊の方に集中していたから、その御蔭で隙が出来たんだ。その感謝はしてもいい。

 何故なら休憩しなきゃ勝てなかったかもしれないからだ。


 倍とか三倍とか言っていたが、実際にはもっと瘴気は削れにくかったかもしれない。

 それ程までに瘴気の浄化に苦労したんだが、それもこれもオルトロスモドキの体の中に埋め込まれたという呪物の所為だろう。


 それが何なのかは知りたいところだが、今この場で解体して確認するわけにはいかない。

 帰還してからになるだろう。


 向こうも熊を倒して喜んでいるので、冷静になった後で相談して決めるか。

 その内に収まるだろうし、持って帰る事も含めれば一気に興奮も冷める筈だ。


 あの熊、身長だけで多分4メートルを超えてるだろうから、普通の【収納魔法】に入るのかね?

 それを考えれば冷静になるだろう。


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