0146・休憩と相談
Side:バステト
もう! こいつはいったい何なの!?
何度も何度も浄化してるのに物凄く浄化の効きが悪いし、ここまで苦労するアンデッドなんて初めてよ。
イシスが前で頑張ってくれてるけど、そろそろ魔力も含めてマズくないかしら。
あれ? 目の前が歪む……?
「ふぅ……! 何なんだよ、あのアンデッド。あそこまで瘴気を浄化できない事は初めてだぞ、いったいどうなってるんだ?」
魔力が少なくなったからか<時空の狭間>に戻ってきたのね。
それはいいけど、早速イシスが愚痴を言ってるわ。
とはいえ気持ちは本当によく分かるけど。
「あいつの瘴気の減らなさもそうだけど、思っているよりも瘴気まみれのアンデッドより攻撃性が低いのも気に掛かる。普通は瘴気に汚染されてたら、もっと攻撃的に喰らいついてくるよな?」
「確かにそうですね。そういう意味で言うと、確かにあのアンデッドは攻撃性が低いです。通常のアンデッドならば、もっと攻撃的に噛みついてこないとおかしいですからね。あのアンデッドからは攻撃性がそこまで感じられませんでした」
「それが元々は作られたアンデッドだったからか、それともキメラ化した事でおかしな事になっているのか。どっちかは分からないが、アレを倒すのは相当に苦労するぞ。今のままじゃな」
移動しながらもイシスは話し続けている。
考えを纏める為に話してるって感じね。
今は愚痴って感じじゃなくなってるわ。
それはそうと<物品作製装置>の部屋まで来たし、何か食べましょうか。
「さて、ここまで来たのは良いんだか、食事をした後でハトホルには<魔力増強薬Ⅱ>を飲んでもらおうと思う。その後は<生物修復装置>で最適化してもらうが、とにかく魔力を増やして対抗するしかない」
『私がですか? イシスやバステトの方が良いのではないかと思います。私ではない方が……』
『むしろハトホルが飲むべきでしょ。私やイシスは前で戦えるけど、ハトホルは前で戦うのは得意じゃないじゃない。なら後方で戦うハトホルが飲むべきでしょ。私達は後でも大丈夫だし』
「ああ。バステトが言う理由で、俺もハトホルに飲んでもらおうかと思ってる。後ろからの援護を期待しているんで、頼む}
『分かりました。またあの装置に入らなければいけないのかと思うとアレですが、魔力を増やして頑張ります』
「そうか、ありがとう。とりあえず食事にするか、疲れたし」
そう言ってイシスは私達の食事を作って出した。
私の今回の食事は、魚醤を塗って焼いた物よ。
前にも食べたけど、コレ美味しいのよねえ。
イシスいわく、他に色々と手に入ったら照り焼きという物も作れるらしいわ。
だからこそ王都に期待してたんだけど、すぐに依頼を請ける羽目になったから、それどころじゃなかったのよねえ。
店自体は既に発見したみたいだけど、そこで購入する前に今回の事だしさ。
なかなか儘ならないわ。
食事後は<生物修復装置>の部屋に行き、ハトホルを中に入れた後で<魔力増強薬Ⅱ>を飲ませる。
そして蓋を閉じて最適化を選ぶと、後は寝室に行って仮眠よ。
とにかく回復しないとね。
…
……
………
「起きろ、バステト。既に終わってるから起きろ、バステト」
「……ンン」
寝ていたらイシスに起こされたけど、どうやら既にハトホルの最適化も終わったらしく、寝室にハトホルがやってきていた。
私はベッドから飛び下りると、欠伸をしながら魔法陣の部屋へと行く。
その途中でイシスがヌンに話しかける。
「<魔力増強薬Ⅱ>で大分魔力が向上したと思うんだが、根本的な解決にはならないよな? 一応考えてたんだけど<清浄銀>で対アンデッド専用武器でも作ればマシになるか?」
「それなら突き刺す専用の武器を作れば良いと思いますよ。突き刺している間ずっと浄化してくれるでしょうしね。それと、あのアンデッドから瘴気が削れにくい最大の理由は、おそらく呪いに関わる何かを体の中に埋め込んでいるのだと思います」
「呪いの関わる何かって、アレか? 毛とか歯とか血とかの事か?」
毛とか歯とか血で呪いって出来るの? それ恐すぎないかしら。
いったい何をどう考えればそんな事ができるのか知らないけど、私も気をつけようっと。
相手の毛とか使って呪うんでしょうしね。
「それもありますが、ダンジョンなどで呪いの武具が出るか、それとも元々呪われた何かがあったのかもしれません。それを死体に埋め込んでいれば、キメラ化の時に取り込まれた可能性があります」
「取り込まれて馴染んだから、あんなに面倒な状態になっているという事か。何だか<ムンガ>みたいになってると考えれば、理解できなくもないな。あいつも浄化しにくくて仕方なかったし」
『でもさ、あのアンデッドって<ムンガ>よりも浄化しにくくない? 私は<ムンガ>以上だと思うわよ? 呪いが<ムンガ>自身だったみたいだし、それとはまた違う感じがするわ』
「そうですね。瘴気が本体で呪いを取り込んだか、呪いが本体で瘴気を利用しているかの違いでしょう。そのうえ今回のアンデッドは色々な瘴気を注入されているというか、付け加えられていますしね。瘴気だけではありませんが」
「首から上がくっ付けられたり、足を八本にされたりしているからな。よくあれで動くもんだよ」
「瘴気が無理矢理に動かしていると考えれば分かりやすいでしょう。中身は空っぽなのですよ。八本足のオルトロスっぽいものが動いているだけです。無理矢理くっ付けているだけで意味はありません」
「もしかして人形みたいな物なのか?」
「ええ。そう考えると分かりやすいでしょう。見た目に騙されると強大に感じるかもしれませんが、元の素体に引き摺られますので、改造された肉体を上手く扱うなど不可能なのです。元々の素体には無かったものなのですから」
『成る程。四本足で頭も一つだったんだから、くっ付けられた部分は勝手に動いてるだけ。自分が元々持っていた部分しか正しく動かせないって訳ね。通りで瘴気まみれなのに攻撃性が低い筈よ』
『自分の体におかしな物がくっ付けられて、しかもそれが勝手に動いている、ですか……。しかも足は倍の本数です。それは動き難くて仕方がないでしょう。逆に言えば、元通りの姿ならば相当に強い?』
「おそらくは今よりも俊敏で、もっと厄介な相手だったでしょうね。相手の<死霊術士>が愚かだったおかげで十分に戦えています。むしろ愚か者が足を引っ張っている状態ですね」
イシスが途中で<物品作製装置>に寄って、1メートルくらいの針みたいな物を作ったわ。
随分と太めの針だけど、アレがさっき言ってた<清浄銀>の物かしら?
「これが限界であり、今はこれ以上<清浄銀>が作れないな。銀自体はまだあるんだが<清浄銀>にする為の素材がもう無い。諦めるしかないな」
「それでも、それを刺していれば浄化の力で呪いは抑え込めるかもしれません。そうなれば浄化の魔力も効きやすくなるでしょう。ダンジョンに行けば色々と手に入るかもしれませんし、まずは目の前の敵を倒しましょうか」
『そうね。今はこれで限界なんでしょうし、贅沢を言ってもいられないもの。今ある物で戦えばいいのよ』
『そうですね。それに勝てるまで戻ってきて休憩すればいいですし、このままならば勝てますよ。このままなら』
「ああ。俺もそう思うけど、フラグを立てるのは止めてくれないか?」
「?」
何かまたよく分からない事を言い出したわね。
とにかくさっさと魔法陣に乗って惑星に戻りましょう。
決着をつけなければいけないしね。




